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第十五話【7月21日・日曜日】

 目が覚めた。

 抱きついてきている裸のゆうから離れ、台所へと向かう。

 黒色の歯ブラシを取ろうとして、不意に隣にあるピンクの歯ブラシが視界に入ってくる。

 昨日買ったゆうの歯ブラシ。

 夜、寝る前にゆうが使っていた。

 今まで僕のも使われていたわけだし、別に使っても構わないよな?

 実際ゆうなら良いって言いそうだし。

 ……いや、ちょっと待て!

 なんか思考が変態みたいじゃないか?

 目を覚ませ、僕。

 性欲なんかに負けるな!

 理性、マジ最強。

 内心でよくわからない葛藤を行いつつ、自分の歯ブラシで歯を磨いた。

 それから机の上で充電をしていたスマホに通知が届いていることに気づく。

 陽介からメッセージが届いており、暇なら11:00からカラオケに行かないか? とのこと。

 まあ、たまにはカラオケもいいかもな。

 最近断るばっかりしてたし。

 だが、返信はまだしない。

 とりあえずゆうに話してからだろう。

 そう考えてスマホを床に置くと、鞄から夏休みの宿題を取り出す。

 今日も数学だ。

 同じ教科を続けて行う方が効率が良いような気がする。

 教科書を片手に問題文を解いていくこと、小一時間。

 

「……ん~。雪くんおはよ~」


 僕はベッドの方を向き、お胸丸出しで両手を伸ばしているゆうを見て口を開く。

 

「おう、おはよう」


 爽やかに返しているが、かなり動揺している。

 何度見ても、ゆうの裸は見慣れない。

 ちょっと気を抜くと触りに行こうとする僕がいる。

 マジでやめてくれよ、僕。

 というか、付き合えば別に触ってもいいような気がするけど。

 なんか勇気が出ない。

 最近ちょっと積極的に行動できるようにはなってきたけど、思いを伝えるのは別だ。

 どうしても踏みとどまってしまう。

 何かいい機会があればいいんだけどな。

 そんなことを思いつつも、僕はゆうに話しかける。

 

「あのさ。僕、ちょっと今日外出してきてもいい?」


 するとゆうは、

 

「別にいいけど、どうしたの?」

「いや、最近ずっと友達の誘いを断ってばっかりだったからさ。たまにはカラオケに行ってこようかなって」

「あっ……それって私のせいだよね? ごめん」

「全然違うから」

「本当?」

「ああ。神に誓おう」

「なら信じてもいいかな。……で、雪くんが行きたいなら別にいいよ。私のことは気にしないで」

「ごめん、ありがとう」

「ちなみに何時から行くの?」

「午前の11時からだから、十時半にはここを出る予定」

「わかった! じゃあそれまでは私と一緒にいてね」

「もちろん」


 

 

 

 その後僕とゆうは、読書をしたり会話をしたりして同じ時を過ごした。

 その間ずっとゆうが僕に密着してきて、僕としては幸せだったのだが、どこか違和感を感じた。

 ほとんど気づかない程度だが、ゆうが何度か寂しそうな表情を浮かべていたのだ。

 僕がカラオケに行くからだろうか。

 たった半日程度なんだけどな。

 そして今もゆうは笑っているが、どこか無理をしているように見える。

 僕の見間違いの可能性もあるけどさ。

 

「じゃあ、行ってくる。19時過ぎまでには帰ってくるから」

「うん。楽しんできてね」

「ああ」


 僕はゆうの笑顔を最後に、ドアを閉めて歩き出した。

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