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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第三話 冒険者リオナ

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3.2 キャクタスフラワー


(よーし! 頑張るぞ!)

 リオナは砂漠を進み、キャクタスフラワーを捜す。

 ジェイコブより与えられし知識によれば、キャクタスフラワーはサボテンに花がついていることが特徴。

(んー……花が咲いているのは、見る限り二つかな?)

 くるりと周囲を窺えば、視界の中に二種類のサボテンが見えた。一つは帽子を被せたら似合いそうな、人に見えなくもない形。そこそこ大きい。もう一つはころっとした丸い形。こちらは小さめ。どちらも岩のすぐ傍に見えた。

(ジェイコブさんから教わった情報でも、具体的な形は書かれていなかった。これは、近づいてみて確認するしかない)

 リオナはまず、片手を上げて逆の手を下げているかのようなサボテンに盾を構えながら近づいていく。

 一歩二歩。リオナは確かに近づいているはずなのに、様子を窺っているサボテンとの距離が縮まらない。じっと窺うと、足のようなものが生えていた。ちょこ、ちょこ、と僅かずつ移動している。

 それならば。

鉱物眼(ミネラルアイ)!」

 盾を地面に置き、両指で作った枠を両目上に持っていった。枠の中――リオナの両目に浮かんだのは、斜方晶系(しゃほうしょうけい)の文字。

 斜方晶系とは、横型の直角柱のような塊が並んでいるもの。三本の結晶軸の長さはそれぞれ違うが、角度は互いに直角に交わっている。

「文字が出た!」

 キャクタスフラワーの進行方向に対して背中側に、体と同化しているかのような色の鉱石があった。キャクタスフラワー全体を結晶として見たリオナは、一撃必殺になる鉱石部分の、横型の直角柱のような塊の角を殴る。その瞬間、キャクタスフラワーはまるで分解されたかのようにばらばらになった。そして、ドロップ品のモルデナイトが落ちる。濃い緑色の岩の割れ目に、白い毛状の結晶が集まっていた。この白い方が、モルデナイト。

「やった――! モルデナイト、採ったー!」

 緑色の岩を持ってぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ。しかしすぐにハッと気づき、緑の岩を持って右手を向ける。

抽出(エクストラクト)

 緑色の岩が割れ、白い毛状のモルデナイトだけ取り出した。しかし取り出したのはいいものの、包んでおけるような布がなかった。仕方なく、自分の両手で持ち、急いでララの元へ戻る。

「すみません、ララさん! 何か布はないですか!」

「ぬ、布ですか?」

「はい。モルデナイトを取り出したものの、これ毛状の結晶なので何かで包んでいないとすぐに散っちゃうんです」

「えっ、ドロップ品が出たばかりか、結晶の取り出しまで??」

「リオナ嬢。おれの手巾を使ってくれ」

「あっ! ぼくもっ」

 混乱しているララ。それが、一般的な反応だろう。しかしブライスやアルフォンスはリオナの戦い方を知っている。だから混乱なんてすることなく、リオナの求めに対応できるのだ。

 アルフォンスは、自分の服のどこかに程良い布がないかと捜している。アルフォンスが手間取っている間に、ブライスから手巾を渡された。

「ふぅー。ブライス様、ありがとうございます」

「ネイサン! 狡いぞ!!」

「狡いも何も、悔しかったら普段から手巾を持つような男になるんだな」

「くっそう……」

 リオナの求めに対応できなかったアルフォンスは、すごく悔しそうだ。恨めしそうにブライスを見ている。

 そんな二人を見て、仲が良いなぁと思うリオナ。

 そしてそのリオナを含む三人を見て、未だに混乱しているララ。

「リ、リオナさん?? 少し、わからないのだけど……いいえ、何もかもわからないの。キャクタスフラワーは、どうやって倒したのでしょう?」

「殴りました」

「えぇ、えぇ、そうでしょうとも。そうとしか見えなかったわ。でも、殴る……?? キャクタスフラワーは、全身に針のような棘があるの。それに、一瞬過ぎてよくわからなかったけど、キャクタスフラワー、ばらばらになったのよ? 殴ってばらばらになるって、どういうこと??」

「あっ、もしかして、わたしの倒し方だと研修として失敗ですか? っは、そういえば倒すときに盾置いちゃった。格闘士として認定されないでしょうか」

「その、拳で戦うことも格闘士として認定できるわ。格闘士はその場にあるものを使って戦う職業だから。研修としては、倒し方を学ぶことが目的なの。だから倒しているのなら問題ないのだけど……ちょっと、よくわからなくて」

「ぼくも知りたい。リオナは、どうやって鉱魔を瞬殺するんだ?」

「覚えちゃえば簡単ですよ。鉱魔はみんな鉱石がついていて、その鉱石が弱点なんです。なのでその鉱石の種類がどんなものか判別することによって、どこを殴ればいいのかわかります。みなさんもやってみますか?」

 鉱物眼と言って、と指の配置などを実践する。しかしそもそも鉱石のことをよくわかっていない三人からすると、鉱石が弱点という知識すら初耳だ。魔力値の高いララですら、呆然としている。

「鉱魔、と言う以上は確かに、鉱石がついているのでしょう。ですが、リオナさん。実際に戦っている最中に鉱石の場所なんてわかりますか」

「わかりますよ? キャクタスフラワーは体と同系色でわかりづらかったですけど、鉱物眼を発動すれば鉱石の部分が輝いて見えます」

「……えぇと、リオナさんはその情報をどこから得たのでしょうか」

「五年前に亡くなった、ジェイコブさんです」

「ジェイコブさんでしたか。それなら納得です。あの方は研磨師の資格がないのに、他の研磨師とは比較にならないほど素晴らしい技術を持った方でした。あの方は、ノキアの街の誇りです」

「あ、でもですね、鉱魔の基本的な情報はジェイコブさんから教わりましたけど、鉱物眼はわたし独自のやつです。鉱石の状態だとか、結晶の状態だとか、そういった研磨師に必要な知識から、わたしが作りました」

「なる、ほど……リオナさんを常識で見てはいけないと、よくわかりました。モルデナイトもドロップしましたし、確かにキャクタスフラワーを倒したと確認しました。一つ目のクエストはクリアです」

「ありがとうございます!」

「二つ目のクエストと、三つ目のクエストは明日行います。またギルドまで来てくださいね」

「わかりました! あっ、そうだ。ドロップ品のモルデナイトはどうしたらいいですか」

「研修は、キャクタスフラワーを倒すことが目的です。今まで誰もドロップ品が出る速さでは討伐できませんでした。なので、リオナさんもそうだった、ということにしておきます」

「本当ですか!! ありがとうございます! 盾を置いてきちゃったので、取ってきますね」

 ララたち三人がいるところから一人で離れ、リオナは鉱物眼を発動するときに地面に置いていた盾の所まで行く。しかし置いたと思った場所を見回しても、盾がない。

「盾……盾……あ、あんなところにある」

 置いた、と思っていたが、もしかしたら転がってしまったのかもしれない。丸い盾だからそれもあり得るだろう。そう思い、盾がある岩の影に近づく。

「よし、これで……っ!?」

 盾を回収した瞬間、リオナは岩の影に引きこまれた。



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