第二話 ロボットだらけ
異世界転生、ってのにも色々あるが、俺の新たな生は胎児から始まった。
いや、始まった、のか? 厳密に言やぁまだ生まれてねぇんだけど……ま、いいやな。いいってことにしとこう。
正直、それどころじゃなかった。
俺の魂が宿ったのは、生まれる直前だったらしい。
出産ってのはわけわからねぇくれぇ痛ぇとか苦しいとか聞くけど、生まれる側だって辛ぇってのがわかった。
──熱ぃ。狭ぇ。抑え付けられてて苦し……
生まれるのにも運が必要、ってことか。そのまま俺は新たな生を終え──
は、しなかった。
危ねぇところだった。いわゆる帝王切開ってやつか? 見えちゃいねぇから本当のとこはわかんねぇけど、どうにか助けられたみてぇだ。
──一生感謝するぜ、お医者さん。どんな一生になったとしてもあんたのおかげだ。もちろん、母さんも。
そう思いながら、何を言おうとしても声は出なくて、目も開かなくて、それでも精一杯感謝を込めて気合を入れて、ようやく産声を上げた。
一苦労して生まれた──産んでもらえた先の世界は、俺の記憶にある『前の世界』とは全然違った。
そこら中にロボットが溢れてたんだ。
交通整理から八百屋から何から、全部ロボット。
俺を生まれさせてくれたあのお医者さんも、ロボットだった。
でも、全部、人型じゃなかった。
機能さえ満たせばいい、ってことかね。箱型だったり棒型だったり球型だったりそれらの組み合わせだったり……ま、人型にする理由なんて「ロボットを自分達に似せたい」くれぇしか無ぇだろうしな。この世界じゃそういう思想は生まれなかったらしい。
例えばあのお医者さんは、二十面体(多分)から色んな道具を出せる、みてぇなのがいくつも足元の球体から伸びてる、高性能ロボット……っぽかった。
人工知能か、あるいは人が操ってるんか……と思ったが、この世界じゃちゃんと作られたロボットには意識みてぇなもんが生まれるらしい。
よくよく考えてみれば、『前の世界』だって信号機やらレジやら物流拠点のあれこれやら、たいがいロボットであふれてたけど、実は意識があったりしたんかな。
あ、正しい『ロボットの定義』とかは置いといてな。その辺は気にすると色々面倒で……なんて言っちゃいけねぇか。
ま、許してくれよ。生まれたばっかだし、若気の至りってことで。
大体、母さんにだってまだ会えちゃいねぇんだ。
いつ会えるのかもわからねぇ。回りに居るのもみんなロボットで、未熟な(笑)俺じゃ会話も成り立たねぇしな。
それから、ものすんげぇ長く感じたが、やっっっと、家へ帰れる……初めて行くことになった。
ただ、移動用のロボットに抱かれて(?)、ひとりで帰ることになったらしい。
察したよ。母さんはきっと、俺を無理に産んだせいで……。
お医者さんのことは、恨まねぇ。きっと、しょうがなかったんだ。
ただ、一層母さんに感謝しながら、この生を目一杯楽しむんだって、決めた。