第34話 スカルクオーラ
「なんで……!?」
フィナムは一瞬思考が止まる。そして、必死に理解しようと努力する。しかし、全く理解出来ずに体も硬直する。
「まさか……」
ディープダークが少し目を細めた。そして、ミウに向かっていこうとする。その時、突如隣にシュテルが現れた。
「止めろ!」
シュテルはそう叫んでディープダークを制止する。
「シュテル……お前どこ行ってたんだよ」
「召喚の影響で魔法の発動にラグが出来た。そのせいで少し食らってしまった」
シュテルはそう言って右手の甲を見せる。そこには少しだけ傷があった。そして、それと同時に警報が鳴り響いている。
「ダメージを負ったのか!?何故だ……?圏内だとダメージは入らないはず……」
「分からないが、今のミウはかなり異常だ。嫌な感じもするしな。それに、一つ言えることは、今のミウには圏内の防護システムを抜ける何かしらが取り付いているということだ」
シュテルはそう言ってprotectと書かれているシステム表示を見て少し考える。
「……ま、こんなことになる時は決まってダークサイドゲームが絡んでるよな」
シュテルはそう呟きルビーを上着の内ポケットではなく、下に来ているシャツの胸ポケットに入れた。ルビーはポケットに入るとゆっくりと回復魔法をかけていく。
「移動する!」
シュテルはそう言って針を飛ばした。フィナムはそんなシュテルに向かって星を飛ばす。
そして、シュテルはミウの真横に転身で移動すると、そのままミウに触れてどこかに移動する。
「よし」
フィナムはディープダークの体に触れて先程シュテルに付けた星に移動する。
「っ!?って、ここ家の前じゃん」
フィナムは飛んだ場所を見て半分呆れながら言った。
「シュテル……もうちょい遠くに飛んでくれないと家が壊れるだろ」
「もう壊れてるだろ。それに、今の魔力じゃこれが限界だ」
シュテルはそう言って剣を構える。その剣が向いている先にはミウが立っていた。シュテルは少し深く呼吸をすると、目を閉じ集中する。
「来るよ!」
フィナムのその声と共にその場にいたシュテル以外の3人が動いた。ディープダークとフィナムは左右に避け、ミウは真っ直ぐ突っ込んでくる。
しかし、シュテルは動かない。なぜか目を瞑ったままミウを待つ。
そして、ミウが剣を振り上げた。そして、凄まじい魔力と共に振り下ろしてくる。
「……」
シュテルはその攻撃が当たるちょっと前くらいに目を開け、スレスレで躱した。そして、剣を構え振り払う。
「”影月・陽炎輪舞”」
一瞬の煌めきと共にシュテルの剣がミウの腹部を襲う。しかし、ミウはその攻撃を見て即座に後方に回避をし始めた。そして、絶対に当たらない位置まで避ける。
しかし、そこで驚くべきことが起こった。なんと、シュテルの剣が揺らめき伸びたのだ。そのためミウの腹部を切り裂く。
ミウは突然のことに驚き一瞬体を硬直させた。
「っ!?」
「隙だらけだよ」
そんなミウの隣にフィナムは転移した。そして、腰に付けた剣に手をかける。どうやら急に戦闘に入ったため予備の剣しか無かったようだ。いつもと違う剣でミウに切り掛る。
しかし、ミウはギリギリで避けた。そして、3人から距離を取られる。フィナムは離れたミウに近づこうとするが、なにか違和感に気が付き足を止めた。
「2人とも気をつけろ」
「分かっている。嫌な予感しかしないからな」
「ま、どう見てもやばいだろうね」
3人はそう言って剣を構える。すると、ミウが急にもがき始めた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!おぅぇ……!!!」
そして、ミウの喉から嘔吐するかのようにヌルヌルとした気色悪い物体が吐き出された。そして、それは膜のようなものでおおわれており、少しずつ膜が敗れる。
「……?」
なんと、中から現れたのは全く知らないおっさんだった。そのおっさんはニヤニヤと笑いながら3人を見つめる。
「……」
「……」
「面白い太刀筋だなぁ。なんで伸びたんだろ?」
男はそう言ってシュテルを見る。シュテルはそんなおっさんを見て少し余裕の表情を見せた。
「今、こんなやつなら大丈夫だと思っただろ?まぁ、これも油断させる手だったんだけどな……お前とは本気で戦いたい!」
おっさんはそう言って若い男性へと変貌する。シュテルはそんな男を見て少し気を入れ直した。
「なるほど。また厄介そうなやつだな」
シュテルはそう呟いて武器を構える。しかし、シュテルの前にフィナムが立ち、手で行かせないようにして言った。
「待て、君の相手は僕だ」
「ハッ!お前の実力は知っている!お前ごときでは俺には勝てん!」
「それはどうかな」
フィナムはそう言って剣を構えると、星をいくつも飛ばす。そして、周りに散らばった星の位置を確認すると、ふわふわと浮かせ漂わせ始めた。
「”星剣・星礫”」
フィナムは剣を構えると、瞬く間に移動する。そして、連続で星から星へと移動し、連続で男に攻撃する。
しかし、その攻撃は1つとして有効打にはならなかった。全てその掌で防がれる。どれだけ強い一撃だろうと、とてつもなく硬い手のひらに拒まれる。
「な?言っただろ。お前では俺には勝てん!」
そして、男はフィナムに向けて攻撃を仕掛ける。しかし、フィナムは直ぐに構え男を迎え撃つ。
両者1歩も譲らないような攻防へと発展した。拮抗する戦力がぶつかり合うことで、周りにも当然のように衝撃波が発生する。しかも、両者共にダメージが入らない。そのため戦闘は止まらず衝撃波も止まない。
しかし、そんな攻防をずっと続けることは出来ない。必ずどこかでどちらかに限界が来る。だからなのか、フィナムは少し動きが遅くなってしまった。
「やっぱりか……!」
フィナムはそう呟いて1度距離をとる。
「どうした?」
男は聞いた。しかし、フィナムは答えない。
「……相性が悪いですね」
戻ってきたフィナムにディープダークが言った。
「そう思うかい?」
フィナムはニヤケながら聞き返す。
「ま、見たらすぐ分かりますよ。フィナムさんって、シュテルと違って正統派の速い攻撃ですからね」
「正統派って……アハハ……」
フィナムはディープダークの話を聞いて苦笑いをする。そして、直ぐに剣を構えると、星を巻き散らかした。
「それで、私はどうするべきなのかな?」
「自分で考えてください。……と、言いたいところですが、今は無能なので指示出しますね」
「おい、無能って言うなよ」
「でもそうでしょ?こんなに狭い場所で、こんなに早い動きをする敵が出てきたら相性最悪じゃないですか」
ディープダークは辛辣にもそう言ってため息を吐く。フィナムは少し悲しそうな顔をしながらも、こくりと頷いた。
「じゃあ、フィナムさんは相手の攻撃が被弾しないように飛び続けて相手を撹乱してください。攻撃は僕がしますよ」
ディープダークはそう言って左手を胸の前に置き、腕時計を見せつける。そして、バッグの中からメダルを取り出した。そのメダルは青と黒の光で、謎の模様が描かれている。脈打っているその様子から、それはまるで心臓のように見えた。
ディープダークはそのメダルを取り出すと、左手を伸ばし構える。そして、メダルを親指で弾いて掴む。
「……さて、やるか。”変身”」
ディープダークはそう言ってメダルを、腕時計にあるちょうどメダルを入れる穴に挿入した。
「”スカルク”」
その時、スカルクという言葉が放たれる。そして、ディープダークはもう一度時計を胸の前に持ってくると、フレームを握って4分の1ほど回転させた。
すると、腕時計から心臓のような鼓動する音が聞こえ始めた。その鼓動は段々と大きくなり、黒と青の血管のようなものがディープダークの体を侵食していく。
「これが”俺”の力だ。”スカルクオーラ”」
そう言ってディープダークは構えた。その姿は、まるで凶悪な魔物のようだった。
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