第二十一話【8月3日・土曜日】
僕とゆうが付き合い始めておよそ一週間が経った。
いや~、僕ちゃん幸せ。
有頂天。
なんか世界の色が変わったような気がする。
昨日なんて、お菓子をゆうにあ~んするふりをして僕が自分で食べた際、ゆうが怒ってほっぺたを膨らませる姿を見て大笑いした。
あれはおかしかったな。
だってお菓子を近づけた時のゆうの顔、めちゃくちゃ欲しがってたんだもん。
で、あっち系の関係も割と進んでいたりする。
恥ずかしながら、毎晩寝る前にキスしたり……。
二つの双丘を触ったり。
最近は僕もすっぽんぽんで寝るようになっていたり。
だけど、勘違いはしないで欲しい。
僕はまだ未経験である。
これに関しては、結婚してからと決めた。
恋人がいなかったときは、早く卒業したいとか思ってたけど、最近心に余裕が出てきたからか、冷静に物事を考えられるようになってきた。
ゴム有りでも、避妊できる可能性はゼロじゃないって言うし。
ちゃんと仕事を始めて自立できるようになってからじゃないとな。
僕は計画性のない猿ではない。
ゆうを大切にしたいからこそである。
そういえば、最近よくゆうが転びそうになるのだが、その度に僕が守ってあげているため、特に何も問題はない。
ゆうは少しおっちょこちょいなんだと思う。
本人は「気を付けるね」と言っているが、あまり改善が見られない。
怪我をして綺麗な顔に傷をつけるような真似はやめてほしいね。
仮に傷物になっても、僕はゆうを愛し続けるけどさ。
で今現在、ゆうと一緒に電車に乗って実家へと向かっている最中である。
僕の実家は、ボロアパートの最寄り駅から三つ離れたところだ。
そこまで遠くはない。
話を聞く限り隣に座っているゆうは電車に乗るのが初めてらしく、目を大きく見開いて過ぎ去っていく外の景色を見ている。
「ねぇねぇ、あれ見て」
「どれだ?」
「山!」
「うん。珍しくもなんともねぇ」
「ふふっ」
やがて目的の駅に到着した。
都会か田舎かと言われれば、田舎よりの場所であるこの駅のトイレは、まだポットントイレだったりする。
子供の頃たまに使ってたけど、マジで怖いんだよな。
何か落としたらもう戻ってこないだろうし。
「さてと、じゃあ駐車場に行こう。ここへくる前に連絡は入れてたから、多分お父さんとお母さんが迎えにきてると思う」
「うわぁ……。雪くんのご両親に会うの。なんか緊張する」
「大丈夫だって。基本的に優しいから」
「でも……。もし私が雪くんにふさわしくないって思われたら」
「そんなことは絶対にないから、安心して! どちらかというと、僕にはもったいないくらいの子だし」
「もう、雪くん。ありがとっ!」
そんな会話をしつつも歩いていき、やがて見覚えのある車を見つける。
茶色のN‐B〇X。
知っているナンバーだ。
親の車で間違いない。
僕は後ろ側のドアを開けながら、
「ただいま!」
すると両親は二人同時に振り向く。
お父さんとお母さんは、二人とも年相応の見た目をしており、どちらも四十代前半だ。
先にお父さんが口を開く。
「おう、雪か。久しぶりだな……ん? その子は誰だ?」
まあ突然女の子を連れてきたら不思議に思うのも無理はないか。
「僕の彼女。一応紹介しておこうと思って、連れてきた」
お母さんは無言で口を開けている。
まるで僕に彼女ができたことが信じられないと言った顔だ。
実際今までモテてなかったけどな。
僕が車のなかに乗ると、ゆうは外に立ったまま、
「あのっ! 初めまして。雪くんとお付き合いをさせてもらってて、名前はゆうと言います」
「へぇ、なかなか礼儀正しい子じゃないか。さぁ、そんなところに立ってないで、なかに入りなさい」
お父さんが優しい表情で言った。
「し、失礼します」
ゆうは一度お辞儀をして車のなかへ乗り込み、ドアを閉める。
「さて、出発するか」
エンジンをかけ、目視で後ろを確認しながらお父さんが車をバックさせていく。
「あの雪に彼女……ねぇ」
お母さんが前を向いたままつぶやいた。
「僕だってもう高校生だし。別にいてもおかしくないだろ?」
「そういうものかしら」
「そういうものだよ」




