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第五話 闘魂

 うちの国じゃ、闘魂(とうこん)、ってのがある。

 文字通りに闘うだけの催し……天下○武道会みたいなもんだ。正式名称は牢房闘魂(ろうぼうとうこん)……やけに物騒(ぶっそう)だな。

 ま、それも当然といえば当然。どんな機械の補助を受けている身でも参加可能で、規定は『会場と観客に害を及ぼさないこと』のみ。

 実際には、闘うための場自体が世界最高の強度を誇る柔剛鉱石(アダマンタイト)の厚い壁と床で覆われてて、会場に入る程度の装備じゃ壊せやしない。

 ただ一つの例外、今回の大会の優勝賞品、聖剣(エクスカリバー)を除いては。

──聖剣だぜ、聖剣。【剣聖】が持つしかねぇだろ!

 ってことで俺は闘魂への出場を決めた。

 本当に優勝出来るかどうかはわからねぇけど、みんなも応援してくれてるしな。

 出場登録受付期限は十日後。場所は王都中心部、闘魂場。

 春の日差しの中、生まれた町を初めて出て、長距離移動ロボットの輝く身体に見惚(みと)れながら乗り込み、その内装からも快適性や識別性等、学べるだけのことを学びながら、七日間の長旅。

 うちが田舎なせいでギリギリだったけど、どうにか間に合った。

 ここで漫画やアニメなら一悶着(ひともんちゃく)起こるところ、すんなりと出場決定。予選会から出ることになった。

 予選会自体は受付期限終了よりも早く始まってるらしく──やっとかねぇと終わらねぇらしい──早々に出番が来た。

 でもまあ、伊達に今回の生の大半を剣振り回して来たわけじゃねぇ。あっさり規定の五勝をクリアして、本戦出場資格を得た。


 市場で素材を漁ったり武具屋で見繕ったりしながら日々を過ごし、受付終了から五日経って、漸く本番の出番が回ってきた。

 結局俺の武器は自作の剣がメイン。

 前に貰った聖銀で作った刃に、刻印(こくいん)魔法で弾性や切れ味、その他諸々の強化を(ほどこ)した逸品(いっぴん)だ。

 いくら首都といえども、一見(いちげん)さんで入れるところじゃ、コレを超える装備は見つからなかった。

 で、本戦ってことで気合を入れて望んだにもかかわらず、予選と変わらなくて拍子抜け。ま、一回戦だしな……と思ったら、三日後の二回戦、更に二日後の三回戦も、特にどうということもなく終わった。

──俺、もしかして強いのか? 一応【剣聖】だしな。効果知らねぇけど。

 そう、あの婆さん神様からもらった(はずだよな……?)はいいものの、何がどう作用してるのかすらわからねぇ。

 スキル、って言うくれぇだから訓練したらした分だけ身に付く補正みたいなもんかと思いつつ、今日まで生きてきた。

 少なくとも「何もしなくても最強です」みたいな話ではなかったからな……初めて模擬剣を振った時は、逆に振り回されてたし。

──ま、今回で多少はわかるだろ。

 楽観的に考えながら、翌日の四回戦、翌々日の五回戦と準々決勝も手応え無く勝ち進んで、やっとまともな相手と当たったのは、準決勝、いわゆるベスト4でのことだった。


 翌日。

 真昼の日光を浴びて立ってたそいつは、これまでの相手同様、全身が機械で覆われてた。

 どんな補助があってもいいってんだから、当然だよな。

 特別だったのは、明らかに人型を意識した形状だったことだ。腕は無かったけどよ。

 もっと()やぁ、二足歩行なんて俺以外じゃ初めて見た。

 大概(たいがい)四脚や六脚、八脚、たまにキャタピラと組み合わせて……みたいな感じで、重量が増すほど不安定になる二足歩行なんて誰も選んじゃいなかったんだ。

 だから、驚いたし、好奇心も()き出た。

 ツインテールみたいな翼(?)が頭の後ろに飛び出してて可愛かった、ってのもある。……真面目に考えるなら、形状からして、ジェットエンジン的なのと空気抵抗を使っての制動用、もしかしたら武器と兼用、って感じ。

 いざ闘いが始まってみれば、合図の直後に突っ込んで来た。

 俺がサッと(かわ)すと、ほとんどその場で直角に曲がるようにしてツインテの片方を叩きつけようとしてきた。

 やっぱりツインテは加速にも減速にも使えるらしい。しかも左右それぞれで別の方向へ加減速が出来る、と。

 二足歩行は、ツインテ単独での機動制御を最大化するため、みてぇだった。

 本気で地上兵器として使うなら動力は別にあった方が多分便利だし、あるいは飛行兵器の実験機かもしれねぇ。

 でも地上戦に関しちゃ、そんな消極的な二足歩行に負けるわけにゃいかねぇ。

 二回、三回とさっきのようなやり取りを繰り返し、四回目に、急制動でどうしても必要とする動作の隙を突いて、ツインテを斬り落とした。

 相手は、棄権(きけん)した。

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