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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第七話 モニカ・ハルトレーベン

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7.6 モニカの味方①


 リオナが持ってきた昼食の少なさに、モニカは驚いたようだった。しかしリオナが、持っていた干し肉をちぎって自分とモニカのスープに入れたことにはさらに驚いたらしい。

「干し肉にスープの水分が染みこむぐらいになると、良い感じの味になりますよ」

「え、本当に……?」

 モニカはお嬢様だから、そもそも干し肉を食べたことはないかもしれない。だからおっかなびっくりというような感じで、スプーンで掬う。

「……いつもの味と違いますわ。こう、なんというか……深み? 塩気が丁度良いような気がしますわ」

「美味しいですよね? わたしも昔、よくやっていたんです。まぁ、わたしの場合は干し肉じゃなくて、結果的に干された肉なので、今食べているような味じゃなかったですけど」

「……リオナも、大変な生活をしていたのね」

「ジェイコブさんが亡くなった後、その息子のオルゴーラ様の工房でお世話になっていたんですけど、十一人分の食事を用意するのは大変でしたね」

「じゅっ……それは、もちろん複数の料理人がいるのよね?」

「まさかっ。オルゴーラ様は倹約家でしたからね、準備していたのはわたしだけですよ」

「えっ……リオナが、一人で……?」

「そうです、そうです。研磨師の工房だったんですけど、毎日汚れもすごかったですね。研磨した後の細かな欠片がついているような服も、人数分洗っていましたし」

「……それも、リオナが?」

「そうですよー。わたしは研磨師資格を持たない、落ちこぼれなので。オルゴーラ様の機嫌が良いときか、食材が余ったときしか食べられなかったですしね」

「……リオナは、どうしてそこまで明るくいられるのかしら」

「つらかったですよ? でもお使いでお店に行くことも、鉱魔のドロップ品を集めるために外に行くこともありました。籠もりきりではなかったので、外でイライラを発散できていたのかもしれないです」

「ちょっと待って? 確か、リオナは冒険者になってから一ヶ月くらいと言っていなかったかしら。何だか話を聞いていると、もうずっと前から鉱魔を倒していたように思うのだけれど」

「あ、わかります? ジェイコブさんが亡くなってからなので、六年前からですかね。ドロップ品を買うと高くつくって、オルゴーラ様から指示を受けて外へ行っていました」

「えっ? えっ?? リオナは、若く見えるけれど実は三十歳くらいなのかしら??」

「面白いことを言いますね。冒険者は成人年齢と同じく、十六歳以上から登録できるんですよ?」

「えっと?? つまり、リオナはいくつなのかしら」

「十六歳ですよ? 今年、ようやく研磨師の受験資格も得たんです。今のわたしじゃ、まだまだ受験料が稼げていないんですけど」

「恥ずかしそうにしているけれど、そういうことではないのではないかしら??」

「なにかおかしかったですか?」

 リオナが首を傾げる。そんなリオナを見てモニカも首を傾げた。

 深く考えない方が良いと結論づけたらしいモニカは、ひとまず食事の手を進める。リオナも食べ終えて、台車に食器を載せ、二人で厨房へ向かう。

 アルフォンス達はどうやら大広間で歓待を受けていたらしく、リオナ達が食器を下げる時間と重なったようだ。忙しなく人が出入りしている。そんな中、厨房で出会った青年がリオナ達を見つけた。駆け寄ってくる。

「モニカお嬢様、いつもありがとうございます」

「スティーブがしてくれていることと比べたら、簡単なことよ」

「モニカお嬢様……っは、奥方様がいらっしゃいます。遭遇する前に、早くお部屋へ」

「わかったわ。いつもありがとう、スティーブ」

 モニカにとって天敵だと思っているのだろう。スティーブが誘導してくれたおかげで、苛烈な夫人と遭遇せずにその場を離れられた。

 部屋へ戻る途中で、モニカに聞く。

「モニカは、ハルトレーベン家で働く人のこと、覚えているんですか」

「全員ではないわ。ただわたくしのことを案じてくれる人は覚えておきたいじゃない」

「さっきのスティーブさん以外だとどなたですか? 執事さんもそうですよね」

「そうね。執事のバーティアン、皿洗いのスティーブ……後は、洗濯係のレメディかしら」

「洗濯係? そっか、モニカの服を洗ってくれるんですね」

「いいえ。お母様の目がある限り、わたしと深く関わるようなことはしないわ。お母様達と一緒にいた侍女達、わたくしに水をかけてきたでしょう? あの水を用意しているのがレメディなのよ」

「えっ、それじゃぁ、虐めの片棒を担いでいるじゃないですか」

「違うの、そうじゃないのよ。レメディがハルトレーベン家に来る前は、掃除した後の汚水や塵が浮いているような水だったもの。レメディが、冬に浴びても風邪を引かないようなものに変えてくれているのよ。夏は、逆に少し冷やした水なの。暑いときだったから、助かったわ」

「えぇ……それはそれで、どうなんでしょう……」

「スティーブとレメディは、バーティアンの孫なのよ。あら、よく考えてみたら、わたくしってばバーティアンの一家に守られているわね」

 モニカと厨房へ向かっている間に開けられていた窓を閉めながら、コロコロと笑う。レメディが冷風で部屋の中を乾かそうとしてくれたと思うわとモニカが言った。

 軽快に笑えるような話ではないと思うが、執事一家の三人がいたからこそモニカは病まずにいられたのだろう。

 モニカの部屋に戻ったリオナは、長椅子に座るモニカに勧められて正面に座り、聞く。




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