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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第五話 憎悪と欲望

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5.3 最速昇級②


「リオナ!! 無茶しすぎ!!」

「すみません。誰か動ける人を捜すよりもわたしが行った方が良いと思いまして」

 ぷんすかと怒るアルフォンスは、レイジネスシードを摂取した後の状態だ。体作りに勤しんでいるのか、リオナを心配して握る手は少し硬い。

 そんな小さな変化に心がざわつく。その理由は何かと考えている内に、アルフォンスからの治療が終わった。

「ありがとうございます、アルフォンス様」

「もう、本当に勘弁して。ネイサンの補助が間に合わなかったら、どうするつもりだったの」

「ブライス様が……」

「そう。リオナ達にライトキャトルがぶつかる前に、石畳の地面を少し崩したんだ。ボコってね。それにライトキャトルがつまづいて、あそこに飛んでったんだ」

「なるほど。そういうことだったんですね」

 壁に刺さっているライトキャトルは、気絶しているのだろう。鉱魔は、討伐されれば姿を消す。ドロップ品が落ちることもあれば、そうでないときもある。

 ライトキャトルが暴れ回ったせいで、噴水広場やその周辺はボロボロになってしまった。

 これから復旧させるのに大変だろうと思っていると、ブライスがこちらにやって来る。

「アル。ギルドから招集。今後の復旧作業で話があるって」

「わかった。今行く」

 アルフォンスは白魔術師だ。前に服を直してもらった。その要領で、復旧していくのだろう。

(わたしは白魔術師じゃないからなぁ……パーティーメンバーだけど、一緒にいても良いものかな?)

 ひとまず赤魔術師のブライスの元へ行くか。そう思ったとき、街の人たちが数人がかりで壁に刺さったライトキャトルを引っ張り出した。

(気絶、だからなぁ……。ちゃんと倒した方が良いよね)

 暴れていたライトキャトルは、気絶中。であれば、他の誰でも討伐可能だろう。剣を背中に背負った人や、弓を持っている人もいる。見覚えのあるローブも発見した。

(あれ、あの三人は……)

 見覚えのある三人組だ。カールト隧道でリオナから全力で逃げていた。デューオルチョインを討伐していたぐらいだ。等級はBかCだろう。それなら任せても大丈夫。そう、思ったが。

(んー……早く討伐しないと、ライトキャトルが復活しちゃうけど……)

 カールト隧道でもそうだったが、あの三人組は行動が遅い。冒険者なのに、街の人たちと一緒に気絶しているライトキャトルを観賞している。

「っ!」

 リオナが走り出す。ライトキャトルの尻尾が、少し動いた。しかし、リオナよりも近い位置にいる人たちは誰も気づいていない。

「鉱物眼!!」

 ライトキャトルは、単斜晶系(たんしゃしょうけい)。鉱石の種類としては、デューオルチョインと同じだ。クリオライトの明かりで照らされた鉱石は、右背面の臀部寄りの所にある。直角柱のような塊の、一面だけが斜めになっている部分を狙う。

 一撃必殺になる鉱石の、さらに限定された角を殴った。その瞬間、起き上がろうとしていたライトキャトルはばらばらになる。褐色の岩がついた、白濁しているクリオライトがドロップした。

 どこから現れた? どうやって倒した?

 現場がざわつく中、リオナはクリオライトを拾うため触れる。

「っ」

 その瞬間、閃光のような光で一瞬目が眩んだ。何度も瞬きして目が回復した頃、クリオライトが赤黒く変色していた。こんな変化をすることもあるのか。そんな風に軽く思っていると、サラサラと砂状になってクリオライトがなくなってしまった。

(えっ……)

 ドロップ品が出ないこともある。しかし、落ちた後のものがなくなることなんて初めてだ。

 今の現象を他にも目撃した人はいなかっただろうか。そう思って周囲を見れば、わっと人が集まってきた。

「あんた、すごいなあ!」「僕の彼女はすごいなあ!」「カールト隧道で会った人ですよね! あの時はすみませんでした!」「どうやってやったんだ?」「鉱魔はあんな倒され方をするんだなあ」

 色んな方向から話しかけられ、対応できなかった。しかし一つ聞き覚えのある声がある。集団の中から、その人物を引っ張り出した。

「オトコルさん、どうしたんですか」

「いやあ、騒ぎがあったからね。師匠の工房から抜けてきたんだ」

「そうだったんですね。キングスコーピオンの毒から回復できたんですね」

「それがさ、ちょっとまだ手先に痺れが残っているんだ。作業に少し遅れが出ている。リオナなら、わかってくれるよね?」

「手先に痺れが……それは、大変ですよね」

「リオナ!!」

 オトコルと話していると、今にも殴りかかりそうな形相でアルフォンスが駆け寄ってきた。そしてオトコルとリオナの間に入る。

「リオナ。ギルドの人が呼んでる。行こう」

「は、はい……」

「リオナ! 僕は待っているからね!」

 アルフォンスに手を引かれて歩いていると、後ろでオトコルがよくわからないことを言った。その言葉を聞いたアルフォンスは、踵を返してオトコルの前まで戻る。

「あんた、さっきどさくさに紛れて何か言っていたな? あんたにやる気があるなら対応するけど」

 ポキッ、ポキッと関節を鳴らす。身長が変わっただけで、他はリオナが工房を出たときから変わらない。しかしオトコルは、前のときと同様にアルフォンスには逆らわないと決めたらしい。何も言わず、その場を去って行った。

「ったく、何がしたいんだあいつは」

 走り去っていったオトコルを睨んでいたアルフォンスは、バッと振り返ってリオナの両肩を掴んだ。

「リオナ! 事実じゃないことはちゃんと否定して。相手をつけあがらせるだけだから」

「つけあがらせる……?」

 オトコルは何を言っていただろうか。聞き覚えのある声だと思っただけで内容を聞いていなかった。

 首を傾げるリオナを見て、アルフォンスがふう、と息を吐く。

「リオナは、単独行動しないで。ぼくか、ネイサンと一緒に行動してほしい」

「わかりました」

 アルフォンスは何を心配しているのか。そんな疑問を持ったが、そのままギルドへ戻る。

 そこではララと一緒に、換金係のギルド職員がいた。そして二人一緒に、リオナに頭を下げる。

「リオナさん! 情報が行き届いていなくて、対応できなくてすみませんでした」

「すみませんでした!」

「い、いえ、気にしないでください。わかってもらえたなら良かったです。それで、わたしは昇級で良いんですよね?」

「もちろんです! ギルド史上最速で、C級に昇格です」

 手続きをするのでこちらへ。ララについて行き、受付で冒険者カードを渡す。そして戻ってきたとき、等級の部分がEからCに変わっていた。




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