第二十七話【8月4日・日曜日】
「……雪、起きなさい」
ふとそんな声が聞こえて目が覚めると、見慣れない天井だった。
正確には、久しぶりに見る天井とでもいうべきだろう。
ここは、実家か。
そういえば帰ってきてたもんな。
とそこで僕は、隣に裸の彼女が寝ていることを理解した。
更に五秒後、床に二人分の服や下着を放り出したまま眠ってしまっていたことも思い出してしまった。
「……お、おはよう」
ベッドの真横に真顔で立っているお母さんにそう言うと、とりあえず布団を肩までかける。
「服はどうしたの?」
「い、いやぁ。なんというか、どういうことでしょうね?」
昨日、キスしながらそのまま寝たんだっけ。
「私の足元にある散らかった衣服は何?」
「さぁ? 知らないな」
「じゃあ布団を捲ってみても大丈夫ですね?」
「いや、大丈夫じゃないです」
「ちなみに、一線は超えていないでしょうね?」
「それは保証します! はい!」
とその時。
隣で寝ているゆうが目を閉じたまま僕に抱きついてくると、
「ん~っ。雪くん大好きぃ……」
「お、おい。ゆう……」
寝ぼけてやがる。
このタイミングでそんな声上げるなよ、恥ずかしい。
一応親の前だぞ?
お母さんは目を閉じて一度ため息をつくと、ドアの方へと向かいながら、
「仕方ないわね。子供ができるようなことをしていないなら、別にいいわよ」
「えっ……」
「雪はあの人の遺伝子を継いでいるものね。……私はもう諦めたわ」
「い、いや~。そのまあ、うん」
「じゃあゆうちゃんが起きたらリビングに下りてきなさい。朝ごはんがあるわよ」
「わかった」
お母さんはそのまま廊下へと出て行った。
これでよかったのかな?
一応親公認ってことだよな?
一線を超えようものなら何をされるかわかったものじゃないけど。
とにかく、ゆうが起きるまでもう少しこのままでいよう。
僕はゆうに抱きついて、おでこにキスをした。
それから二分ほどして。
「お~い、雪。やってるか~」
そんな声と共にドアが勢いよく開けられた。
チラッと確認してみると、パンツとシャツだけのお父さんの姿。
奴は笑顔でこちらへと向かってきながら、
「うおっ。若いっていいねぇ」
「頼むから出て行ってくれ」
「俺も混ぜてくれよ」
「やだね。……というかなんで朝からそんなに立ってんだよ」
お父さんのパンツはテントだった。
メーカーはC〇lemanだろうか。
それともsn〇w peakかね。
「そんなこと言うなよ。俺は昨日お母さんに相手をしてもらえなかったせいで、溜まってんだよ」
「知るか! 出ていけ」
「フハハ。お母さんにバラしちゃおっと」
そう言い残してお父さんはこの部屋をあとにした。
勝手にしろ。
さっきお母さんには認めてもらえたからな。
全然怖くねぇよ。
「はぁ……」
それにしても。
どうしてうちの両親はこうも遠慮がないのだろうか。
ぬいぐるみは見つからないし、さんざんからかわれるし。
良いことねぇなぁ。
やがてゆうも起き、二人でちゃんと服を着た後リビングへと移動すると、机ではもう両親がご飯を食べていた。
お父さんの頬には手形がある。
お母さんに叩かれたのだろう。
「おはようございます!」
ゆうが笑顔でそう言うと、お母さんはこちらを振り向いて、
「ゆうちゃんおはよう。よく眠れた?」
「はい。よく眠れました」
「それはよかったわ。ご飯の支度をするからちょっと待っててちょうだい」
「あ、すみません。ありがとうございます」
そう言ってゆうはお母さんが座っていた席の横に座る。
僕は仕方なくお父さんの横へ座りながら、
「そのほっぺた。どうしたの?」
「聞くな」
不機嫌そうな表情で白米を食べ進めて行くお父さん。
下を見てみると、テントがなくなっていた。
なんか全体的に元気がなくなったな。
朝からお母さんにガミガミ言われたのかな?
まあ自業自得だろう。




