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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第八話 モニカの眼鏡のために

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8.1 眼鏡の材料①


 ハルトレーベン家での三日間の滞在を終えたリオナ達一行は、今後のことを考えて天幕を購入した。モニカを仲間にしたいという気持ちは変わっていなかったため、リオナは二人で使える天幕を選ぶ。

 そして、モニカの眼鏡を作るためにヴァゼテラ平原へ向かう。西門から出ればすぐそこにあるヴァゼテラ平原を東門から出て、ソードラビットを狙う。

「アポフィライトは、ソードラビットのドロップ品で一番確率が低い品物です。三人でそれぞれアポフィライトを狙いましょう!」

「リオナがギルドに出してくれた情報のおかげで、ぼくも積極的に討伐できるよ」

 そう言い、アルフォンスは容量箱から葉付きのキャロットを十本取り出す。リオナが天幕を買った店で、アルフォンスも準備していた。

「それでは、よろしくお願いします!」

 リオナはヴァゼテラ平原を駆けながら鉱物眼を発動する。ソードラビットは、正方晶系。縦型の直角柱のような角を攻撃すれば討伐完了だ。鉱石の場所は尻尾周辺が多い。

 ソードラビットは、角が短剣になっている茶色い兎だ。ランクはEで、コツさえ掴めばどんどん討伐できる。背の高い草に隠れるような巣穴にいるが、一体が外へ出ると何体も穴から顔を出す。

(一体目、二体目完了!)

 ドロップ品は、角になっていた短剣と兎肉。換金額は二つで一三〇ガルド。兎の革だけだと一三〇ガルド。狙っているアポフィライトですら、三〇〇ガルドだ。

 兎は群れる生き物だ。だから大量に倒せるが、換金額が低い。それがソードラビットの討伐があまり人気にならない理由だ。

 ギルドへ行ったときにちらっと見たら、店で売られている兎肉を狩るクエストは常時張り出されていた。

(……ジェイコブさんが死んじゃう少し前、眼鏡のことを教えてもらった。便利だと思うんだけどな。見え方が悪い人も、そこそこいると思うんだけど)

 考え事をしつつ、パンッ、パンッ、パンッ、と三体同時に倒す。兎肉、兎肉、角剣。アポフィライトはなかなかドロップしない。

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッパパンッと六体倒す。全て兎肉。何体倒せばいいのかと、少し落ちこむ。

 昔から使っている鞄に兎肉以外のドロップ品を入れた。残念ながら、リオナが持っているのは普通の鞄だ。生肉は腐るし、臭いも移る。

 鉱魔のドロップ品は、回収されないと自然に返っていく。それがどんな仕組みになっているかは、ジェイコブですら解明できていない。

 アルフォンス達はどうかと、二人がいる方向を見る。

(アルフォンス様、ちょっと大変そう……)

 アルフォンスの状況を見て、手助けするためにそちらへ向かう。

 ソードラビットを倒す一般的な方法は、二つ。

 一つはブライスが実践しているように、石に突撃させて突進を封じ、角剣が石に当たる際のキーンという高音でめまい状態にして攻撃する方法。

 二つ目は、葉付きキャロットを与えて穴から出し、その餌に夢中になっている間に攻撃するというもの。

 二つ目の方法は、一体ならば楽に討伐ができる。しかし複数体いると、話は変わってくる。ソードラビットは群れで生活しているから、仲間が攻撃されたと思うと餌になんて目もくれずに突進してくるのだ。

「アルフォンス様! 葉付きキャロットから手を離して右へ避けて下さい!」

 アルフォンスがリオナの言うとおりに動く。

 鉱物眼を発動中だったリオナは、鞄の中から角剣を取り出す。そしてアルフォンスに突撃しようとして外したソードラビットと対峙する。剣先を向けてくるソードラビットをいなし、キャンッと短い悲鳴のような声を上げたソードラビットの鉱石を殴った。

 ぽろっと、透明に近い薄い緑色のアポフィライトがついた鉱石がドロップした。

「やった! 出た!!」

「これがアポフィライト?」

「そうです、そうです!」

「アル、リオナ嬢。出たことは喜ばしいけど、まだたくさんいるよ」

 目的のアポフィライトが出て、つい浮かれてしまった。

「ブライス様、ありがとうございます! ぱぱっと残りを片づけてしまうので、アルフォンス様、アポフィライトをお願いします!」

 了解、という声を聞くよりも先に、ソードラビットをポンポポンと倒していく。その三体は、兎肉だけドロップした。

 落ち着いた場所で話すため、ソードラビットノ巣穴がある位置から西門の方へ寄る。そしてアルフォンスが容量箱に仕舞ってくれていたアポフィライトを取り出した。

「良かったね、リオナ」

「はい! ですが、このアポフィライトは手の平よりも小さいですよね。眼鏡を作る際、掛ける人--今回はモニカの見え方を調整しながらレンズを作ります。一度で調整できれば良いですけど、ジェイコブさんが作ったときも三回やり直していました」

「リオナに色々教えてくれたジェイコブさんでも、それぐらいなんだ」

「そうです。しかも、レンズは二つ作ります。ものすごく大きいアポフィライトであればそれを二つに分けて、というやり方もできますが……」

 アルフォンスがアポフィライトを見る。

「これは、せいぜい一枚分だね」

「はい。あとモニカの許可があれば問題ないんですけど、レンズの色は合わせたいです」

「色? アポフィライトって、この色だけじゃないの?」

「ほぼ同じ色ですが、完全な透明、透明に近い薄い緑色、透明に近い薄いピンク色があります。同じ色であれば良いんですが、鉱石の色は研磨しても変えられないんです。黄色を金色に、というように、似たような色であれば輝き度だけなので問題ないんですけど……」

「なるほどね。やっぱりリオナとしては、二枚のレンズが同じ色の方が良いよね」

「はい。あえて二色の眼鏡にするということでなければ、左右の見え方は同じ方が目の負担も減ると思います」

「研磨師を目指しているだけあるね。ちゃんと使う人のことも考えてる」

「あ、ありがとうございます」

 アルフォンスがリオナを褒める。それが何だか嬉しくて、リオナは思わず照れた。



 始まりました、第八話。

 八話全体としては文量が少ない方ですが、内容は濃いはず。きっと。

 どんな内容? と気になってくださったそこの読者様!

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