10.1 モニカの知識量
パーティー名を決めたリオナ達は、翌朝ギルドへ行って冒険者カードにパーティー名を入れてもらった。
「ふふふ。これでわたし達は正式に同じパーティーメンバーです」
リオナの発言に、アルフォンスら三人が頷く。
黎明の疾風団としては今日が初日となるが、リオナ達はノキアの冒険者で知らない人はいないぐらい有名だ。
顔を隠さないことでアルフォンスに注目させないようにしているブライス。今日もギルドに居合わせた女性冒険者達の視線を奪っている。
リオナはフードを被っているが、戦っているときはローブを脱いでいることが多い。そのときに顔を見られているかもしれない。リオナの戦い方は他の誰も真似できず、さらには本人は無自覚の争奪戦が起こるほど整った顔をしている。
アルフォンスはなるべく目立たないようにしているが、リオナに関わることでは気が短くなること多数。男性冒険者から敵対視されることがよくある。
そして、新規加入したモニカ。女性としては背が高く、珍しい眼鏡をかけている。美人で、女性らしい体つき。目立たないわけがない。
四人は、それぞれ一人ずつだとかなり目立ってしまうだろう。それが四人にまとまると、周囲の目が分散するから逆に争いが起こりづらくなるかもしれない。
リオナが、掲示板の前へ行く。
「モニカの階級を、早めに一つ上げておきたいですよね。採集クエストを五十個こなせば、次は鉱魔のドロップ品を十個納品になります。その次の百個はわからないですけど、十個ぐらいならすぐにいけると思います」
黎明の疾風団が、今さら採集クエスト!? という周囲の空気なんてリオナは感じないまま、掲示板を見るモニカと相談する。
「薬草を採集するのね」
「一日何個くらいできそうですかね」
「生息場所や発見できる時間が違うものがあるから、多くても二、三個ぐらいじゃないか」
「ぼくもやったけど、全部草だった。時々あった茸が嬉しく感じるぐらい、E級に上がるまでは本当に辛かった」
モニカ以外の三人で話していると、モニカが掲示板から視線を外す。
「あの、ここに貼られているクエストはどれでも、何個でもやっていいものなのかしら」
「そうですよ。でも、何個でも?」
リオナが首を傾げると、モニカはたくさん貼られていた採集クエストの紙を剥がす。そして三つに分けた。
「キモト、タロナは水の近くに生えていますわ。それにスイジ、クジナ、ナデナは路傍に生えていて、ラタケとメススキはどちらも広葉樹から生えている茸で、見つけやすい。ノキアの周辺にはセヴェン川もコンコアドラン森林もありますわ。だから、この三種類七つのクエストは一回で達成可能だと思いますわ」
すらすらと淀みなく、まるで周辺の地図が頭の中に入っているかのようにモニカが言う。
「す、すごいですね、モニカ。あの、広葉樹ってなんですか」
「広葉樹は、幅の広い葉をつける樹木のことですわ。ルルケ国に分布するものでいえば、ブナ、カシ、クスノキかしら」
「へ、へぇ……そうなんだ」
黎明の疾風団は新しいメンバーですらすごいな!? そんな声が周囲から聞こえ、リオナはハッと気づく。
「もしかして、モニカの目が悪くなったのって……」
「そうですわね。家のために何かできないかと思って、読める本は全て読みましたわ。こうして活かせる機会があって良かったと思いますの。あの時間は無駄ではなかったって思えますもの」
「そうですねぇ……。本当に、良かったです」
「リオナ? ちょっと、何を泣いているの。あなたが泣くようなことではないでしょう?」
「ですけど……モニカは、本当に苦労していたんだなって思って」
「もぅ……ほら、リーダー。泣きやんでちょうだい。わたくしに教えて下さいな。このクエストはどうやったら受けられますの?」
「う、うん……こっちです。受付で、クエスト受けるってことを伝えます」
涙を拭ったリオナは、パタパタと走って受付まで行く。そこでもらい泣きをしていたように目元を拭ったララが、笑顔で待っていた。
こうして、初めてのクエストを受けたモニカ。採集クエストを難なくこなし、別の日も似たように組み分けした採集クエストをこなした。
そして、八日目。
採集クエストを五十個こなしたモニカはE級に階級を上げた。この記録は最速ではなかったが、片手で収まるくらいの順位だ。
採集クエストの後半になると、簡単なものではあるが重騎士用の盾も身につけていたモニカ。
女性重騎士モニカ・ハルトレーベン。その名は、ノキアの冒険者達に広く知れ渡ることとなった。
第十話、始まりました。
そして始まっている、締め切り当日までのタイムアタック。
投稿期限の九月末までには、本編が終わる予定です。
終わらなかったときは、諦めて十月以降も更新していきます……。
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