第三十三話【8月14日・水曜日】
起きた。
僕は目を閉じたまま、隣で眠っているゆうを抱きしめてつぶやく。
「ゆう……何があっても僕は君が好きだから」
すると、
「……私もだよ。雪……くん」
声が聞こえてきたため、目を開けてみると……彼女は泣いていた。
僕よりも早く起きていたらしい。
かなりの涙を流していたようで、枕が濡れている。
「ゆう!? どうしたの?」
「……雪くん。……足が……全く、動かない」
予想はしていたが、やはりそうなったか。
「大丈夫だから、落ち着いて」
「でも……身体が全然、動かないの」
「大丈夫」
「動かし、たいのに……ぐすっ」
僕はゆうの頭を撫でながら口を開く。
「なぁゆう。……突然だけど、今日何したい?」
「うぅ…………えっ?」
「どこでも連れて行ってやるよ。おんぶしてさ」
「でも……か、身体が動か、ないし、迷惑だよ」
「僕なら問題ない。もう決めたんだ。……ゆう、最後まで楽しく過ごそうよ。後悔のないようにさ」
「…………雪くん」
彼女は再び泣き出す。
僕はゆうの顔を自分の胸に埋め、泣き止むまでじっと待った。
少しして。
やっと落ち着いてきたらしく、ゆうは僕の胸のなかで、
「……私、タピオカが、飲んでみたい、かな」
「おお、いいな」
「あとね、カラオケで、雪くんの歌声……聞いてみたい」
「任せろ」
「あと、グリちゅ~! が食べたい」
「おう」
「あとは……考えておくね」
「わかった。じゃあ今すぐ出発だ」
「えっ、もう?」
「もちろん」
そう言ってベッドから降りると、財布とスマホを用意。
それからベッドに寝転がっているゆうをゆっくりとおんぶした。
「……雪くん、重くない?」
彼女がそう耳元で尋ねてきたため、僕は一度笑い、
「軽すぎて空が飛べそう」
「ほんとに?」
「ああ」
「でも、実際は?」
「重い」
「……雪くんのバカ!」
「いや嘘だって。全然重くないよ」
「……ありがとっ」
この日、僕とゆうは思いっきり遊んだ。
駅前のカフェでタピオカを飲んだ。
カラオケボックスで歌を歌った。
大型ショッピングセンターのなかにある駄菓子屋で【グリちゅ~!】を発見した。
ボロアパート周辺をたくさん散歩した。
今朝の涙が嘘のように、ゆうはずっと笑顔だった。




