第二十九話【8月4日・日曜日】
その日の夜。
いつも通り同じ布団のなかでイチャイチャしていた際。
ふと、ゆうの吐息の量がいつもより多いような気がした。
ついでにいつもより体から温もりを感じる。
熱いと言った方がいいかもしれない。
愛の温度をはるかに超えている。
おかしいと思い、一度ゆうから離れた。
「はぁ、はぁ。……あれ、雪くんどうしたの?」
こうしてみると、やはり顔が赤い。
というか午前中よりもひどくなっているような気がする。
「ゆう、さっきから体が熱いけど、大丈夫?」
「えっ……うん」
強がって無理をしているのだろう。
あまり表情に余裕がない。
「いや絶対大丈夫じゃないだろ。ちょっとお母さんを呼んでくるから待ってて」
そう言い残し、急いでリビングへ。
リビングに入ると、両親揃ってテレビを見ていた。
「お母さん」
僕がそう呼ぶと、二人ともがこちらを向き……お母さんは無言で口を開け、お父さんはにやにやとした顔つきになった。
「どうした雪? ゴムが必要になったんなら俺のを分けてやるが」
今はお父さんに構っている時間はない。
「ちょっときて。ゆうが調子悪そうなんだ」
「わかったわ」
そう答えてお母さんは立ち上がる。
「おい、そんな口実でお母さんを連れ出して3Pをするつもりじゃないだろうな?」
「あなたは黙ってなさい! 雪が服を着るのを忘れて走ってくるくらいだから、冗談で言っていないことくらいわかるでしょ!」
そんな言葉と同時にお父さんにビンタが炸裂。
パンッ! という甲高い音がなった。
うわぁ、痛いだろうな。
……ん?
待てよ。
いまお母さんはなんて言った?
服を着るのを忘れて……て、マジか!
そういえば何も着てなかったわ。
完全にすっぽんぽん。
まあそんなこんなでお母さんを自室に招き、ベッドに寝転がったままのゆうを見てもらう。
ゆうの顔色が先ほどよりも悪くなっている。
吐息も荒い。
お母さんはゆうのおでこに手を当てると、
「熱があるわね、それもかなり」
「僕が薬を取ってこようか?」
「私が取ってくるから、雪は服を着なさい。あと、ゆうちゃんにも」
そう言い残し、お母さんはこの部屋をあとにする。
僕は言われた通り急いで服を着て、ゆうが入っている布団を捲り、まずは下着から着せていく。
ゆっくりと、慌てないように。
下着をつけ終え、続いてぶかぶかのシャツとズボン。
着替えを済ませると再び布団を掛けてやる。
しばらくしてお母さんが戻ってきた。
手にはお盆を持っており、水の入ったコップと薬、濡れたタオルが乗っている。
「ゆうちゃん、ゆっくりでいいからお薬を飲んで」
そう言ってゆうを起き上がらせる。
「すみません。……はぁ、はぁ。雪くんのお母さん」
「いいのよ、気にしないで」
ゆっくりと時間をかけて薬をニ粒飲み、ゆうは再び寝かされる。
「じゃ、あとは雪がゆうちゃんのことを見てあげなさい。ここに濡れタオルがあるからおでこに乗せてあげて。定期的に水で濡らすのよ?」
「わかった。お母さんありがとう」
お母さんはそのままこの部屋をあとにした。
僕はすぐさまお盆に乗っている濡れタオルを手に取ると、ゆうのおでこに乗せる。
「……ゆう、ごめんな。こんなになるまで気づけなくて」
「ううん。私がやせ我慢してたのがいけなかったの」
「まさかずっと調子悪かった?」
「……実は朝からずっと」
マジかよ。
なのに僕はずっと浮かれてて。
「…………本当にごめん」
「気にしないで」
それから僕はゆうが眠りにつくまで看病を続けた。




