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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第九話 恋と仲間と、波乱の幕開け

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9.4 モニカ②


 リオナが逃げられますようにと願い、再び叩かれた扉を開ける。

「なにか用かしら」

「旦那様が昼食をご一緒にとご所望です」

「あら。珍しいこともあるものね。いつもはわたくし一人なのに」

 一度反抗的な態度を取れたからか、まるでモニカを連行するように前後で挟む従僕に嫌味を言ってしまった。

(……この人たちに当たるのはよろしくないわね)

 自分の行動を反省し、従僕について行って大広間へ行く。

「ただいま参りました」

「座りなさい」

 父が促す席は、隣の席。正面には母がいる場所だ。キッと睨みつけられるが、母の視線には気づかなかったふりをして席に着く。

「家族で食事をするなんて久しぶりだな。アデリーから聞いたぞ。アデリーの顔を見たくないから、部屋で食べていたと」

 父の発言に驚く。それは反対だろうと。

 今日はリオナ達が来たからいるが、普段は城で仕事をしている。昼食に限らず食事を一緒に取ることは、幼少期以来だ。そんな父が、母からの言葉を鵜呑みにする。

(……普段はお母様のことを邪険にしているのに、こんなときだけ信用するなんて)

 いや、と自分の考えを否定する。

 父は母のことを信用しているのではないのだろう。家の中でのことは母の采配だ。その母が言うのだから、というだけだろう。過保護な面はあるが、表面上のものだ。女の子だから可愛いね。ただそれだけで、モニカ自身を見ているわけではないのだろう。

 スープだけの食事が日常だった。今日は、テーブルマナーも求められる内容だ。どうせお前にはできないだろうと、母はにやつく顔を隠せていない。

「……今日は豪華なお食事ですわね」

 ちら、と母を見る。モニカの嫌味を理解した母に睨まれた。

「どういうことだ? 普段と変わらない食事量だろう」

「これほど大きなお肉を頂けるのは、どれくらいぶりかしら。確か……」

「ちょっと! いい加減にしなさい?」

 ここがもしモニカの部屋だったのなら。もしも母の取り巻き達がいたのなら。モニカは確実に、びしょ濡れになっていたことだろう。そんな怒りが、母から感じられた。

(……あら? お母様ってこんな方だったかしら?)

 モニカは十七歳だ。十六歳で成人するから、同じ年頃で産んだと仮定すると、母は三十四歳。年の割には若く見える。いや、若作りをしすぎていように思えた。

 まるで十七歳の少女--よりも幼い少女が着るような、リボンやレースをふんだんに使ったドレスを着ている。それは特に胸元に集中していて、モニカとは違う胸元を隠しているように見えた。

 化粧も、侍女にやらせたのか自分でやったのかはわからない。まるで少女に見せるかのような赤い頬紅を、三十過ぎた淑女がやっている。それが、すごく滑稽だった。

 モニカが産まれている。だから母は少女から親にならないといけない。しかし母は、母ではなく、父に恋した少女のままだった。

(ははっ。わたくし、今までこんな人を怖がっていたの?)

 ぼやけていた視界。リオナが作ってくれた眼鏡で、真実が見えた。

(お父様も、面倒になったのか特に注意しないわ)

 母と娘が険悪な雰囲気になっているというのに、父は一人で黙々と食事をしている。

 やるべきことが決まったモニカは、食事に手をつけずに立ち上がった。

「お父様。わたくし、冒険者になりますわ」

「何を言っているんだ。そんなこと、許すわけがないだろう!」

 今までのモニカなら、強く言われたら従っていた。しかし、そんな弱い自分はもういない。

「お父様に許されなくても、わたくしは行きます。今まで、お世話になりました」

「モニカ! 待ちなさい!!」

 席を離れる。モニカが大広間を出るとき、バーティアンがついてきていることを確認した。

 リオナ達の居場所を聞こうと思っていると、いつも母の取り巻きをしていた侍女の内の一人が行く手を阻む。

「お嬢様。旦那様がお呼びです」

「あなたなんてお呼びじゃないわ。下がりなさい」

「この、娼、婦が……」

 よっぽど頭に血が上っていたのか、普段からモニカのことをそう呼んでいたのか。侍女はバーティアンの気配に気づかず、拳を振り上げていた。その腕を掴まれてから、バーティアンに気づいたらしい。

「娼婦、とは、どなたのことでしょうか」

「い、いえ、その……」

 侍女はしどろもどろになっている。助けを求めるような目を向けられたが、この侍女はいつも率先してモニカを苛めていた。自業自得だ。

「モニカお嬢様の様子を見ていますと、日常的にあったことなのですね」

「バーティアンに言ったら、心配するかと思ったの」

「当たり前です! モニカお嬢様のことは産まれた瞬間から見ております。……いえ、見ておりましたが、気づけませんでした。申し訳ありません」

「バーティアンが頭を下げることはないわ。わたくしが、知られたくなかったのだもの」

「モニカお嬢様。ハルトレーベン家を出る前にお伝えしたいことがございます。お部屋でお待ち下さい」

「わかったわ」

 バーティアンに腕を掴まれたままの侍女は、項垂れている。そんな侍女の様子を見ながら、モニカは自分の部屋に戻った。




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