第八話 マルハチ坂の戦い
王国東の国境、大盤山は、西が低くて東が高い。
だから正直戦場としては不利なんだが、本来その奥まで王国が支配してたのに、入り込まれた結果だとさ。
王国の誇る騎士団がどうにも上手く取り返せなかったってことで、大盤山の麓、一番高低差の大きいマルハチ坂で、勇者──先鋒の役目を果たすことになった。
十三日後の昼前、現場に着いて眺めてみれば、敵の国はキャタピラ軍団を制式採用してるらしい。どうしてこう、因縁めいたことが起こるかね。
ま、気を取り直して早速の突撃だ。
回り込む道も無ぇし、やることやるだけ。
敵も五百かそこら。強ぇ方が勝つ。
いわゆる逆落しで来るキャタピラ軍団の鼻先をかすめて奥へ──上へ向かい、今度はこっちが逆落し。
どう足掻いても犠牲は出る。だが相手にはもっと損害を与える。それも圧倒的にだ。
最初からそうするつもりだった俺達と、そんなことは考えてなかった敵。
勝機はこれしか無かったし、これでどうにかなった。一度有利な体勢になっちまえば、聖剣のおかげで撫で斬りに出来たしな。
主な味方は……キャタピラ剣士は大きさと装甲の差って強みを見事に押し付けて無双してた。あいつが勇者の方が良かったんじゃねぇか?
もう一方のツインテは、半ば飛んでるんじゃねぇかと思うような機動を既に身に付けてて、敵の度肝を抜いてた。──あいつでも良かったな。
何にせよ、半日かけて俺達が勝ち、マルハチ坂の戦いを制し、王国を勝利に導いた義勇団の名は、後世に末永く残ることになったのでした、めでたしめでたし。
ってなりゃあ、良かったんだけどな。