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アリスゲーム  作者: いずも
76/88

七十五のお話


『行こう行こう!!』


「ねぇ、…扉の場所…分かる人いたりする?」


ぬいぐるみたちは「へ?」と素っ頓狂な声を出した。まあ、そうなるだろうな。


『みぃ…場所分かんない?』


「うぅ…ごめんね…分かんないの…」


私が謝るとクマのデイが私の肩をポンと叩いた。顔を上げると目の前には大きな笑顔、見慣れた、大好きなクマのデイの可愛らしい顔があった。


『大丈夫!!みんなで探そう!みぃ、謝らないで!!』


他のぬいぐるみや家具たちもニコニコ笑顔だ。

…この子たちは…本当に優しい子たちなんだなぁ……。


「ありがとう…ありがとう…」


『えへへ、じゃあ、行こう!!ママも待ってるよ!』


「お母さん…が?」


『うん!』


どうして?あんなに私のこと嫌いなお母さんが?不思議なこともあるものだなぁ…



「どこへ行くんです?」


「!?」


『!?』


後ろから、冷たいチェシャ猫の声が聞こえた。

呆気なく見つかってしまった。もう、前に道はなく行き止まり。逃げることが出来ない。ぬいぐるみたちもとても怯えている。


「こんなところで…何を?」


「あぁ…えぇと…その…」


チェシャ猫は変わらずいつもの薄っすら笑い。怒っているのか、そうでないのか分からない。


「早く出ましょう、こんな汚いやつらの場所…」


「こっ…この子たちは汚くないよ!!」


なんてことを言うんだ。この子たちは私の宝物なのに…


「いいから…行きましょう」


「うわっ!?」


チェシャ猫は私の腕を掴み引っ張った。どうしよう…行きたくない、それにこの子たち…


『みっ…みぃに何するんだ!!離せ!!』


『そうだそうだ!!悪い猫め!!』


ぬいぐるみたちは次々チェシャ猫に飛びかかった。


「うるさい」


チェシャ猫はそれを物凄い力で跳ね飛ばした。ぬいぐるみは破れてワタが出たり、家具は足が折れたり、本は破けてしまったりと、悲惨なことになっている。


「なんてことするの!!」


私はチェシャ猫の手を振り払い、ぬいぐるみたちに駆け寄った。

クマのデイは腕がもげてしまっている。縫えばどうにかなりそうだが、ここには裁縫道具がない。


「デイ!しっかりして!!他のみんなも!!」


『うぅ…僕たちは大丈夫……みんな壊れても、直して貰えばいいんだから…。みぃ…僕たちのこと直してくれる?』


「直すよ!!裁縫…苦手だけど頑張るよ!!」


『…よかったぁ…』


デイはそのまま眠ったように動かなくなってしまった。デイだけじゃない、他のみんなもだ。死んでしまったわけではない。だけど…


「私の…大事なものなのに……なんでこんなことするの?」


私はチェシャ猫に尋ねた。チェシャ猫は不機嫌そうな顔で私を見た。


「こいつらは…汚い記憶を呼び起こす。あってはいけない、早く消し去らないと…」


「だっ…だめ!!絶対だめ!!そんなことしたら…チェシャ猫のこと大っ嫌いになるよ!!」


私がそう言うと、チェシャ猫は酷く動揺した。よく見ると、手が震えている。


「ご…ごめん…なさい……ごめんなさい…嫌わないで…嫌わないで……」


「えっ…えっ…待ってチェシャ猫どうしたの!?」


チェシャ猫は頭を抱えて蹲った。まるでお化けに怯える子供のようだ。


「嫌だ…ごめんなさい…ごめんなさい……」


「あわわ…ごめん!私言い過ぎちゃった、嫌いになったりしないから大丈夫!!安心して!!」


チェシャ猫はまだ蹲っている。

どうしたらいいのだろう。こんなチェシャ猫見たのは初めてだ。


「ごめんなさい…」


「大丈夫だから!!ねっ!!」


私がチェシャ猫の背中を撫でてやると、少しずつ落ち着いてきたようだ。

チェシャ猫はゆっくりと私の顔を見た。その顔は青ざめ、今にも死んでしまいそうな顔だった。


「…本当に…嫌われませんか…?本当に…」


「うん!!本当!!大丈夫だよ!!」


チェシャ猫は安心して私をぎゅっと抱きしめた。チェシャ猫って…こんな人だったか…?もっとクールで、冷静で…そんなイメージだった…。


「怖いんです…嫌わないで……」


「うん…大丈夫だよ…」


何がそんなに怖いんだろう。私なんかに嫌われても…別に何も変わらないんじゃ?私、チェシャ猫のこと、ちょっと怖いけど嫌ったりは絶対しないよ…


「でも…この子たち消すとか言わないでね?」


「…はい、分かりました」


よかった。これで一安心……



「…なんで…逃げたりしたんです?」


「うぅ…」


……王子様が怖かったから…いや、うん。それしかないよな…


「ごめんね…」


「大丈夫です…」


チェシャ猫はようやく落ち着いたようで、私を離した。そして立ち上がる。


「ねぇ…この子たち…」


「…今は…置いておいてください」


私は後ろに散らばった壊れてしまったぬいぐるみたちを見た。

ちゃんと直してあげるから…大丈夫…


「行きましょう…」


チェシャ猫は寂しい声でそう言い手を出した。私はその手をとり、一緒に部屋を出た。

やっぱり…逃げられなかった…

後で直します。

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