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落ちこぼれ研磨師ですが、冒険者をやっていたおかげで聖女と呼ばれるようになりました。〜でも、本当は……〜  作者: いとう縁凛
第二話 研磨師への第一歩

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2.3 失態の結果③


 なぜ治療をしてはいけないのかと、リオナだけでなくアルフォンスもブライスを見る。

「アル。さっきまでのリオナ嬢を思い出せ。他の部分の治療は終わってなかったが、目の周りだけであれだけ美人なんだ。全てを治療してしまったら、リオナ嬢を連れ出せなくなる」

「確かに! リオナ、ごめん。治療はしたいけど、まずはリオナを助け出すことを優先するよ」

「あ、ありがとうございます。えと、わたしって、美人、なんでしょうか。あ、いえいえ、そ、そんなことはないと思うんですけど……って、これじゃ、肯定しろと言っているようなものですね。忘れてください」

 オルゴーラ工房へ向かいましょうかと歩き出そうとしたリオナに、アルフォンスが告げる。

「……リオナは、美人だよ。かわいいとも言えるかな」

「そうそう。だから、自信を持っていい」

「アルフォンス様、ブライス様……ありがとうございますっ」

 涙のせいで赤く腫れてしまったリオナの顔。しかしアルフォンスやブライスには、満面の笑みを浮かべているように見えた。

 工房へ向かいましょうと、照れ隠しをするようにすぐに背を向けてしまったリオナには、二人の表情は確認できない。固まってしまっているかのように動き出さない二人に、振り返って声をかける。

「アルフォンス様、ブライス様。どうしましたか?」

「何でもないよ、リオナ。ほら、ネイサンも行くよ」

「あ、ああ……」

 少し気まずそうなブライスも一緒に、三人でオルゴーラ工房へ向かった。


 見るからに同情を誘うような姿のリオナ。リオナと同じくらいの身長のアルフォンス。そして顔を隠さず二人と比べると格段に背が高いブライス。その三人が一緒に歩けば街の人たちの注目を集める。特に顔のよくわかるブライスに向けられる視線が多いようだ。

 リオナは急に一緒に歩いていることが恥ずかしく思えてきて、歩く速度を上げる。焦りすぎて、自分の右足に左足を引っかけてしまった。

(転……ば、ない!)

 ツンッと前のめりになった瞬間、すぐに頭を切り換えて腕を前に出す。そして地面に手をつくや否や、倒れそうになった体の勢いを殺さずに前転。何事もなかったかのように歩こうとした。

 転びそうだったことがばれてないかと、ちらりと背後の二人を確認する。二人とも、助けようと手を伸ばしてくれていた。

「リオナは、体の動かし方が上手いね」

「ああ。そんな痩せて細いのに大したもんだ」

「あ、ありがとうございます。オルゴーラ工房では、転んでいる時間すら惜しかったので」

 褒められ慣れていないリオナは、照れながら事情を話した。しかしそんな話を聞いたアルフォンスはだばっと涙を流し、ブライスは眉間をつまむようにして上を向いている。

「リオナ! これから結納金を持参して、リオナを助け出すから!」

 キリッと、改めて意思を強くしたらしいアルフォンスが、リオナの目を見ながら言った。

「はい。ありがとうございます」

 それからオルゴーラ工房までの帰り道、リオナは何度もアルフォンスに泣かれた。

 出会った頃の様に話して欲しいと言われると、オルゴーラとの対応で一番被害がなかった話し方が身に付いてしまったと返す。

 アルフォンスを紹介されるまでに広場であったことをブライスが言えば、あんなふかふかな長パンは初めてだったと返す。

 十年前に両親を亡くしたが、オルゴーラの父のジェイコブに世話になったこと。そしてそのジェイコブの影響で、研磨師を目指している。でも女というだけで難しいなどなど。

 オルゴーラ工房へ着く頃には、アルフォンスとブライスは完全にリオナの心強い味方になってくれていた。



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