八十七のお話
ナースさんが出ていき、部屋には再び静かさが戻った。
私はデイを抱きしめ、不思議の世界での出来事を思い出す。
楽しいことばかりじゃなかったが、色々学ぶことも出来た……あ……
「アイツらは…」
私はハッとあの4人のことを思い出した。もしかしたらこの病気に入院しているかもしれない…
こっそり様子を見に行きたい出雲はベッドから降りた。
「あ…痛い…」
頭がズキンと痛む。それと体が重い…
まあ、我慢出来そうなのでそのまま扉の方へ進む。
「んわっ!?」
「うおわ!?」
私が扉を開けると、背の高い白衣を着たおじさん先生が立っていた。先生は私がいきなり扉を開けたことに驚いて目をパチパチした。
「ダメじゃないか、ちゃんと寝てなさい。まだ治ってないんだから…」
心配そうに私を見ながら先生はそう言った。
「あの…気になることがあるので、ちょっと行ってきても…」
「ダーメ!」
私はベッドに戻されてしまった。隙を見て抜け出そうなんて、私はまた悪いことを考えている。
「体調は結構良さそうでよかったよ、でも外出は禁止だからね!」
「はーい…」
先生は私に体温計を渡し、紙に何か書き始めた。
体温を図り終えた私は先生に体温計を返した。
「熱はないね…よかったよかった。そうだ、さっきはどこへ行こうとしてたの?」
「あっ…」
どうしよう、聞いた方が早いかな?どうせ部屋番号も分からなくて病院内を彷徨うことになるだけだし…
「あの…、東村って人と副島と藤原と井上っていう私と同い年の人たち…入院してますか?」
私がそう聞くと、先生は一瞬焦ったように見えた。
「…お友達…かな?」
「…いいえ、やつらは悪魔みたいないじめっ子です」
私がそう答えると、先生は少し複雑な顔をする。
「あのね…うん、入院してる」
「…怪我…してるんですか?」
「うん、酷い怪我をね。でも…君たちは同じ部屋で事故に遭ったのに…なんでだ!?っていうくらい怪我の仕方が違うのよね…君だけ何かに守られたみたいに怪我が少なかったの…」
私だけ…か……。きっとお兄ちゃんたちが守ってくれたのだろう。
「そうなんですか…あの…どれくらい怪我を…?」
「うーん…あまり詳しくは言えないけど…いや、それは言えないよ」
先生は教えてくれなかった。でも怪我していても生きていることが分かって少しだけ安心した。なぜ私が安心するかは分からないが…
「それじゃあ私は行くね、外出禁止だからね!」
「はーい…」
先生は最後にそう言って部屋を出た。
私はあの4人の怪我の具合が気になる。
「まあ、どうでもいいか…あんな悪魔ども…」
私がポツリと呟いたすぐ後、廊下からバタバタ騒がしい音が聞こえてきた。そして、いきなり扉がバーンッと開いた。
「美月!!」
「お母さん!」
涙を流す母が勢いよく入ってきて私を力強く抱きしめた。
「痛い痛い腕が!!」
「あっ、ごめんっ!!」
母はパッと離れ私の顔をまじまじと見た。なんか恥ずかしい…
「よかった…目を覚まして……」
「えへへ…」
母はポケットからハンカチを出して涙を拭く。
「お父さんももうすぐ来るわ…」
「本当?」
「えぇ、昨日からずっとお腹を壊しててね…。まあそれはいいわ。あぁ…よかった…よかった…」
母はベッドの隣の椅子にポンと座り、大きく息を吐き出した。
そしてまた私の顔をじっと見つめる。
「お母さん…」
私がそう呼ぶと、母はまた涙を流し始めてしまった。
「今度、料理を教えてほしいな…」
「えぇ、もちろん!なんでも教えてあげる…」
「それから、…えーと…うーん…色々…色々いっぱい教えて〜」
「えぇ、今まで出来なかったこと…全部教えてあげる…」
私たちが会話をしていると、また扉がバーンッと開いた。
「美月ぃ!!よかったああぁぁ!!」
くせっ毛の茶髪、赤縁のメガネ、ひょろひょろ貧弱そうな男性、私の父親が立っていた。今日はとても元気がいい。
「あぁあぁあ…よかった……」
「お父さん!」
よろよろ父は歩いてくる。それを母が支えて椅子に座らせた。
「お腹…大丈夫なの?」
「あぁ!もう大丈夫だよ!!」
クスクスと笑う母、元気でニッコリ笑う父…
「そうだ!それよりお祝いだ!!美月が目を覚ましたお祝いだあ!!あっ!旅行にも行こう!家族全員で!!」
「そうね!みぃちゃんが治ったらみんなで旅行に行きましょう!」
これが、家族。私の夢見てきた…いいや…ちょっとだけ違うけど…
でも、これが今の最高の家族。
ねぇ、チェシャ猫、お兄ちゃん…みんな見てる?大丈夫そうだよ…みーんな優しくて…
『安心したよ……よかった…』
「あ……」
頭の中に、兄の声が聞こえてきた。よかった、ちゃんと見てくれていた。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
不思議の世界のこと、今はみんなには秘密にしておこう。きっと信じてもらえないから…変に話して嘘つき呼ばわりされるのも嫌だし…
「あ…」
ポケットの中に何か入っていることに気がついた。私はそれを取り出す。
「…これ…」
それはあの水色の猫のストラップだった。あの時川に流されたはずのストラップ…どうして今ここに……?
「…お兄ちゃん、ずっとみぃちゃんのこと見守ってくれてるみたいね…」
母は微笑んでそう言った。
きっと兄が届けてくれたのだろう。このストラップは私のお守りだ…一生、肌身離さず持っていよう。
「そうだ…」
私は一つ気になることを思い出した。
変なところ多いです。後で直します…




