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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第三話 冒険者リオナ

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3.3 二つの、敵①

 少し長めの文章量です


 岩の影に引きこまれたリオナは、その岩に押しつけられるようにしてオトコルと対峙した。

「オトコルさん!? どうしてここに?」

「リオナ。僕の彼女にしてあげる」

「はい!? えっと、突然のことで何がなんだか……」

 岩の影でもわかるほど、オトコルは顔が赤らんでいる。心なしか息づかいも荒く、今すぐにでも逃げ出したい。しかし体の両側にオトコルが手を置いていて、ときどき背後の岩が下がる以外は逃げ場がなかった。

(……あれ。岩って、動くんだっけ)

 Bランクのキングスコーピオンが擬態しているから、大きな岩には近づかないようにしよう。

 そんな忠告は、リオナも、アルフォンスもブライスも、伝えたララ本人ですら忘れてしまっていた。リオナの戦闘方法が、余りにも鮮やかで不思議すぎて。

「リオナ!!」

 岩の後ろの方からアルフォンスの声がした。そちらへ意識を向けると、オトコルが顔を近づけてくる。

 そんなオトコルに、ツンツンと何かがぶつかる。それはまるで人を呼ぶかのような関心の引き方で、オトコルはそのちょっかいを邪険に扱うようにして手で払う。

「リオナ……リオナ……」

「ひっ」

 オトコルの目が虚ろになっている。熱を帯びているような目にも見えるし、何も見ていないようにも見えた。

 オトコルが、さらにリオナへ顔を近づけてくる。どうにも逃げられないと思いつつ、せめてもの抵抗で体の向きを変えると、オトコルがそのままリオナにもたれかかった。

「オトコルさん!?」

 ぐったりとした様子のオトコルは、リオナの呼びかけに反応しない。赤い顔だと思っていた顔は青白くなり、ガクガクと震えている。

 そう。オトコルはキングスコーピオンの毒針に刺されたのだ。迅速な処置を施さなければ、体に麻痺が残る。そして、いずれ死ぬ。

「リオナさん!! すぐに逃げてください! キングスコーピオンです!!」

 ララの声が聞こえた瞬間、大きな岩だと思っていた物体が動き出した。太陽の光が当たって、濃い灰色の巨大なサソリがグリンッと素早く動いて周囲に砂塵を巻き上げる。

「ちっ。防がれた!!」

「キングスコーピオンは、別名魔術師殺し。水を掛ければ弱らせられるのに、それを砂塵で防ぐんです!!」

 ララの叫びの通り、キングスコーピオンは何度も砂塵で防御する。その合間にリオナが見れば、ララもブライスも魔法で攻撃をしかけているようだ。研修で倒せるランクではないから、ララも参戦しているのだろう。

「白魔術師のあなたは、リオナさんを助けられるように動いてください!」

「言われなくても!!」

 ララの指示を受けたアルフォンスが、リオナとオトコルを守るように砂塵を巻き上げるキングスコーピオンに近づこうとする。

「アルフォンス様!! 近づいたらダメです!!」

 リオナが叫ぶや否や、キングスコーピオンは毒針のついた尻尾でアルフォンスを狙う。うわっと声を出しながらどうにかその攻撃を避けるが、尻尾が砂漠を突いた衝撃で柔らかくなっていた砂地に足を取られてこけた。

「――マインラールよ、水突(すいとつ)にてアルを逃がせ!!」

 詠唱をしていたブライスが直線上の水を放ち、それを察知したキングスコーピオンが尻尾を引いた。その隙に、アルフォンスが立ち上がって移動する。

「ネイサン! 助かった!!」

「それはどうも! リオナ嬢!! そっちの状況は!?」

「キングスコーピオンの毒にやられたオトコルさんがいます! ララさん!! 解毒剤を持っていませんか!!」

「い、一応持ってきています! でも、そこまで行けません!」

 叫び合いながら話している最中も、キングスコーピオンは何度も砂塵を巻き上げる。

 リオナとしても、知らない相手ではないオトコルを助けたいと思う。しかし意識がない成人男性は重く、オトコルの下から抜け出せない。

 どうすればいいかと考えていると、アルフォンスが聞いてきた。

「ねえ、リオナ! さっきはどうして近づいたら駄目だって言ったの!?」

「キングスコーピオンは、毒針を刺した対象の命が尽きるまで傍を離れないんです!」

「それなら、リオナは安全!?」

「わたしは、安全ですけど!?」

 真意のわからない質問にリオナが答えると、アルフォンスはブライスとララの元へ行く。そこで話し合いをしているようだが、ララの「あなた、本当に人間ですか!?」という叫び声が聞こえた。

 何を言ったのか。答えが知りたいと思っていると、アルフォンスが砂漠にどかっと座った。主の様子を見たブライスが、魔法を放つために上げていた手を下ろす。しかし迷いはあるようで、アルフォンスとキングスコーピオンを何度も見る。

 ララは、そんな二人を見てリオナに知らせてくれた。

「リオナさん!! このお二人は、毒針で倒れた方を見捨てるようです! 助けたいですが、こちらからは近づけません! 研修中のリオナさんにお願いできることではないと承知していますが、水を掛けれるように注意を引いてもらえないでしょうか!」

「わかりました! 何かやってみます!」

 キングスコーピオンは、自分が針を刺した対象はオトコルだから、ここにいる人間もオトコルだけだと思っているだろう。そこが、好機だ。

 まずはオトコルの下から出て動けるようにならないといけない。うにうに、ぐにぐにと体を動かして、どうにかこうにかオトコルの下から這い出れた。

「鉱物眼!!」

 両手で枠を作ると、斜方晶系と表示された。それならば、キャクタスフラワーと倒し方は同じ。鉱魔全体を結晶として見て、横型の直角柱のような塊の角を殴るだけ。

「鉱石は!?」

 鉱物眼を使って、討伐方法はわかった。しかし肝心の鉱石の位置がわからない。リオナの両眼に、斜方晶系と表示されたままだ。だから鉱石はある。それが見えないということは。

「まさか……上!?」

 巨大な岩に擬態する、巨大なサソリ。巻き上げる砂塵の高さは優に三階建ての建物を越える。その砂塵とほぼ位置が変わらない、キングスコーピオンの頭部付近にあるのかもしれない。

(え……どうしよう……)

 ジェイコブから教わった知識でも、キングスコーピオンの鉱石の位置はわからなかった。というか、同じ鉱魔でも鉱石の位置は毎回同じというわけではない。多く出る場所は概ね、鉱魔の背後というだけ。

 キングスコーピオンにばれないように、ゆっくりと動き、体を斜めにして背後を探る。

(あっ! あった!!)

 濃い灰色の頭部に、小さな点に見える、白っぽい茶色の鉱石がキラリと輝いた。キングスコーピオンの名の通り、敵は巨大なサソリ。鉱物眼で全体を結晶として見ているから、一つ一つ壊せばいいのかもしれない。しかしキングスコーピオンの体が大きすぎて、その戦い方では時間がかかってしまうだろう。

「弱点を見つけました!! キングスコーピオンに登ります!」

「リオナ! そんな危ないこと、することない!!」

 アルフォンスが立ち上がって声をかけるが、リオナはその声を無視する。リオナ以外はキングスコーピオンに対処できない状況だ。リオナがやるしかない。

(ここに、足を引っかけて……)

 尻尾の節のような箇所に手をかける。ざらついている表面は、人の手ならば登る取っ掛かりになった。

 リオナがキングスコーピオンを登り始める。下手に動けばリオナが振り落とされる可能性があった。だからアルフォンスら三人は動けず、リオナの行動を見守るだけ。

 動かない三人を見ているように思うキングスコーピオンは、攻撃されなくなったことで大人しくなったようだ。三人に目を向けつつ、毒針で刺したオトコルをハサミの形をした触肢(しょくし)で腹の下へ動かす。

「っ、っ」

「リオナっ!!」

 巨大なサソリが少し動くだけでも、登っている最中のリオナには大きな動きだ。蛇腹のような形状をした背中の隙間部分に、挟まれそうになった。

 アルフォンスが駆け出しそうになるが、もっと大きな動きをさせないためにグッと堪える。

 リオナはバクバクとうるさい心臓を落ち着かせるため、深呼吸を繰り返す。

 どうにか動けるぐらいまで回復してから、またキングスコーピオンの背中を進む。その後は問題なく登れ、頭部と思われる高さまで到達した。

(斜方晶系だから、ここの角!)

 後頭部にあった鉱石の、横型の直角柱のような塊の角を殴った。すると、キングスコーピオンの巨大な体が分解されていく。

「っ!」

 ふわりと、リオナの体が宙に浮く。魔法を使えないリオナは、そのまま落下した。



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