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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第六話 首都テフィヴィ

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6.2 テフィヴィの流行り


 貴族以外が東門を使うということで、数多くの冒険者たちで溢れていた。西門から東門へ行くまでに二時間。東門に着いてから入るまでに一時間かかった。そのせいで、もう周辺が薄暗い時間になっている。テフィヴィで一晩過ごさないといけないかもしれない。

 ようやくリオナたちも入れるようになり、東門を潜る。ごちゃごちゃっと建物が並んでいる中、僅かな隙間の奧に城が見えた。方角としては、北西の辺り。

「テフィヴィにはお城があるんですねぇ」

「あの日までは、そこで(まつりごと)をしていたからね。今は、貴賤を問わず議会のメンバーが代わりに働いてるよ」

「それは……貴族様、納得してないでしょうねぇ」

「まあ、ね。それはともかく、一先ず宿を捜そうか。テフィヴィではオルハルガルへ行くまでの食糧を買い足しておかないと」

「わたしの断熱防具はどうしましょうか」

「んー……ここで作ってもいいと思うけど、ここは貴族が多すぎて冒険者にとってはあまり良い街じゃないから。オルハルガルに着いてからでも遅くはないかな」

「わかりました。では食糧だけ捜して明日出立しましょう。宿はどうしますか?」

 アルフォンスに聞くと、アルフォンスはブライスを見た。

「本来なら、アルが泊まる宿は窓があって虫すら入ってこないような場所が望ましい。しかしこの街ではそれを望むと、少々面倒なことになる。だから、空きがあればギルドの上に泊まりたいと思うが……」

 入るまでに一時間も混雑していたのだ。ノキアの街のようにはいかないだろう。冒険者用にギルドが管轄する宿も数軒あるらしいが、それも望みは薄い。

「一応、冒険者用の宿を回ってみましょう。最低でも一部屋あれば泊まれます」

「「いや、それは駄目だ」」

 リオナの提案に、アルフォンスとブライスが同じ言葉を重ねた。

「リオナは女の子だよ。男のぼくらと同じ部屋じゃ駄目だ」

「ですが二部屋だと望みが薄くなるのでは」

「それでも、駄目だ。最低でも二部屋。これは絶対」

「それなら、早く宿を回りましょう」

 三人で宿捜しを始める。しかし思っていた通り、ギルドの上は満室。ギルド管轄の宿も全て部屋が埋まってしまっていた。

 それではなるべく東門に近い宿を捜そうと移動していたとき、わっと歓声が上がる。

「ちょっとだけ、覗いても良いですか」

「いいよ。行こう」

 アルフォンスの許可を得て、歓声が上がった方へ行く。そこは道の延長上に城がある噴水広場。

 ノキアのように噴水の周辺に多くの店が並んでいる。東門の方とは違い、一軒一軒に余裕があった。路地裏もある。造りも、煉瓦を土台にしていて頑丈そうな建物ばかりだ。

 賑わっていたのは、ある店の一角。クリオライトに照らされているその場所には多くの人が集まっていて、何かを円形に囲っているようだ。比較的人が少ない場所から覗いてみると、ドレスを着た一人の女性の前に金髪の男性が何かを持って膝をついていた。

(なんだろう……)

「確かあいつ、前にもやってなかったか」「振られたんだろ」「こんな公衆の面前でよくやるよなあ」「プロポーズなんて、二人きりでやるものだろ」「いや、逆じゃないか。公衆の面前だから、断りづらいんじゃないか」「なるほどな」

 複数の街人によると、どうやら金髪の男性はプロポーズをしているようだった。そんな場面に初めて遭遇したリオナは、もっとよく見ようと円形の人だかりの周りを回る。

(プロポーズなら、ユウトピアラが落とすルビーだよね!)

 少し遠目でも指輪の細工がわかるだろうかと、うきうきしながら金髪の男性の正面側へ回った。

(……あれ? 手入れを怠っているのかな?)

 目についたのは、指輪の細工よりも、ルビーにしては鈍いと思われる輝き。ルビーは宝石の王と呼ばれたり、持ち主に幸運を招いたりする。だからプロポーズのときに用いられるのだ。輝けば成功、色が鈍ると失敗すると言われている。

 しかし、そもそも金髪の男性が女性に差し出しているのは、本当にルビーなのか。もし間違っていたら大変だと、金髪の男性に伝えておこうかと思ったが。

「リオナ。そろそろ良いかな? 宿を捜そう」

「あ、はい。見学させてくださり、ありがとうございます」

 アルフォンスに呼ばれ、その場を離れる。

 まだ資格を取っていないとはいえ研磨師の端くれとして、金髪の男性が持っていた指輪の宝石が気になってしまった。だから、何度も振り返ってしまう。

「リオナ、どうしたの?」

「あ、いえ……あの男性が持っていた指輪の宝石、本当にルビーかなって思ってしまって」

「ルビーなんじゃないの? リーラベルグからドロップ品を持ってくるたびに見かけたけど、みんな赤い宝石の指輪でプロポーズしていたよ?」

「そうなんですね。それなら、そうなのかなぁ……。わたしの考えすぎかもしれません。ルビーかスピネルか、目の前で見ればわかりますけど、大切なプロポーズの場面でルビー以外を使うなんてあり得ないですよね」

「すぴねる。ルビーに似ているんだ?」

「はい。同じように赤い宝石なんですけど、綺麗に磨かれているとルビーに似た輝きを出すんです。宝石として問題なく使えるんですけど……」

「プロポーズの宝石としては、向かない?」

「と、思います。庶民の間だったらそこまで気にしなくていいと思いますが、相手の女性が貴族様のようにも見えたので……」

「確かにね。ぼくも知らなかったし、貴族の間でもルビーしかプロポーズで使われないと思っている。そんな中、似せた違う宝石でプロポーズされたとなったら、面子が潰れるだろうね」

「まぁ、わたしがそこまで気にする必要はないですよね。すみません、お時間をいただきました」

 アルフォンスとブライスと一緒に、また宿を捜す。そして噴水広場から東門寄りのところに、二部屋開いている宿があった。




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