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ダークサイドゲーム  作者: 五三竜
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第2話 初めての仮想現実

 街の外に出ると、そこは草原だった。草木が生え、ところどころに花が咲いている。


 シュテルはこの草に手を触れた。感触はリアルと全く同じだ。


「凄いな」


 シュテルはその凄さに感銘を受ける。しかし、その時どこからか足音がした。


 ザッ、ザッ、ザッ……


 そこまで早くは無い。歩いているのだろうか。シュテルはそんなことを思いながら振り返ると、そこには犬のようなモンスターがいた。


「犬?野良犬か?いや、それにしては凶暴すぎるな」


 シュテルはそんなことを呟きながら武器を構える。今回選んだ武器は片手剣だ。初期装備として片手剣と大剣があったが、ここは片手剣が1番だろう。


 シュテルは片手剣を構えると犬に向かって走り出した。そして、切りつける。


 すると、犬の体に刃が通る。


「おぉ……」


 そして、薄く赤く光る様々な大きさの立方体が刃が通った場所から出てきた。


「なるほど。こんな感じか……。相手の体力は分からないんだな。俺の体力は……ここだな」


 右下を見ると自分の体力ゲージが書かれてある。


「なるほど。これが無くなれば終わりか……」


 シュテルはそんなことを呟きながら色々操作をする。そして後悔した。ここに来る前に調べておくべきだったと。


「やっちまったな。っ!?」


 気がつくと、犬が既に攻撃しようと構えていた。どうやら考えている暇は無いらしい。


 シュテルは咄嗟に武器を構え切りつけた。すると、犬は体から立方体をたくさん出す。そして、遂に消えてしまった。


「ん?なんかドロップしたぞ」


 どうやらモンスターを倒すとアイテムをドロップするらしい。確認すると、牙と骨をドロップしたようだ。


「色々と分かってきたな。それに、レベルも上がった。もう少しやっていくか……」


 シュテルはそう言ってあともう少しだけモンスターを狩ることにした。


 ━━それから2時間が経って……


 シュテルは街へ戻った。さすがにあれ以上続けていれば、帰るのが遅くなってしまう。それに、レベルも5まで上がった。上出来だ。


 シュテルはそんなことを思いながら街の中を散策する。そして、武器屋の前に来た。今回犬と戦って色々アイテムをドロップしたのだ。ゲームの説明に書いてあったのだが、アイテムを武器にしたりすることも出来るらしい。


 シュテルはそんなことを思いながら武器屋へと入った。


 カランコロン……


「ん?いらっしゃい」


「あぁ、邪魔するよ」


 シュテルはそう言って中に入った。中には男の人が1人いる。その男は、少し強面で、ムキムキだ。


 シュテルは、武器屋の男に返事をすると。少し武器屋の中を見る。やはり、仮想現実と言うだけあって、剣がリアルだ。光沢から影などの細かいところまで再現されている。


「……兄ちゃん見ない顔だな。このゲームは初めてか?」


「ん?あぁ。今日初めてな」


「今日始めたのか。だったらまだこのゲームについて知らないことも多いだろ。少し教えてやるよ」


 武器屋の男はそう言って色々と教えてくれる。シュテルはその話を聞いてなんとなくゲームについて詳しくなった。


「こんなもんだが、わかったか?」


「あぁ。ほとんど理解したよ。早速なんだけどさ、武器を作って欲しいんだ」


「武器?そざいはどうする?金は?」


「素材なら一応犬の牙がある。あと、骨と皮もだ。金は、初回ログイン時に貰えるお金がある」


「なるほどな。だが、お前は今日が最初だろ?よくモンスターまで倒せたな」


「まぁ、ゲームには慣れてるからな」


 シュテルはそう言って素材を取り出す。そして、武器屋の男に見せた。


「……犬の牙と骨と皮か。この街の初心者向けのモンスターだな。だが、素材は意外と上質なものだ。今回は無料で作ってやるよ。初回限定だ」


 武器屋の男はそう言って素材を受け取った。そして、奥の部屋に行く。


「そうだ、あんた名前は?」


「シュテルだ。お前は?」


「ライモンだ」


 ライモンは、シュテルの名前を聞くと奥の部屋に入って行った。そして、少ししてからカンカンという音が聞こえてくる。


 どうやら加工が始まったらしい。シュテルはこのゲーム初心者だからどれくらいの速さで終わるのか分からない。一応待っておこう。


 シュテルはそう思って周りの武器を見ていると、5分くらいでライモンが戻ってきた。


「終わったよ。牙で作ったから切れ味は良い。ただ、属性などは無い。もっと強い武器が欲しかったら、もっと強い魔物を倒すことだな」


「そうだな。助かったよ」


「良いってことよ。それより、シュテルはこれからどうするんだ?」


「これから?そうだな……今日だけで色々とわかったからそろそろ落ちようと思う」


「そうか。それなら俺の部屋を使え。宿か部屋の中でログアウトしないと通行人の邪魔になったりするからな」


「なるほど。助かるよ」


 シュテルはライモンに礼を言うと、部屋の中へ上がらせてもらった。ライモンの部屋は2回のようだ。ソファがあるからそこに座るか寝るかしてログアウトをするといいらしい。


 シュテルはその部屋まで行くと、ソファに腰かけ目を閉じた。


「ログアウト」


 そう言った瞬間、突如として現実世界へと引き戻される。そして、次に目を開けた時は自分の部屋のベッドの上だった。


「……ん……現実世界か……」


 そう呟いて頭につけていた機械を外す。そして、ベッドから出て立ち上がると少し体を動かしてみる。


「仮想現実も現実も感覚は全く同じだ。恐怖でしかないよ。まるで、体の機能を全て奪われて仮想空間に囚われたような気分だ」


 そんなことを呟きながら部屋を出てリビングへと向かう。魁斗が住んでいる家は二階建てのごく普通の家だ。2階に魁斗と妹の部屋があり、両親の部屋も同じだ。1階には座敷、風呂、トイレ、洗面所、そしてリビングとダイニングとキッチンが繋がった部屋がある。


 魁斗はリビングまで来ると、キッチンの電気だけつけて料理の準備を始めた。今、リビングには家族がゲームをして眠っているが、仮想現実の世界に行っているため何をしても起きない。


 だから、今7時だからといって料理を作ってくれるなんてことは無い。家族の料理は全て魁斗が作るのだ。


「……いい加減にして欲しいよ。あのゲームにそこまで没頭するか?俺はあまりハマらなかったな……」


 そんなことを呟きながら食材を調理していく。そして、1時間ほどで料理が終わった。ご飯もちょうど炊きあがるように設定してあったから食べ頃だ。


 家族はどうせ夜中に起きてご飯を食べる。だから冷蔵庫にしまっておけばいい。まぁ、食べない日もあるんだがな。


 魁斗はそそくさと夕食を済ませるとすぐに自分の部屋へと戻る。そして、2時間ほど勉強をしたところで少しゲームを見つめた。


「仮想現実……俺が向こうに行っている間はこっちの体は寝ている状態なわけか……じゃあ、夜ずっとやっていても体は寝ていることになるのか」


 魁斗はそんなことを思う。実際のところ、ハマっているかいないかで言えば、かなりハマった。やはり、フルダイブと言うのが初めてで面白かった。だが、それに人生をかけるほどでは無い。学校をゲームで休むなんてことは無い。その程度だった。


 まぁ、それでもハマったのは事実だ。魁斗は心の中でそう思いゲームを手に取った。そして、ベッドに寝転がる。


「ゲームスタート」


 その瞬間、再び魁斗の意識は仮想現実の空間へと囚われた。

読んで頂きありがとうございます。

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