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お宝はいただいていく!(1/1)

 ジュンが洞窟の一番奥に辿り着くと、まるで待ち構えていたかのようにクラーケンがいました。


 その空間は体育館よりもずっと広いところで、奥には祭壇のような場所があります。そこにサッカーボールくらいの大きさの薄い金色の石が置いてありました。その石は金平糖みたいな形をしています。きっと、あれが流れ星のかけらなのでしょう。


 クラーケンは、その祭壇の真正面にいました。お宝の番人だけあって、これ以上は通さないぞとでも言いたげに、どっしりと構えています。


 流れ星のかけらを取るためには、このクラーケンをどうにかしないといけないようでした。


 祭壇まで続いている水路に、浮島のように石が浮かんでいます。ジュンはそれを足場にして奥まで進みながら、クラーケンに向かって叫びました。


「僕は海賊だ! お宝はいただいていく!」


 クラーケンがギョロリとした目でこっちを睨んできましたが、ジュンはひるみません。


「脅したって無駄だ! 僕はお前なんか怖くないぞ!」


 強がりなどではありませんでした。ジュンの中からは、この化け物を恐れる気持ちがすっかり消えていたのです。


 だって今のジュンには、このクラーケンなんかよりずっと怖いものがあったのですから。


 皆に会えなくなること、もう冒険ができなくなること。


 ジュンにとっては、そちらの方がよっぽど怖かったのです。


 バシャバシャと水をかき分けながら、クラーケンが迫ってきました。でも、ジュンは逃げません。


 クラーケンが腕を伸ばします。ジュンは避けようとしましたが、失敗して、それに絡め取られてしまいました。あっと思ったときには、体が宙に浮かんでいます。


 クラーケンに放り出されたジュンは、水路の中へと落ちました。けれど必死に水をかいて海面に上がります。すると、目の前に祭壇へと続く階段があるのが見えました。


 水からあがり、ジュンはその階段を駆け上がります。クラーケンの腕が後ろから迫り、ジュンを叩き落とそうとしました。けれど、今度はジュンも間一髪でそれをかわし、ついに一番上まで登り切ることに成功します。


 ジュンは置いてあった流れ星のかけらをつかみ、叫びました。


「皆を元に戻して!」


 その途端、流れ星のかけらは先ほどよりも眩しい光を放ち始めました。そして、ジュンの手から離れたかと思うと、瞬く間に宙に浮き上がります。


 それと同時に岩の天井がドームのように割れて、日の光が射し込んできました。空中に浮かんでいた流れ星のかけらは、そこから外に飛んでいってしまいます。


「今のは……」


 ジュンはポカンとしてしまいました。


 しかし、自分の体を覆ってしまうほどの巨大な影に、我に返ります。


 水から飛び出してきたクラーケンが、ジュンを襲おうとしていたのです。きっとお宝を奪われたことに怒ったのでしょう。


 ジュンは急いで逃げようとしました。そのとき、どこからか声が聞こえてきます。


「ヨーソロ

 ヨーソロ

 進め 幽霊船」


 それは歌声でした。段々と大きくなっていきます。


「オレたちゃ 泣く子も黙る ガイコツ海賊団!

 七つの海を駆けてゆけ ヨーソロ!」


 入り口から姿を現わしたのは、空を飛びながらこちらに近づいてくるレディ・ボーン号でした。ジュンの顔が輝きます。


 船体は、どこも壊れたような様子はありません。真っ直ぐに伸びたマストや大きく膨らんだ帆もいつも通りでした。レディ・ボーン号は、クラーケンに襲われる前の状態に戻っていたのです。


「ガイコツ海賊団参上だ!」


 船首に立ったズガイ船長が、剣を片手に高らかに宣言しました。


「オレ様たちの仲間は返してもらうぜ! 野郎ども、砲撃開始!」

「アイアイサー!」


 威勢のいい声が響き、船はクラーケンに側面を向けます。


 ドカン! という音が聞こえてきて、レディ・ボーン号の大砲から煙が上がりました。


 それが直撃したクラーケンは、たまらずに水の中に逃げていきます。船の上では歓声が上がりました。


「ジュン!」


 水路に着水したレディ・ボーン号から、ズガイ船長や船員たちが降りてきます。


「船長、僕、やりましたよ!」


 ジュンは興奮しながら言いました。


「流れ星のかけらに願ったんです! 皆を元に戻して欲しいって! あっ、でも……」


 ジュンは困った顔で、二つに分かれた天井から空を見つめました。


「僕がお願い事をした後、流れ星のかけらはどこかへ飛んで行っちゃって……」

「いいさ、そんなの」


 眉を下げるジュンの背中を、ズガイ船長が強く叩きました。


「また冒険して見つけたらいいだけなんだからな」

「そうそう! 楽しみはいくつあってもいいんだぜ!」

「ガイコツの人生は長いんだ! 気長にやるさ!」

 

 ズガイ船長と同じく、乗組員たちもお宝がなくなってしまったことを気にかけている様子はありません。皆をガッカリさせてしまうんじゃないかと心配していたジュンは、ほっとしました。


「さあ、そろそろ出発の時間だ、野郎ども!」


 船長の命令で、ジュンたちはレディ・ボーン号に乗り込みます。船がふわりと舞い上がりました。


「次のお宝目指して突き進むぜ!」

「アイアイサー!」


 ガイコツたちと一緒に、ジュンも元気よく返事をしたのでした。

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