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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第九話 恋と仲間と、波乱の幕開け

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9.6 パーティの名前①


 リオナ達三人は、モニカを加えて四人のパーティになった。

「まずはモニカの冒険者登録ですね」

「リオナの断熱防具も揃えないと」

「登録後のことも考えると、テフィヴィかノキアか……」

「最初は採集クエストでしたよね? それならやりやすそうな、コンコアドラン森林が近いノキアではないでしょうか」

「いいね。ノキアなら防具も作れるだろうし」

「移動はどうしましょうか」

「ハルトレーベン嬢もいるし、乗合馬車を捜そうか」

「あのっ」

 ブライスが馬車乗り場へ行って時刻を確認するためその場を離れようとしたとき、モニカが呼び止めた。

「あの、わたくしはこれから冒険者になります。ですので、普通の冒険者と同じように行動したいですわ」

「モニカは、一日中歩ける?」

「いっ……い、一日中でもどれだけでも、それが冒険者としてのあり方ならば、それに倣いますわ」

 グッと両手を握って前のめりに答えるモニカを見ていると、無理をしているように思える。しかしそんなモニカを見て、彼女の努力しようとする姿勢を否定できなかった。

「アルフォンス様。カールト隧道は広めの街道ですし、デューオルチョインが出ればわたしが倒します。歩きで行ってみてはどうでしょうか」

「そうだね。これからパーティーとして活動する上で、ハルトレーベン嬢の基礎体力もどれくらいか知っておきたいしね」

「リオナ嬢も容量箱を手に入れたし、時間をかけて歩いても問題ないんじゃないか」

「アルフォンス様、ブライス様、ありがとうございます。ノキアについたら、わたしも容量箱を木箱から鞄に変えてもらおうっと」

 リオナが軽い足取りで動き出す。そんなリオナにアルフォンスが続き、ブライスが続き、モニカもついて行く。

 テフィヴィの東門から出て、西門の方へ回って、カールト隧道を行く。貴族の考え方、冒険者としての立場。そんなことにモニカは驚くが、カールト隧道でのリオナの戦い方にも驚いた。

「鉱物眼!」

 リオナが詠唱すると、あっという間にデューオルチョインが討伐されていくのだ。鉱魔を見ることすら初めてのモニカは、疾風のごとく素早いリオナの攻撃方法からは何も学べなかった。

 デューオルチョインを討伐しながら、カールト隧道を進む。歩き慣れていないと思われるモニカに合わせた速度にしていたが、モニカの足が止まった。

「も、申し訳ないのですが、少し、休んでもよろしいかしら……」

「アルフォンス様! 休憩です」

「了解」

「そろそろ日も傾くし、この辺りの窪みに天幕を張ろうか」

 歩くだけでへとへとになっているモニカからの申し出をリオナが報告し、アルフォンスが受けてブライスが懐中時計を見て現状を把握する。モニカは加入したばかりだが、四人での行動様式ができつつあった。

 リオナが容量箱から天幕を取り出す。

「リオナ。何か手伝えることはあるかしら」

「冒険者の研修のとき、天幕を張る方法を教えてもらえます。それから手伝ってもらえたら良いですよ」

「そ、そうなのね。わたくしでも冒険者になれるかしら」

「十六歳以上であれば、誰でも登録できますよー。モニカが危ない目に遭わないように、わたしも気を配りますし」

「わたくしも、なるべく守ってもらうばかりではないように努力しますわ」

「無理は禁物ですよ。モニカは、イヤなことがあっても我慢しちゃいますから」

「ありがとう。リオナがいてくれたから、わたくしは家を出る決断ができたの」

「モニカの力になれたなら良かったです」

 にこっと笑みを見せるリオナの顔を見て、モニカも優しく笑う。

 そんな女性二人を見ていた男性二人は、リオナが楽しそうで良かったと思っていた。


 翌朝。

 ブライスが作るスープと干し肉の朝食を終え、またカールト隧道を歩く。

 モニカ本人の宣言通り昨日は歩き続けた。そのせいで、モニカの動きがぎこちない。アルフォンスの指示でブライスが簡単な回復魔法をかけ、ノキアの街に着いた。

 通い慣れた冒険者ギルドへ行く。そこでは今日も、ララが働いていた。

 モニカが書類を書く間、すぐ横でララと話す。

「ララさん。お久しぶりです」

「リオナさん。ノキアにいらしたんですね」

「新しいパーティーメンバーの加入です」

「そうなんですね。前々から思っていたのですが、リオナさん達はパーティーの名前はないのでしょうか」

 ララから問われた内容に、リオナはアルフォンスとブライスを見る。二人が首を傾げたため、ララに向き直った。



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