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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第四話 絡まり、空回る心

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4.8 封印できない気持ち


・-・-・-・-・


 ネイサンは、自分の気持ちに蓋をしておこうとした。

 だから、アルフォンスとリオナと店へ行って路地裏に行った時、二人が仲良くなれるよう誘導した。

 アルフォンスはリオナに感謝され、服を見立ててもらい、順調に行っていたはず。しかしどこかで間違えたのか、容量箱の話題の時に墓穴を掘ってしまった。

(っ、好奇心旺盛なリオナ嬢の、目がキラキラしている……)

 容量箱を見るために近づいたリオナを意識してしまい、不自然な距離の取り方をしてしまった。そのことを追求されることはなかったが、それからずっとリオナを見てしまう。

 一度距離を置かないと、と思ったから、鉱魔のランクの話は都合が良かった。

 宿からギルドへ行く。リオナが提出した情報のおかげで大分討伐数が上がっているらしく、賑わっていた。受付嬢のララの元へ行き、鉱魔のランクが書かれている冊子をもらう。討伐情報については有料だが、冊子は無料らしい。

 宿の部屋には、アルフォンスとリオナが二人きり。早く行くよりもどこかで時間を潰そうか。そう考えた矢先。何人もの女性の視線を感じた。

 その視線から逃れるように宿の部屋へ戻ると、ネイサンが想像していたような甘い雰囲気にはなっていなかった。

(アル……伝えたのか)

 アルから覚悟を聞いていた。だからすぐには助け船を出さない。しかし二人は、黙ったまま。このままでは、ネイサンの願いが叶わない。

「アル。こうなることはわかっていただろ? お前の覚悟はそんなものだったのか」

「そっ、れは……」

 とにかく場の空気を動かさないといけない。そんな気持ちで、今にも泣きそうになっていたアルフォンスの頭を乱暴に撫でた。

 ネイサンの配慮は成功し、アルフォンスとリオナは元の空気に戻った。

 アルフォンスが恍惚とした表情で自身の両手を見つめている。

(……リオナ嬢の配慮に感謝だな)

 ネイサンが動いただけでは駄目だった。リオナも考えて行動してくれたおかげで、アルフォンスの笑顔が失われなかった。


 それから、一度リオナと別行動をすることになった。アルフォンスのレイジネスシード獲得に協力し、六日目に合流。

 今にも寝そうなアルフォンスを支えつつ、リオナが狩りをする様子を見守る。本来は、夜盗が来ないように周囲を警戒しなくてはいけない。しかし、さくさくとテンプティテンプティを瞬殺していくリオナのことを、ずっと目で追ってしまう。

 ふわりふわりと服の裾を翻し、時にふくらはぎが見えて慌てて目をそらしたり。

 すでに料金は返金されたが、ネイサンが買った薄いピンクのローブを着るリオナを意識してしまったり。

 このままではいけないと、視界にリオナを入れないようにしないといけないと、アルフォンスを近くの木の根元で寝かせた。

 自分の役割は周囲の警戒。そう言い聞かせて再びリオナを見れば、何度も手を止めていた。満月の明かりの下周囲を窺うが、特に何かの気配は無いように思った、のに。

「アルフォンス様!!」

「アル!!」

 アルフォンスが、大人の大きさの梟に攫われてしまった。

 焦るリオナを見て、逆に冷静になったネイサンは、まず敵の情報を得る。話を聞く内に、後悔の念が押し寄せてきた。

(……おれが私情に捕らわれなければ!! あのままずっと、アルを支えながら立っていれば!!)

 少し前の自分の行動に苛立ちつつ、リオナから話を聞いた。そしてリオナも危なかったのだとわかる。

(くそっ。どうしておれは背が高いんだ!!)

 頭を乱暴に掻き乱しながら、詮無いことを考える。アルフォンスもリオナも、どちらも大切だ。危険に晒したくなかった。

 ネイサンの願いは、アルフォンスが幸せになること。その願いのためには、リオナが必要だ。そう、思うのに。

 手振りをつけていたことを恥ずかしがる姿。

 絶妙な角度で上目遣いをしながら、ネイサンを心配してくれる優しさ。

(……アトゥンツリーから助けられて思わずときめくなんて、どこの乙女だよ)

 一度はっきりと自覚してしまうと、もう見て見ぬ振りはできなくなった。


 リオナと一緒にアルフォンスを捜し、シャドウルを見つけた。そこから先は作戦通りに動く。

「赤魔術師ネイサン・ブライスが命じる! 世界に満ちるマインラールよ、二人の落下速度を緩和せよ!」

 背の高い木の上から、アルフォンス達が落ちてきた。アルフォンスの指示よりも早く、ネイサンは詠唱する。

(……良かった。アルフォンスもリオナ嬢も、無事だった)

 ネイサンの願いは、アルフォンスが幸せになること。どちらも欠けてはいけない。

 ネイサンが安堵していると、アルフォンスが地面に寝転がった。

「リオナも、やってみて」

「は、はい」

 二人で星空を見上げている。控えめに言っても、良い雰囲気だろう。邪魔物は退散するか。そう、思ったのに。

「ほら、ネイサンも。一緒に星を見ようよ」

「あ、ああ……」

 アルフォンスから誘われてしまった。せめてと、わざわざ今の立ち位置から遠いアルフォンスの隣に寝転ぶ。

(……位置取り、間違えた……)

 ふふっと、上機嫌に思えるリオナの笑い声が聞こえた。だから思わずそちらを見てしまった。アルフォンスは反応していない。もしかしたら聞こえた上で、リオナと星空を見る時間を大切にしているのかもしれない。

 しかし、ネイサンは見てしまった。リオナを意識しないように、見ないようにしていたのに、視界に入れてしまったのだ。小さな笑い声を思わず拾ってしまうほど、リオナを意識してしまっている。

(……おれの幸せは、アルが幸せになること。だから決して、この気持ちはリオナ嬢にばれないようにしないと……)

 満月が傾き、朝まであと少し。そんな時間にネイサンは、今後の方針を硬く心に決めた。


・-・-・-・-・


♪〜 ネイサンこれから沼はまる〜お沼にはまって さぁたいへ〜ん 〜♪(どんぐりころころ調)


 四話終了です。お付き合いいただきありがとうございました。二日ほどお休みをいただきまして、第五話を投稿していきます。ブックマーク登録をして待っていただけると幸いです。それでは、またお会いできるのを楽しみにしております。

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