第二十ニ話【8月3日・土曜日】
バックを終えてギアを【D】に変えながら、お父さんが、
「なぁ雪。ちなみにどこまで進んでいるんだ?」
「あなた! 彼女さんの前でそんなこと聞かないでください」
すぐさまお母さんが止めに入った。
「おお、すまん」
「……ゆうちゃん。ごめんなさいね、うちの主人が」
ゆうは首を左右に振りながら「いえ、大丈夫です」と笑顔を見せる。
「まあどっちにしてもあの雪だしな。どうせ緊張して手を出すどころじゃないだろ」
「あなた!」
「悪い悪い。……でも、俺が雪くらいの時は三股くらい当然だったけどな? 時代なのかねぇ」
「…………それ、どういうことかしら?」
なにやらお母さんがすごい形相で、お父さんの耳を引っ張り始めた。
音が聞こえてきそうなほど強く握っている。
「痛っ! 冗談だって」
「詳しく聞かせてもらってもいいですか? 初耳なんですけど」
「だから冗談だよ! おい! 事故るから勘弁してくれ。俺が悪かったよ」
「私と付き合いながら、他二人の雌とも関係を持っていたのかしら?」
「雪! ぼさっと見てないでお母さんを止めろ!」
僕は一度ため息をつき、
「いや、自業自得だろ」
「冷たいぞ! というか、お母さんに告白した時には、他の奴らとはもうすでに別れてたよ! お前も知ってるだろ?」
「知りません」
「マジでやめろ。千切れるっ!」
その時。
「ふふっ」
隣からゆうの笑い声が聞こえてきた。
「ゆう、どうした?」
「ううん、ごめん。面白くてつい」
「そうか」
するとお父さんが耳を引っ張られつつも、
「で、ゆうちゃん。結局雪とはどこまで──」
「──いい加減にしなさい」
「痛い! 痛いって。早く離せ」
僕はゆうの顔を見ながら、
「……言わなくてもいいからな?」
「…………うん」
そんな僕たちのやり取りが聞こえていたのか、前から再びお父さんの声が飛んでくる。
「おい、今のやり取り……なんか怪しいぞ。なぁお母さん」
「確かにそうですね。……雪、まさかこの性欲の塊がそのまま人の姿になった男みたいに、結婚する前におかしなことはしていないでしょうね?」
そう言いつつ耳から手を離して、こちらを振り向くお母さん。
「お母さんまでなんなんだよ。やってないって、なぁゆう」
「う、うん。裸で抱きついて……その……キスしてるくらいだもんね?」
「あっ、おい!」
こいつ、言いやがった。
生殖行為以外のことなら言ってもいいって意味じゃねぇよ。
「あ~! 俺、聞いちゃったぞ~!」
「私もはっきりと聞こえました。……雪、今からちょっとお話があります」
両親が二人同時にそんなことを言ってくる。
「いや、違うんだよ!」
「さすがあなたの息子ですね。立派な性欲を引き継いでいるようで」
「いや~、それほどでも」
「褒めていません」
再び耳を引っ張られるお父さん。
「痛い痛い! なんで俺ばっかり!」




