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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第四話 絡まり、空回る心

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4.2 当面の目標①


 店を出たリオナたちは、一度アルフォンスが泊まっている部屋へ戻った。

 そして、決めきれていなかった今後の目標を話し合う。

「リオナがジャッジベアの判定に弾かれてしまうとしても、やっぱり容量箱はあった方がいいと思うんだよね」

「いや、待てよ? リオナ嬢が提出した情報によれば、ジャッジベアに四回認められると見た目の大きさは小で今と変わらないのに、特大の容量になるんだよな? それなら、アルの容量箱を特大にすれば良いんじゃないのか」

「ぼくだけじゃなくて、ネイサンのやつも同じようにすれば、さらにたくさんもてるんじゃない?」

「え、ブライス様も容量箱を持っているんですか」

 ブライスは何か持っていただろうか。リオナが疑問に思って観察していると、ブライスはすぐに腰紐を回す。すると、見た目はアルフォンスの容量箱よりも小さな鞄が腰紐につけられていた。

「これも容量箱なんですねぇ……」

 リオナが好奇心で、ブライスの容量箱を見ようと近づく。しかしブライスがさっと離れ、話題を変える。

「おれやアルの容量箱の容量を変えるにしても、リオナ嬢が容量箱を得るにしても、どのみちやらなきゃいけないことがある」

「リオナの階級を上げないとね」

「そうだ。ジャッジベア自体は、敵対しない鉱魔だからランクはF。だがアルグネ山の地下迷宮に出没するのはBランクが多い。ギルドの規定上、BかCに階級を上げておかないと駄目だ」

「お二人はどれくらいなんですか」

「ぼく達は二人とも、Bだよ」

「ほぁ……先に冒険者として活躍しているお二人でも、B級なんですね。冒険者になりたてのわたしは、どれくらいかかるんでしょうか」

 先の長い話だと思っていると、アルフォンスとブライスは同時に互いを見合って、リオナを見た。

「どうしても、多少は時間がかかると思う。でもリオナなら、ぼく達がかかった時間よりも早く階級が上がるはず」

「えっ、そうなんですか!?」

「冒険者として活動するようになったらわかるけど」

 前置きをしたアルフォンスが、冒険者の階級を上げる仕組みを教えてくれた。

 曰く、階級を上げるのはドロップ品の個数なのだという。ドロップ品を換金するときに冒険者カードにその数を記録。その数が増えるほど実力があるとされ、昇級していく。

「リオナ嬢が別行動をしている時、冒険者カードの提出を求められただろう?」

「そうですね。確かに提出していました」

「数の確認自体はギルドへ行かないといけないが、一日一つ以上換金していたとすれば、E級すら終了しているんじゃないか?」

「えっ!? そうなんですか!?」

「やっぱりねえ。リオナの討伐時間、短いもんね。昇級していてもおかしくないよ」

「ドロップ品の換金数で決まるんですねぇ……ちなみに、C級になるにはどうすればいいんですか」

「C級には、D級に上がった後から数えて百個換金すれば昇級できるよ」

「百……想定よりも少なめですね」

「リオナからしたらそう思えるかもね。でも、ドロップ品って確率で落ちるし、討伐までに時間がかかればその確率も低くなっていくし。案外時間がかかるもんだよ」

 ちなみに、B級になるためには千、さらに上のA級になるためには一万個換金しないといけないらしい。

「お二方は、今どれくらいなんですか」

「どれくらいだったかな……確か、ぼくが千五百くらいでネイサンが二千くらい?」

「それぐらいだな」

「A級までの道のりは遠いんですね」

「リオナの場合は、C級まで行ければジャッジベアがいるアルグネ山の地下迷宮まで行けるよ。リオナの目標は、研磨師になることだし」

 当然のように話してくれるアルフォンスに、リオナは思わず頭を下げる。

「わたしの夢のこと、覚えていてくれて嬉しいです」

「そんなこと、当たり前だよ。言ったでしょ。リオナの夢を応援するって」

 アルフォンスがリオナに優しく微笑む。そんなアルフォンスに、リオナも笑みを返す。

 そんな時間が少し続いて、ハッとなったリオナが話題の軌道修正をする。

「容量箱に関しては、将来的にわたしも欲しいと思ってはいます。なので挑戦できるC級までは階級を上げたいです。まずは百個、それから千個ドロップ品を換金しないといけないんですよね」

「そういうことになるね。どうする? 先に昇級しておく?」

「うーん……一日一つで十日かかる。でも一日で稼ぐ量を増やせば、すぐに百個到達するかな? それなら、まとめて換金してしまう方が良いですかね?」

「リオナの戦い方ならすぐだろうしね。それでも良いかも。リオナが持っている情報的には、何が一番効率よく集められるかな」

「そうですねぇ……あくまでドロップする個数の確率だけでいったら、デューオルチョインが一番ですね。他は、ドロップする種類はあっても、一回につき一つ……」

 デューオルチョインのドロップ品のことを考えているとき、一つ思い出した。

「そうだ、ジェットなら……バトムシトムを討伐すれば、ジェットが複数出るかもしれません。運が良ければ、十個出ます」

「それはすごいね。でも、ばとむしとむって?」

「バトムシトムは、綺麗な水の底で根を張る巨木です。川底とか、海底とか」

「海底は難しいとして、川底か……ちなみに、そいつのランクってわかる?」

 リオナは首を振る。ブライスに目を向ければ、ブライスも首を振った。

「今後の目標設定に支障が出るな。ギルドならわかるだろうから、ちょっと行ってくる」

「それなら三人で行こう」

「いや、部屋に戻ってからすぐに話し始めただろう? アルはリオナ嬢から贈られた服に着替えておくと良い。リオナ嬢は、それを待って一番に感想を伝えてあげてくれないか」

「確かに着替えも必要だけど、三人で行って帰ってきてからでも」

「時間は有限。効率よく動かないともったいないだろ」

「それは、そうだけど……」

「今から行ってくる」

 アルフォンスはまだ何か言いたかったようだが、ブライスは構わず部屋を出ていってしまった。そうなってしまうと、ネイサンを追いかけてまで話を続けるのは違うと思ったのだろう。

 アルフォンスが着替えるということで、リオナは一度部屋から出た。そして声がかかり、また戻る。

「どう?」

「似合っています、というと、わたしが選んだ服だから自画自賛になっちゃいますかね」

「そんなことないよ。ぼくの髪のことまで配慮してくれてありがとう、リオナ」

 髪、という言葉を聞き、リオナは不自然にアルフォンスから目をそらした。

「どうしたの、リオナ?」

「あ、えっと……ブライス様に髪を隠すような、という注文を受けたのでそれにしましたが……その、髪のことはわたしが聞いても大丈夫ですか?」

「もちろん! 同じパーティーで過ごすし、何も問題ないよ」

「よ、良かった……」

 キングスコーピオンを討伐した後のララの様子がおかしかった。だから、聞いてはいけないと思っていたのだ。



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