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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第五話 憎悪と欲望

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5.1 冒険者リオナの活動服


 シャドウルからアルフォンスを助け出したリオナたち。パーティーメンバー全員で夜空を寝転んで楽しむという贅沢な時間を過ごした。

「それでは、もう少しで夜が明けるのでノキアの街に戻りましょうか」

「そうだね……リオナ、ちょっと待って!」

 リオナが先に立ち上がる。すると、アルフォンスが慌てたようにリオナの背後にぴったりと立った。

「アルフォンス様? どうしましたか」

「リオナ、ごめん。そのまま動かないで」

「は、はい……」

 緊迫したようなアルフォンスの指示を聞き、じっと待つリオナ。そんなリオナに、ブライスから臙脂色の短いローブを渡される。

「リオナ嬢。それだと短いかもしれないが、アルの魔法が終わるまで足を隠して」

「足を、隠す……」

 ブライスから指摘され、リオナは初めて自分の現状に気づいた。

 アルフォンスを助けた後に落ちるとき、折れた枝に引っ掛かっていたのだろう。ジェイコブにもらった服がそこそこ際どい位置ぐらいまで裂けていた。

「わっ、ご、ごめんなさいっ。気づかなかった」

 慌ててブライスのローブで足を包む。

 アルフォンスがリオナから離れ、ブライスを見る。

「ネイサン。わかっているよね?」

「勿論。記憶から抹消する」

「ならば良し」

「あの、アルフォンス様? 先程から何の話をしているんですか」

「んー、ちょっとね。リオナ。服を直しちゃうからちょっと待ってね」

「はい……あ、そうだ。アルフォンス様。服を直すのはちょっと待ってもらえますか」

「え。何で?」

「その……今まではこれしか服がなかったのでどうにか破れないように着ていたんです。でも冒険者になってから鉱魔と戦う頻度が多くなりました。キングスコーピオンのときもそうでしたが、今後動きづらいと感じることがあると思うんです。なので、いっそのことズボンを穿いて活動しようかと思うんです」

「なるほどねえ。確かに、リオナは極近接攻撃をする。いざって時に動けないと危ないね。良いんじゃない?」

「ありがとうございます!」

「でもさ、リオナ。冒険者になって稼げているでしょ。色々と貯めないといけないお金もあると思うけど、服をいくつか買っても良いんじゃないかな。それで、ジェイコブさんからもらったその服は直すっていうのはどう?」

「そうですね。そうします」

「それじゃあ、リオナの服に魔法をかけるね」

 そう言うと、アルフォンスはリオナの服を掴む。

「白魔術師アルフォンス・アドルフ・アディントンが命じる。世界に満ちるマインラールよ、リオナの服を修繕せよ」

 詠唱が終わると、裂けていた服が元通りになっていく。裾までくっついたことを確認すると、リオナはブライスに臙脂色のローブを返した。

「ありがとうございました、ブライス様」

「リオナ嬢の服、いつ見に行こうか」

「それなんですけど、アルフォンス様はこの後レイジネスシードを摂取しますよね? たぶん、急激な成長による痛みで辛いと思うんです。なので、アルフォンス様が体を休めている間に買っちゃおうかと」

「どうせなら、アルに選んでもらったらどうかな」

「いいえ! 貴重な時間をわたしのために使ってもらうのは忍びないです。今後のためにも、ちゃちゃっと揃えちゃいます」

「でも……」

 まだ何か言おうとするブライスの腕に手を当て、アルフォンスが止めた。

「今、リオナにとっての最優先事項は冒険者の階級を上げること。それなら、効率よく動かないとね」

「ありがとうございます、アルフォンス様。買ったら、預かってもらえますか」

「もちろん。リオナが許す限り何着でも持ってきて」

 アルフォンスに頭を下げ、ノキアへ戻った。


 そして、二日後。

 レイジネスシードによるアルフォンスの成長痛がなくなるまで一人で行動していたリオナは、二人が泊まる宿を訪れた。

 アルフォンスの容量箱へ入れる前に軽く服を確認してもらったのだが、アルフォンスもブライスもあまりいい顔をしなかった。

「すみません、ダメでしたか」

「いや、駄目っていうか……」

 アルフォンスとブライスは、互いに見合って困ったような顔をしている。

 リオナが選んだ服は、短いズボンだ。足を覆わず怪我をしやすくなるが、その分動きやすい。上下で繋がっている服だから、別々に買うよりも嵩張らないと判断した。

「えーと、リオナ嬢? 普段はどんな風に着るのかな?」

「どんな風にと言われましても……そのまま着るだけですよ? それ以外の着方はわかりません」

「ほら、上にローブを着るとか」

「動きやすさを重視したので、それだと意味がないと思いますが……お二人がそんなに言うのなら、違う服にしましょうか。返金対応ってしてもらえるのかな……」

「ちょ、ちょっと待った!」

 服を持って宿の部屋を出ようとしたリオナを、アルフォンスが止めた。そして何やらブライスと肩を組んで相談し、答えが出たらしい。

「リオナが、活動しやすい方が良いと思う。怪我をしたらぼくが治すしね。ただ、一つだけ約束してほしい。戦う時以外は、絶対にローブを着ると」

「わ、わかりました。確かに、これからどんどん寒くなっていきますもんね。防寒は大事ですね」

 魅惑の生足はなるべく見ないように行動する。そんな男衆の誓いは、恐らくリオナにはばれないであろう。




 第五話始まりました。

 話のストックができるまでは、不規則な投稿の仕方をしていきます。

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