第十三話【7月20日・土曜日】
ふとある商品に目を奪われ、思わず唾を飲み込んでしまう。
15個入りで1164円か。
以外と高いな。
だが、買えない額じゃない。
二、三日本気で節約すればなんとかなる……か。
いやでもこんな物をゆうの前で買うわけには。
目の前にあるのは、いわゆる避妊具。
ゴムである。
もちろんゆうとそんなことをするのが早いのはわかっている。
わかってはいるのだが、こんな物を見てしまうと意識せずにはいられない。
一応持っておきたいよな。
念のため。
あくまで念のためである。
と、その時。
「雪くん! お菓子のコーナーどこ~?」
そんなゆうの声が聞こえた瞬間、僕は振り向いて反対の棚にある商品を見ているふりをする。
青色のシャンプーを手に取り、意味もなく「ふむふむ」とか言ってみる。
だが一足遅かったらしく、ゆうは隣へと並んでくるなり、先程僕が見ていた場所をチラ見し、
「……ふふっ。雪くん何見てたの?」
「シャンプー! を見てた」
「でも私がきた途端、急いで後ろを振り向いてたよね? だからこっちのゴムを見てたと思うんだけど」
「いや、シャンプーを見ていたんだ。勘違いはやめたまえ」
「欲しいの?」
「いや、いらない。まだお風呂場に残ってるしな」
「ゴムの話だけど」
「え……えっ? この店ってゴムなんて売ってるのか? どこだ?」
「……わかりやすい」
うん、誤魔化すの無理だな。
そう判断し、僕は視線を落としつつ、
「すみません。見てました」
「別に……買ってもいいよ?」
若干顔を赤くしつつ、そんなことをつぶやいたゆう。
それって。
それってつまり……してもいいってことだよな?
マジですか。
だが待てよ。
ここで本当に買ってしまったら、なんかかっこ悪いような気がする。
まだ告白もしていないのに。
というわけで、
「いや、買わないよ」
「えっ……それってつまり、生──」
「──違うからな! そう言うわけじゃなくて、僕はこれからずっとゆうを大切にしたいから!」
って、まずい。
勢いで言わなくても良いことまで口走ってしまった。
僕は慌てて訂正しようとする。
「えっと、そうじゃなくてな。有りとか無しとか関係なく……」
だが言葉が上手く出てこない。
少しの間何も言えずにいると、ゆうは頬を赤く染めたまま、
「ふふっ、ありがと。雪くんは優しいね」
「……そんなことは」
「からかってごめんなさい。さっき私が言ったこと気にしないで」
「いや……えっと、うん」
僕は一刻も早くここから立ち去るべく、歩き出す。
それからレジの方へ向かっていると、後ろからついてきていたゆうが僕の肩を叩きながら、
「雪くん。私お菓子が見たい」
「……お菓子? あっ、そういえば言ってたな」
「どうしても食べたいのがあって。いつも行っているスーパーにはないの」
「そうなんだ、じゃあ探してみよっか」
「うん!」
「で、どんなの?」
「えっとね……確か──」
その後幾つかの説明を受けて、ゆうが探しているお菓子が【グリちゅ~!】というチューイングキャンディであることはわかった。
だが、しかし。
残念なことにザクザクの店内にはなかった。
ゆうは少し落ち込んでいたが、すぐに復帰し、「また別のお店を探せばいいよね」と言っていた。
【グリちゅ~!】
それは僕も昔から大好きなお菓子であり、子どもの頃はよく食べていた。
しばらく食べてないな。
本当に懐かしい。
昔は、くまのぬいぐるみに食べさせようと、口元に引っ付けてたりしてたよな?
食べるはずなんてないのにさ。
にしても、思い出したら食べたくなってきた。
今度探してみるか。




