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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第三話 冒険者リオナ

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3.6 リオナの計画とアルフォンスの願い

長めですが、途中で分けられません。八割ぐらいは「 」なので、するっと読めると思うのですが……


 二日目と三日目の研修は、ブライスの名前を出す度に怯えるララの様子以外は何事も起きずに終了した。

 二日目は、ヴァゼテラ平原へ行って天幕の張り方を覚えるまでが研修。三日目は、その平原に出るソードラビットの討伐が研修内容だ。

 こうして研修は無事に終わり、リオナは晴れて格闘士として正式に冒険者になった。格闘士という職業上、研修は鉱魔との戦いだったが、冒険者の始まりはF級から。最初は採集クエストから始め、徐々に階級を上げていく――のだが。

 リオナは、例外らしい。

 豊富な鉱魔の知識をギルド内で共有することになった。そこから生じる莫大な利益をリオナへ還元したいという。

 貴重な情報の報酬として前金で五万ガルド。情報が欲しい冒険者に、鉱魔一種類につき百ガルドの請求をするという。鉱魔の情報はジェイコブが集めたもののため、リオナは全ての報酬を断った。

 しかし、ギルド側としてはリオナへの正当な報酬だと譲らない。話し合いの結果、ノキアだけでなく他の三つの街にあるギルドのどこでも飲食や宿泊がリオナは無料、E級から開始ということになった。

 この決定が、一日。それによって、アルフォンスの休養期間が終了した。

 そして、アルフォンスの提案で三人でパーティーを組むことが決定。今は、アルフォンスが泊まる部屋で今後の計画を練っている最中だ。

(角部屋って、広いんだなぁ……)

 部屋に招待され、ついきょろきょろと中を窺ってしまう。リオナが宿泊する部屋も広いが、角部屋はさらに広い。調度品の数々も、大きかったり艶が違ったりしている。

「それで、リオナは容量箱が欲しいんだよね?」

「そうです! でも、ジャッジベアはお金を欲しがる相手には凶暴化します。わたしは研磨師になるためにお金が必要なので、取りにいけないですね」

「そこは、リオナ嬢が冒険者として仕事をしたいってことじゃ駄目なのか」

「うーん……どうでしょう? ジェイコブさんから教わって、恋愛欲か仕事欲なら問題ないと知っていますけど……ジャッジベアが、どうやって判断しているのかはわからないので何とも言えないです」

「リオナは、恋愛欲ないの?」

「いずれは、誰かとできたらいいなぁとは思っています。でも今は、先に自立でしょうか。ブライス様にずっとお金を出してもらっていますし」

「焦らなくていい。リオナ嬢の戦い方なら、すぐに貯まる」

「ブライス様に返却する分と、アルフォンス様に返す百万ガルドと、あと研磨師の受験料のために三千万ガルド貯めないといけないので……すぐに貯まるかどうかは」

「ねえ、それさ、何で三千万ガルドなの?」

「なぜと言われましても、そうと決まっているとしか」

「三千万ガルドなんてさ、そんなの女の子に研磨師になるなって言っているようなもんじゃん」

「まぁ……そういう世の中なので、としか言えないです」

「リオナ嬢。目指す上で仕組みをきちんと理解しておく方がいい。曖昧なままでは、無駄な金を払うことになる」

「仕組み……。ですが、誰に聞けば良いのでしょうか。研磨師は国家資格。国の上の人? に、聞く機会なんてないですし」

「それならっ」

 アルフォンスが何か言おうとしたとき、ブライスが背後に回って強引に手で口を塞いだ。もごもごと何か言っているアルフォンスの口から手を離さず、どこか言いづらそうに言葉を選んでいるような顔をする。

「ブライス様。何か考えがあるんですか」

「……リオナ嬢のことだから十分承知の上だと思うが、その、三千万ガルドという法外な値段を払うよりも、簡単な方法があるだろう? 一応、ここにいる二人は相手がいないし」

「もう一つの……あぁ、ブライス様も貼り紙を見たんですね。確かに、男の親族の許可があれば女性も受験できますが……わたしの両親は十年前に亡くなっていますし、他に親族も知らないですし、その方法は望めません」

 もごもごとブライスの手の下で何かを言っていたアルフォンスが、フーっと勢い良く息を吐き出した。突然の行動に驚いたブライスが、アルフォンスの口を解放する。

「リオナ! 親族って、血縁だけじゃなくて婚姻関係によって繋がった人も言うんだよ!」

「こんいん関係?」

「結婚した相手ってこと!!」

「け、結婚!? え、そ、それは、ダメです!! 国家資格を受験したいのに、詐欺はいけません!!」

「詐欺じゃなくてさ、事実なら良いんでしょ? 結納金って、結婚したい相手の家に払うんだよ?」

「えっ!! そ、そうなんですか!? ご、ごめんなさい。わたし、そんな大事なお金だって知らなくて……」

「そこで謝られちゃうと、落ちこんじゃうな」

「ご、ごめんなさい。あ、いや、えっと……や、やっぱりダメです。確かにわたしは、オルゴーラ様の元から逃げ出したかった。受験料を稼げないから。でも、結婚ということなら話は違います。アルフォンス様には、もっと素敵な人が現れると思います。結納金、絶対に返すので違う方と結婚して下さい」

「……そんなに拒絶されちゃうと、悲しいな。ねえ、リオナ。ぼくはリオナと家族になれない?」

「や、えぇと、お、落ち着いて下さい。結婚ですよ? 生涯のパートナーですよ? 簡単に決めちゃいけません。そもそも、どうしてアルフォンス様はわたしなんかに結納金を準備してくれたんですか」

「なんか、じゃない。どうしてって、それは」

 アルフォンスが何か言おうとしたとき、ブライスがまたアルフォンスの口を塞ぐ。

「そういう選択肢もあるって覚えておけばいい。それに、リオナ嬢はまだ若い。提案しておいて何だが急がなくていいし、結婚をもっと軽く考えてもいい。どうしても叶えたいのなら、近くにいるおれ達を利用してもいい」

「り、利用なんて!! そんな酷いこと、できませんよ!!」

「ま、そういう選択肢もあるってことで。それで、これからどうする? せっかくE級から始められるんだ。鉱魔を討伐して、ドロップ品で稼がないと」

「そ、そうですね。ドロップ品別の値段順位は、キャクタスフラワーのレイジネスシードが一番夢があると思いますが……」

 レイジネスシードは、願いを助ける種だ。その願いによっては、無限に買取額が上がる。

 確実に貯めるのならば、ダイヤモンド鉱石が十万ガルドだ。光石にできるリオナの力があれば、価値はもっと上がる。

 しかし、場所はアルグネ山の地下迷宮だ。出没する鉱魔のランクは高いし、そもそもリオナの階級ではまだ挑戦すらできない。

 冒険者は、自分と同じか一つ上までの階級までしか挑戦してはいけない決まりになっている。その規定があることで、冒険者が無謀な挑戦をして命を落とすことを規制しているのだ。

 低いランクの鉱魔でも、ドロップ品によっては高値がつくものもある。さてどうするか。

 そんな風にリオナが考えこんでいると、アルフォンスがブライスの手を退かす。

「ちょっと良いかな。しばらくノキアの街に滞在ってことじゃ駄目?」

「アルフォンス様。何か求めるドロップ品があるんですか」

「ちょっとね。今日、改めて欲しいと思ったものがあるんだ」

「わかりました。それなら、アルフォンス様が求めるドロップ品が出るまで滞在しましょう。わたしは、特典があるので宿を移動しますね。集合は、ギルドにしますか? それとも、他の場所にしますか」

 明日からの計画にワクワクしながら話していると、アルフォンスが顔の前で両手を合わせた。

「ごめん。そのことなんだけど、そのドロップ品が出るまで別行動じゃ駄目かな」

「え……パーティ、活動する前に解散ですか」

「違う違う! そうじゃなくて! ……その、欲しいドロップ品がさ、キャクタスフラワーのレイジネスシードなんだ」

「なるほど。確かに、レイジネスシードを手に入れるためには自分の願い事を叫びながら攻撃しないといけないですからね。願い事は、仲良しのブライス様ならともかく、わたしが聞いちゃダメですね。わかりました。アルフォンス様がレイジネスシードを手に入れられるまで、わたしは一人でできることをします」

 話し合いは終了ですね、とリオナはアルフォンスが宿泊する部屋を出る。

 その足でそのまま宿を出て、ギルド内に宿泊の場所を移した。




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