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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第十話 黎明の疾風団、始動!

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80/100

10.8 再会③

少し長めの文章量です。


 その後宿へ行き、連泊の断りを入れる。そしてササラに案内されるまま馬車乗り場まで行く。

(……なんか、見たことある?)

 乗合馬車ではなく、個人契約をするような馬車だった。しかしどこにでもあるような馬車なのに、どこかで見たことがあるような気がしてならない。

 ササラが御者の所へ行く。

「四人追加で乗るから」

「この馬車は四人乗りです。五人は乗れません」

「えぇー、そうなの?」

 ササラと御者の話を聞いていたアルフォンスが、そちらへ行く。

「それなら、幼馴染みだしリオナだけ一緒に行くと良いよ」

「アル……様? それはダメです」

「どうして? この子とは幼馴染みなんでしょ? 他の誰かと二人きりになるなんて絶対駄目だけど、幼馴染みなら問題ないよ」

「で、ですが……」

 ササラと二人きりにはなりたくない。それを感じ取ってもらおうと、リオナは抱きついたままのササラを強制的に剥がそうとする。しかしササラは、離れまいとさらにぎゅうっと抱きしめてきた。

「仲が良いんだね。リオナと幼馴染みだなんて、羨ましいよ。楽しい子供時代だったんだろうなあ」

「た、確かに、子供のときは楽しかったですけど……」

 子供のとき、と発言したとき、夢で見た内容を思い出した。あの夢は理想でも何でもなくて、本当の思い出だ。だから、ササラはリオナと一緒にいて、鉱魔のことはジェイコブから教わっているはず。

 ますますササラが怪しく思えてきたが、リオナが回顧していた時間で別行動が決まってしまった。

「リオナ。ぼく達は乗合馬車で追いかけるよ。テフィヴィで合流しよう」

「おれ達はどこの貴族を訪ねればいい?」

「あー……えっと、頃合いを見計らって迎えに行くというのはどう? 場所を指定してもらえればそこに行くから」

 貴族の名前を言いたがらないササラを見て、これは好機だとリオナが意気込む。

「ササラ。もしかして騙されているんじゃない? 本当は、貴族様に養われているわけじゃないんじゃないの?」

「そ、そんなことないもん」

「そう? それなら言えるでしょ? ササラを養っているのはどちら様?」

 言い淀むササラを追いつめるような構図は、まるでリオナがササラを苛めているかのようだ。とても仲の良い幼馴染みには見えないだろう。

「リオナ? どうしたの? 何だか、リオナじゃないみたいだ」

「リオナ、ちょっと怖い……」

 演技か否か。ササラはあれだけリオナにくっついていたのに、怖がるような様子でアルフォンスの方へ近づく。

 ササラとアルフォンスを物理的でも近づけさせたくなかったリオナは、ササラの手を掴んだ。

「昔のササラを覚えているから、わたしもササラを養ってくれている貴族様にお礼が言いたいよ。だから、教えて?」

「えー……リオナがそこまで言うなら、言うけど……」

 言いづらそうにしている。これは本当に嘘だったかもしれない。そんな風に思ったが。

「貴族様って言っても、お城の近くの立派な豪邸持ちじゃないの。だから貴族様の目標が叶うまでは、あまり外で名前を言うなって言われているんだけど……」

「テフィヴィの貴族なら、ネイサンが知っているから心配ない」

「そっか。ネイサンすごいね。ブブラバーバって言ったらわかる?」

「ぶぶらばーば……」

「あー……やっぱり知らないか。ブブラバーバ様、弱小貴族って言ってたからなぁ」

「いや、すまない。大抵の貴族は把握しているつもりだったんだが、漏れがあったみたいだ。精進する」

「まぁ、そんな感じで、ブブラバーバ様もネイサンやアルに家を見られたくないと思うの。だから、どこか場所を指定してもらえればそこへ行くから」

「言いづらいことを言わせてしまってごめん。それなら、テフィヴィの冒険者ギルドはどうかな。リオナが知っているから」

「了かーい。それじゃぁ、そこで」

 ササラが告げた名前に、聞き覚えがあった。どこで聞いたのか。それを考えている内に、ササラに押されて馬車に乗り込む。

 馬車が走り出す間も考えていた。しかし速度が出ている上に荒い手綱捌きに、考え続けることすらできない。

「この感じっぅ」

 どこかで、今乗っている馬車を見たことがあると思っていた。この馬車は、以前ノキアからテフィヴィへ行く途中でリオナが轢かれそうになった馬車だ。それを思い出してうっかり声を出してしまったら、思い切り舌を噛んでしまった。

(いたっ……)

 口に手を当てて痛みに耐えていたら、上下左右に激しく動く影響か、正面に座るササラから蹴られたような気がした。

 顔を上げてササラを見ると、ふっと鼻で笑うような笑みを浮かべている。

「まっ……」

 まさか、とか言おうとしたと思う。荒々しい手綱捌きの馬車の中で学ばなかったリオナが、また舌を噛んでしまった。

 二度目の痛みに思わず体をかがめると、今度ははっきりとササラの爪先が明確な意思を持ってリオナの脛に当てられていることを確認する。

 文句を言おうと思ったが、馬車の中ではできなかった。せめて、と、リオナはササラを睨みつける。

(ブブラバーバっていう名前も、思い出した)

 冒険者になる前。まだリオナがオルゴーラ工房にいた頃。買い物の帰りに、汗止めの効果があるタルクを落としてしまった。あのとき、酔っぱらったオルゴーラがブブラバーバの名前を出していたのだ。

(あのとき、オルゴーラ様はブブラバーバ様と会う約束があるって言ってた)

 オルゴーラとブブラバーバに面識があった。そして、そのブブラバーバにササラが養われている。

(こう……なにか、繋がりそうな……)

 貴族が大好きなオルゴーラだ。ブブラバーバと面識があってもおかしくはない。しかし、ササラが言っていた。

(ブブラバーバ様の目標……ササラが勉強させられた意味……)

 灰色がかった茶色の髪や瞳は、いそうでいない色合いだ。だから本人が言及しなくても、ササラとはテフィヴィの宿で会っている。

(……わたしは、ササラに恨まれているの?)

 ブブラバーバの目標が、王族と結婚させた庶民の養い親になることだとしよう。その先は、貴族らしい権力を手にするのではないだろうか。

 貴族ではなくても、孤児院にいたわけでもない子供を買い取れないだろう。命のやり取りを金ですることは犯罪だ。

 しかし、あの頃は一揆が起こり国中が混乱していた。その混乱に乗じれば、あるいは。

(ササラは、ノキア出身だ。そして、オルゴーラ様もノキアにいた)

 貴族と繋がりたいオルゴーラが、ササラをブブラバーバに渡したと考えることが自然だろう。リオナはジェイコブに引き取られたが、ササラは違った。

(こう……まだ何か、忘れている気がするんだよね)

 ササラに関する、重要な何か。それがわかったら、もしかしたらササラから恨まれている理由もわかるかもしれない。

 リオナは、ちらりとササラを見る。ササラはリオナの反応に飽きたのか、リオナから一番離れるような位置に座っていた。

 本人に聞けば、答えてくれるかもしれない。しかし、教えてもらえない可能性もある。

 ひとまず、荒々しい手綱捌きの馬車から下りたら聞いてみよう。そう、思った。


第十話、終了です。

ササラは悪役ですが、嫌いじゃないんですよね。

そんなササラがもっと悪役になっていく⁉ 第十一話。

期待してくださる神読者様は、まだもう少しお付き合いしていただけると幸いです。


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