第三十五話【15年後】
あれから十五年の月日が流れた。
とあるおもちゃ屋にて。
「パパ! これにする!」
息子は、店の棚に並んでいたくまのぬいぐるみを指さした。
「これでいいのか?」
「これ、すき!」
「そうか。じゃあ買ってやるよ」
そう言ってくまのぬいぐるみを手に取った瞬間、どこか懐かしいような気がした。
なんだ、この感覚。
…………ゆう。
て、あれ?
今、ゆうっていう名前が浮かんできたけど。
そんな知り合いいたか?
いや、そうじゃない。
ゆう……。
僕はぬいぐるみをじっと見つめる。
くまのぬいぐるみ……ゆう!?
とその瞬間、涙があふれてきた。
全てを思い出したのだ。
僕の親友であり、初恋の相手がいたことを。
その子と一緒に過ごした、高校二年生のあの夏を。
「パパ。泣いてるの?」
息子が首を傾げて聞いてくる。
「大丈夫だよ。それより、レジに行こうか」
「うん!」
僕は涙を拭い、息子と手を繋いで歩き出した。
ゆう、元気にしてたか?
僕は元気でやってるよ。
良い奥さんをもらって、子宝にも恵まれて。
今まで君のこと忘れててごめん。
もう絶対に忘れないから。
おかえり、ゆう。
手に持っていたくまのぬいぐるみが、微かに笑ったような気がした。
これにて完結となります。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




