プロローグ
『ようこそ皆様。ここは、VRMMOの世界。世界中のプレイヤーが集まる空間です。この世界について説明しましょう。一言で言えば、この世界にはなんでもあります。家やお店、ゲーム、どんなことでもあります。家を作りたければ素材を集めましょう。お店を作りたければアイテムを集めましょう。この世界ではやりたいことがあれば素材を集めることでなんでも出来るのです。そして、この世界にはモンスターと呼ばれる存在がいます。このモンスターには階級、レベルが存在しどちらも高ければ高いほど強くなります。皆様もこのモンスターと戦ってみませんか?そして、皆様も一緒にこのゲームをプレイしませんか?皆様が参加してくださることを私達は心待ちにしてます』
そんな音声ガイドと共に映像が映し出される。そこには、誰がどう見ても楽園としか思えない楽しそうな世界が映し出されていた。
これは、男はそれを見ながら少しだけ悲しい顔をする。そして、そのゲームを手に取り悲しげな目で見つめる。
「お母さん!こっちこっち!これだよ!これこれ!」
男の子がお母さんと一緒にこっちに向かってきているのが見えた。どうやらこのゲームを買いたいらしい。男は手に取ったゲームを戻してそっとその場を離れる。
ふと振り返ると、男の子は嬉しそうに専用の機械とゲームを購入していた。
「……また1人、あのゲームに囚われる。こんなゲーム無ければよかった。いや、やらなければよかっただけか。全て自分のせい……」
男はそう言ってそっと店から出ていく。
皆も覚えておいた方がいい。この世界には表と裏の世界がある。ホワイトサイドが存在すれば、必ずダークサイドが存在する。
そこに足を踏み入れれば、二度と帰って来ることは出来ない。
「……踏み入れたこと自体が罪なんだな。だったら、俺のすることは決まっている」
そう、全ては贖罪のため。ダークサイドに踏み込んだ罪の。そして、大切な存在をダークサイドの闇の力で染め上げてしまった罪の。
これは、この男の……VRMMOのダークサイドに足を踏み入れた男の贖罪の物語。
読んでいただきありがとうございます。