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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第十三話 エピローグ

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13.5 研磨師リオナ・カリスタ


 二年後。

 リオナはノキアで販売店つきの工房を建てていた。その建築費用は、全て国が出してくれている。

 というのも、二年前。オルゴーラが研磨師資格を偽っていたことを発端に、研磨師に対する規則が改正されたのだ。

 試験資格は十六歳以上と変わらなかったが、試験の内容がより高度なものになった。リオナがジェイコブから学び、当たり前だと思っていた知識を持っていない人が大半だったのだ。

 受験料の三万ガルドは男女とも払う。しかし一発合格ならば全額を、二回目ならば半額を、三回目で合格すれば一割程度の建築費用を国が出すということになった。

 そして、研磨師であることの証明。それは試験に合格するのはもちろんのこと、シャドウルがドロップするウィゼライトで炭酸水を作るということだった。ウィゼライトは、研磨師以外が扱えば毒水を生み出す。オルゴーラの偽称も、ウィゼライトで証明された。

(……素直に、ジェイコブさんから教わっていれば良かったのに)

 オルゴーラが研磨師だと偽称していたと明らかになったとき、オルゴーラ工房で働いていた研磨師達数人が、声を上げた。

 曰く、オルゴーラは毒水を使ってジェイコブを殺したのだという。その現場を目撃したが、新たに下働き先を捜すのは大変だ。当時で言えば最低三年以上は見習いとして働く。その先は師匠が認めれば独立できるような仕組みだった。だからオルゴーラの罪を見なかったことにしていた、ということらしい。

 オルゴーラは研磨師の資格がないのに知識が豊富なジェイコブを嫉み、人脈や徒弟らを全て一人占めにしていた。そう、話しているようだ。

「リオナ! 一緒に行こう」

「ササラ、ちょっと待ってて」

 リオナは工房を建築してくれている技師達に声をかけ、ササラと一緒にノキアを出る。

 カールト隧道にさしかかり、ササラがニヤリと笑う。

「どうする? デューオルチョインを出さないようにもできるけど」

「冗談でしょ? ちょうど紙がなくなりそうなの。何もしないで」

「わかった」

 リオナはササラと一緒に、カールト隧道を歩く。湧いたデューオルチョインは男型だ。残念ながら、男のデューオルチョインはリオナが倒しても紙の材料になるタルクを落とさない。女のデューオルチョインが、男の冒険者に倒されることによってドロップする。

 また黎明の疾風団でデューオルチョイン狩りやその他冒険をしよう。そう思いながら、湧き出るデューオルチョインをパパッと討伐していく。

 そうしてカールト隧道を抜け、テフィヴィの西門から入る。

 あれから貴族も考えを改め、誰でも制限なく門を使えるようになった。そうするように決めたのも、議会だ。今もそこには、ブライスが参加している。

「じゃーね、リオナ。あたしはこっちだから」

「? またあとでね」

 何か含むような笑みを見せたササラは、各街の鉱魔講師として働いている。今日は、テフィヴィの冒険者ギルドで講義をするようだ。

 リオナは噴水広場へ向かう。アルフォンスから、話があると呼ばれているのだ。

「あれ? ブライス様と、モニカまで?」

 噴水広場へ行くと、アルフォンスとブライスとモニカが待ってた。男性陣は二人とも少し緊張しているような顔をしている。代わりにモニカは、これから行われることが何か知っているようだ。笑顔が溢れている。

 リオナが噴水広場にやってきたことで、黎明の疾風団が全員揃った。それぞれが忙しくなってしまい、冒険者として活動する時間が少なくなってしまったのだ。そのため、実は揃うのは久しぶりである。

 二年経っても黎明の疾風団は街の人達に人気だ。四人が集まれば、次々と増え、まるで円状に囲むように人だかりができる。

 人々の注目を集める中、アルフォンスとブライスがリオナの前に跪く。その手には、ルビーの指輪が輝いている。

「おれ、ネイサンブライスは、リオナ・カリスタ嬢を生涯の妻として迎えたいと思う。おれと結婚してほしい」

「えっ?? え、あのっ??」

 ブライスからの突然のプロポーズに戸惑う。しかしそれ以上に、ブライスの隣に同じ姿勢を取っているアルフォンスに目が行ってしまった。

 (いや)が上にも期待が高まり、体が熱くなる。

「十三年前。モウルトリオから助けてもらった時から、リオナの事が大好きだよ。ぼくと、結婚してほしい」

「はい……喜んでっ……」

 感情が高ぶりすぎて、返事をするときにボロ泣きしてしまった。

 そんなリオナをアルフォンスが抱きしめ、周囲の人々が祝福する。

 リオナは慌てて涙を拭き、立ち上がっていたブライスに頭を下げた。

「ごめんなさい、ブライス様。ブライス様からのプロポーズは、受けられません」

「ちゃんとおれにも返事をくれて、ありがとう」

 ブライスがリオナの前から去る。そんなブライスを慰めるように、モニカがついて行った。




 ナナル暦一五一八年。年の初めに、テフィヴィの街では一組の結婚式が行われていた。

 昨日までは厳しかった冬の寒さも、今日ばかりはその影を潜めているようだ。

 一五〇四年。ルルケ国では一揆が起きた。

 一五一四年。本日の主役二人が再会した。

 一五一五年。マオゲヌ山が噴火する危機に陥った。もしあのとき噴火していたら、こうして街の人々にも祝福されるような式は挙げられなかっただろう。

「聖女さまー!!」「お幸せにー!」「あぁ……やっぱり尊いわ」「娘の誕生石を買いに行きます!」「師匠! 注文が殺到しているんで早く帰って下さい!」

 人々に祝福され、徒弟の小言に現実を思い出しながら、リオナとアルフォンスは馬車に乗る。

 走りだした馬車は西門を抜け、カールト隧道の手前で止まった。そこから、アルフォンスだけ先に下りる。そして少ししてから、リオナも下りた。

 リオナは、冒険者の格好をしている。リオナを下ろした馬車は、ノキアへ向かうためカールト隧道の方へ進む。

「それでは、アルフォンス様。行きましょう!」

「そうだね、リオナ」

 夫婦になってからの初めての共同作業が、デューオルチョイン狩りとはなかなか物騒である。しかしそれもまた、夫婦の一つの形……なのかもしれない。


 終了、です。

 私史上、最長の物語でした。しかも、ぴったり百エピソード! これは偶然です。えぇ、本当に。投稿するために作業をしていたら気づきました。

 長い間『落ち研』に付き合っていただき、感謝しかありません。

 本当に、ありがとうございました!!

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