八十一のお話
『はーい、帽子屋さんどーいて』
リアンの後ろから声がした。
後ろには…
「アール!!死神さん!!」
あの二人が立っていた。無事でいてくれたことにとても安心した。どうやってここまで来たのだろう?
「何してんの帽子屋さん?君は変態かい?女の子に無理矢理毒の塊食わそうとするなんて」
「まぁ失礼な、何か用?」
睨み合う三人。リアンは私から手を離した。
「みぃおいで」
「…う…うん」
「ダメよ」
私はまた壁に押しつけられてしまった。肩を強く握られて痛い。
「やっぱ変態だ〜、うわぁ〜」
バカにするようにアールは言う。リアンはとてもイライラしているようで私を掴む手に力が入る。
「痛い痛いリアン!」
「あっ、ごめんね!」
パッと手を離してくれた。それと同時に私は死神さんに引っ張られた。
「よし、行くよ」
「あっちょっと!!」
私は二人に手を引かれ、勢いよく走り出した。
「んもー!!トランプ兵!!」
リアンは大きな声で叫んだ。すると、後ろから大量のトランプうさぎの兵が現れ私たちを追いかける。
さっきまでは気配すらなかったのに…いつの間に……
「最悪ですね、急ぎましょう」
わああぁあ!!と大きな声を出しながら、兵は槍を構え迫ってくる。私たちは左へ曲がり階段を探す。
「扉は地下の真ん中の部屋、……まずは鍵を取らなきゃ…どこだっけ?」
「鍵って…確か……一階の調理室にあった気がします」
「追いつかれちゃうよ!!」
兵はもうすぐそこだ。廊下に飾られている花瓶や騎士の置物を薙ぎ倒しながらどんどん迫ってくる。
アールは騎士の置物から剣を奪い、すぐそこのトランプうさぎたちに投げつけた。剣にぶつかったトランプうさぎは周りを巻き込んでバタバタ倒れる。
「階段だ」
やっと見つけた階段を私たちは急いで下りていく。まだ兵は追いかけてくる。
「まずは調理室に向かうよ〜」
「うんっ…うわっ!!」
アールと死神さんに両手を繋がれ、下から十段ほどの高さから飛び降りた。二人に支えられ、無事に着地出来た。とても怖かった…
兵はまだ追いついて来ない。今のうちに逃げなくては…
「アッハハハハハハァアアァァ!!パパだよ!!何してるの!!みぃ!!」
「パパ…」
階段の横の角から、パパうさぎがひょこっと現れた。話したいことは沢山あるが、今は相手をしている場合じゃない。
「王子様が待ってる!!王子様が待ってるー!!戻ろうよぉ!!」
「行きますよ」
私は二人に手を引かれ、また走り出した。
「待ってよっ!みぃ、もしかして帰る??帰っちゃうのぉおお??」
ものすごい速さで追いつかれた。まるで警察の白バイみたいだ…
パパうさぎは私の目を見つめ、そう聞いた。
「…うん、ごめんね…」
私がそう答えると、パパうさぎは酷く悲しそうな顔になり、ピンと立った耳がフニャっと垂れた。
やっぱり、パパうさぎも私を殺してこの世界の住人にしようとするのかな……
「帰っちゃうかぁ……パパ…寂しいけど、みぃが決めたなら仕方ない!!親は子の背中を押すよぉぉ!!みぃのお手伝いする!!」
予想外の答えが返ってきて、私は少し驚いた。
パパうさぎはお礼を言う間も無く、またものすごい速さで後ろへ走って行った。そして、階段のある方へ飛び込むと、あの笑い声とともに兵の叫び声とバタバタ倒れる音が聞こえてきた。
「パパ…大丈夫かな……」
「大丈夫ですよ、彼はとても強いですから」
それならいいのだが…
私たちは振り返らず、まっすぐ走る。トランプうさぎの兵はあれから追ってこなくなった。パパうさぎが倒してくれているのだろう。最後にお礼を言いたかった。
「あったあった、こっち」
私たちは少し開いた大きな扉の中へ入った。そしてすぐに鍵を閉める。
「うわぁ……」
中は以外と狭かった。床には大量の散らばった食器や食材。調理台の上は嵐でも起きたのか?と聞きたいくらい散らかっている。壁にはトマトやアボカドなどが投げつけられた跡がある。散らかりすぎていて足の踏み場もない。
「きったねぇなぁ、鍵ってどこにあんの?」
「…場所は分かりません、探しましょう」
「えっ、マジで?こんな場所どっから探すんだよ…」
小さな鍵を三人で、この散らかった部屋から探すのはとても時間がかかりそうだ。早く見つけないと兵に捕まってしまう。
「どうする……」
『んあー、ギャーギャーうっせぇなぁ…』
「!?」
部屋の奥、調理台の陰から人がムクリと起き上がった。
可愛いヘッドドレス、赤のドレスに白のエプロン、長い黒髪の女の子。料理長のモエカだ。
どうやらこの汚い部屋で寝ていたらしい。
「ん〜、あれっ、みっきーじゃん!!何でこんなとこに!?」
「えっ…えっと…」
モエカは目を皿のように丸くして私を見た。とても驚いているようだ。
そして、私の隣の二人を睨みつけるように見る。
「えっとね…私、元の世界に帰るの。扉の鍵の場所を知らない?」
私がそう聞くと、モエカはまた目を皿のように丸くして私を見つめた。
変なところ後で直します〜




