表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/53

五神


 いにしえより世界は争いに満ちていた。

 降りしきる蓮華の嵐は世の中を壊し、万遍なく生命を奪った。

 水に住まう生物でさえ息ができない大洋や。虫がさざめく木々は命乾びた樹海へと。花が咲きこぼれる大地は枯れ果て文明すら崩壊した。金の概念すらなくなった。全て奪い合った。

 もう誰もが無理だと思った……その時だった。


 願いを受け入れてくれたのか、天より降臨されし四柱の神様が現れた。


──このままでは空しい。ならば我らが力を添えよう、と。


 東の青龍は一月二月三月と春を作り、天の恵みである雨を降ろしては大地に繁栄を齎した。木々は再生し花は咲き乱れてと、それはもう大いに賑わった。


 南の朱雀は四月五月六月と夏を作り、その炎で枯れ果てた生命に芽を吹き込み華を再燃させた。さらに強靭な翼で大凶を追い払い幸運を呼び寄せた。たいへん感謝した。


 西の白虎は七月八月九月と秋を作り、文化を開花させた。『近代文明』や子宝と、はたまた世に満ちた蓮素すらも正常へと戻した。感動のあまりに涙した。


 北の玄武は十月十一月十二月と冬を作り、穢れた水を浄化しては飲めるようになるまでと恵みを与えた。果てには病気や災難を防ぎ健康にまで手を伸ばした。拝んでは祈り倒した。


──前のようにはならないでくださいと想う人もいれば、ずっと居てくださいと乞う人もいれば──

 喜んでは万謝を叫び、雫拭いては崇め奉った。それは人の正の感情だった。

──もう充分ですと。『争い』を起こしますからと。

 人が持つ正の感情よりも負の感情の方が多かった。

 よって争いは止まらない。それこそが人という生き物の性であり、なんと悲しいことだろうか。


 しかし、それを見越したのか四神の王が舞い降りた。


──仁をもって義をなす。義によって仁を尽くす。


 麒麟はそう言った。生きた虫さえ殺す事なく香る草さえ踏むことなく、麒麟はなによりも優しかった。慈悲深かった。


──倅を命じて調和を成そう。


 そして四つの公は作られた。

 春を司る青龍は東のチロン家へと。

 夏を司る朱雀は南の『チューチエ』家へと

 秋を司る白虎は西のイフー家へと。

 冬を司る玄武は北のショワン家へと。

 

 かくして四季を彩り暦は生まれ東西南北はできたのである。


 そして麒麟は春夏秋冬の王として、全てが住まう中心『アストラン』王国に君臨した。


──そのアストランにちょっと大きなお菓子屋さんがあることは、当時の人が知る由もない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ