第三話 虚弱体質
命と引き換えにして産んでもらっておいて、文句を言うわけじゃねぇ。
言うわけじゃねぇけど、俺は俺で苦労するはめになったのも事実だ。
足は自由に動かず、手も、補助のためか、全面的に機械に覆われてる。
一応動かそうと思えば動かせるだけ、ありがてぇと思うべきなんだろう。
俺の家(?)にはやっぱりロボットしか居なくて、母さんがどんな覚悟で俺を産んでくれたのか、ちっとだけわかった。
思うところはあったけど、大抵のことはロボット達がやってくれたから、生活に関しては特に困りもしなかった。
母さんは裕福ではあったんだろう。借金取りが押しかけてくるとか、ロボット達が差し押さえられるとか、そんな事件は起こらなかった。
多分だけど、数年が経った。
この世界の暦をまだ知らねぇんだ。勘弁してくれ。
しかもうちの中は完璧に空調が効いてて、暑さ寒さもわからねぇから、日差しの角度で推測したんだ。
まあ、それはそれとして、最近俺は自分の『手』に慣れてきて、将来剣聖になるんだから鍛えとこう、って色々試してる。
あと、動かなかった足も、最近ちっとずつ動かせるようになってきた。本当のところは足じゃなくて足に接続されたキャタピラ的なもん……だと思うんだけど、下半身がでっかい箱──戦車みたいなアレに入ってるからよくわからねぇ。
足を動かそう、と思えばキャタピラが動く。
流石にロボットだらけの世界だ。神経接続なのか何なのかわからねぇけど、未来的な技術があるらしい。
色んなことを確かめながら、十年が経った。
流石に暦も把握した。四季はある。でもやっぱ家の中じゃよくわかんねぇ。
この世界には学校ってもんが無ぇらしく、自宅で自由にやれたんだ。母さんの遺産をみんなが上手く運用してどうこう……ま、心配は要らなかった。
だから、ず~~~っと自宅で剣を振り回してた。
そんなある日、俺の成熟に合わせてか、世話役のロボット達がプレゼントしてくれた追加の『手』──補助機械がめちゃくちゃ優秀で、素振りどころか、力加減も反動制御も、やりたいように出来た。
本来の俺の腕は未だに貧弱なんだろうが、補助機械は腕そのものみてぇな感覚になる程で、心からの感謝をロボット達にも伝えた。
みんな、照れながらも、自分のことのように喜んでくれた。……ロボットなのにな。不思議な感覚だった。