宝の番人(1/1)
「前方に島影発見!」
見張り台に上っていたガイコツから、報告が上がります。それを聞いた乗組員が沸き立ちました。
ついにガイコツ海賊団は、流れ星のかけらが眠っているという無人島に到着したのです。近寄れるギリギリまで船を寄せていかりを降ろした乗組員たちは、上陸の用意を始めました。
「いいか、野郎ども。まずは部隊を二つに分ける」
準備が終わると、ズガイ船長が皆を集めて作戦会議を始めます。
「まず第一部隊はオレ様に続け。お宝が隠されている洞窟を見つけるんだ。島に猛獣がいてもいいように、武器は忘れるなよ。その間、第二部隊は船を守っていろ。第一部隊が洞窟を見つけたら、全員で乗り込むぜ」
「アイアイサー!」
ガイコツたちは元気に返事します。そして、ボートを海に降ろし始めました。
バシャバシャと水音を立てながら、第一部隊が浜へと向かっていきます。第二部隊に入ることになったジュンは、その様子を心配しながら見ていました。
「猛獣って……トラとかライオンとか? この島、そんなに危険な場所なの?」
「まさか。宝の地図には、この島にはトラやライオンが出るなんて書いてなかったぜ。船長は用心のためにああ言っただけさ」
同じく第二部隊になったキヌタさんが、怖がるジュンをなぐさめます。二人の会話に、掃除仲間のダイタイさんも加わってきました。
「まあ、陸には何にもいないだろうよ。その代わり、この辺りの海にはクラーケンが出るって話だぜ」
「クラーケン?」
「でっかいタコの化け物さ。流れ星のかけらの番人だ。だから、もし宝を無理に奪おうとするようなやつがいたら……」
ダイタイさんは自分の肋骨を一本取りだして、バキリと二つに折ります。ジュンは「ひいっ」と悲鳴を上げました。
「平気だって。そんなやつが出たら、オレがこの船の大砲で蹴散らしてやるよ!」
キヌタさんがジュンに双眼鏡を渡してきました。
「さあ、見張りを続けようぜ?」
「う、うん……」
ジュンは足をガクガクと震わせながら、船縁に寄りかかりました。
(本当にそんな化け物が出たらどうしよう……。それで、キヌタさんの大砲でもやっつけられないくらい強かったら……)
クラーケンに丸呑みにされるところを想像してしまったジュンは震え上がります。
そんなことを考えていたからでしょうか。海面に何かが浮かんでいるのをジュンは発見してしまいました。
初めは流木かと思ったのですが、双眼鏡でじっと覗いていると、そこに吸盤がついているのが見えます。それはまるで、タコの腕のようでした。
(ま、まさか……クラーケン……!?)
ジュンはまっ青になって、双眼鏡を落としそうになりました。慌てて指先に力を込め、もう一度そちらへと視線をやります。
けれどそこに広がっていたのは、穏やかに波打つ海面だけでした。あちこちを探し回っても、どこにもさっきのタコの腕のようなものは見当たりません。
「ジュン、どうしたんだ?」
ジュンの様子がおかしいことに気が付いたのか、ダイタイさんが尋ねてきました。ジュンは手すりをきつく握りながら「何でもないよ」と返します。
きっとあれは気のせいだったんだと思うことにしました。それにこのことを口にしてしまえば、本当にクラーケンが出てきそうな気がしたのです。
それからもしばらく見張りを続けていましたが何も怪しいものは見当たらず、ジュンはやっぱり自分の見間違いだったんだとほっとしました。
第一部隊が帰ってきたのは、そんなときのことでした。
「野郎ども、船を島の反対側に回せ!」
ズガイ船長が命令を下します。ジュンは「洞窟、あったんですか?」と尋ねました。
「洞窟っていうか、その手がかりっていうか……まあ実際に見た方が早い。だけど、ちょっと困ったことになってな」
ズガイ船長の言葉に、ジュンは首をひねりました。困ったこととは何なのでしょう?
レディ・ボーン号は島をぐるりと回り、崖がそびえている場所で動きを止めました。
ズガイ船長はトランクを持って来させます。中に入っているのは、お宝までの道を開くカギの役目をしたあの三つの石です。いよいよ流れ星のかけらが見られるんだと思い、ジュンは気持ちが高ぶってくるのを感じていました。
今度は全員で上陸をします。もちろんジュンも皆についていきました。