13.4 奇跡の内訳とササラの過去
ササラは十一年前の一揆が起きた後。オルゴーラにつれられてブブラバーバの元へ行った。
ブブラバーバの目標は、上位貴族となり権力を持つことだ。そのための執念は凄まじく、アルフォンスですら知らない情報を持っていた。
「……え、嘘でしょ? 小さかったササラを、マグマに?」
そう。ブブラバーバが持っていた情報とは、鉱魔を生み出す力を得るというものだ。誰から聞いたのか、それも定かではない。
断熱素材で作られた服を着て、マグマに五分間入る。そこから生き延びられれば、鉱魔を操れるようになるのだという。
「マオゲヌ山の登山口の奧に、小さなマグマ池があるの。そこにあたしは、投げ入れられた」
断熱材でできた服とはいえ、布は布。簡単に燃えてしまう。ササラが生き延びられたのは、まさしく奇跡だ。
「そんなことをするなんて……ブブラバーバ、絶対に許せない!」
アルフォンスを見ると、リオナの怒りをわかってくれたように頷く。
「本当に、ササラが生き延びてくれて良かったよ」
「あたしも、まさかここまでとは思わなかった」
曰く、ササラの血を媒介に鉱魔を生み出せるという。それは鉱石があればなお強く、守護石があっても街中に生み出せてしまうほど。
「噴火口でリオナがあたしの手を掴んでくれたとき、爪で傷がついていたみたいなの。そこから出た血で、マグマ状の鉱魔が溢れてきて……あたしを、包んでくれた」
「ササラが生み出したから、マグマ状の鉱魔に触れても大丈夫だったんだね」
「そうみたい」
それでも、マグマはある。マグマ状の鉱魔に包まれて命を落とすことはなかったが、あの日確かにササラはマグマの中へ落ちた。そしてマグマの中を漂い、次に意識を回復したときはリオナがいたと言う。
もしかしたらササラが気を失っていたから、マオゲヌ山は大噴火を起こさなかったのかもしれない。
「……それなら、全身の火傷は小さいときの?」
「そう。あのとき、ただリオナとまた一緒にいたくて、必死だったの。でもリオナは全然来てくれなくて……」
「ごめんね、ササラ。ササラがそんなに大変な目に遭っているなんて知らなくて……わたしを恨むのも、わかる」
「あ、今ではそんなことないからね? リオナは、今度こそあたしと一緒にいてくれるでしょ?」
「いるよ! ササラにはもう二度と、寂しい思いをさせないから」
ササラをぎゅーっと抱きしめる。そんなリオナの腕の中で、ササラが思い出したように言う。
「あ、そうだ。アルってさ、研磨師を取り締まる権限って持ってる?」
「一揆があってから、王族は権力を剥奪されてる。だけど内容を法務官に伝えることはできるよ」
「それなら、ジェラ・オルゴーラを調べてみて」
「えっ……オルゴーラ様? なんで……って、そう言えば、ササラはオルゴーラ様に連れて行かれたんだっけ」
「そうそう。ブブラバーバもでっぶいおじさんも、もっとよく考えれば良いのにね。あたしが隣の部屋にいることを忘れて、ぺらぺらと話してたよ」
「何を話していたんだ」
「なんか、でっぶいおじさんは研磨師になりたかったんだって。でもずっと試験に落ち続けたみたい」
「え……で、でもっ、オルゴーラ様は姓がある! 名乗れるのは、庶民は研磨師になるぐらいしかないのに」
「研磨師になったっていう証拠、何かある?」
「国家資格だもん。国から資格証が発行されるよ。そこで名乗る姓を登録してもらうの」
「その資格証だけど、たぶん偽造できる」
「「えっ!?」」
アルフォンスと声が重なる。アルフォンスとしても、国家資格が偽造できてしまうのはまずかろう。
「ブブラバーバが庶民の子供を捜してて、それをでっぶいおじさんが用意した。その見返りが、資格証だって話してたの」
「国家資格を偽るなんて、国を愚弄していることと大差ない。もしかしたら他にもいるかもしれないね。早く伝えないと」
焦るアルフォンスだったが、すぐにハッとなる。ササラを抱き上げて行こうとしたが、ササラがそれを拒否した。リオナが肩を貸し、テフィヴィまで戻る。
西門には、モニカとブライスがいつものように待ってくれていた。
次で終わります。




