六のお話
小さな門を抜け、外に出るとまたあの森に出た。さっきより霧が薄くなっていた。
「ん?」
私は斜め前の木に引っかかって揺れるなにかを見つけた。あれは…
水色の猫のストラップ?どこかで見たことある気がする。
突然風がフワッと吹き、引っかかっていたストラップが落下。だが、地面に落ちることはなかった。ポチャンッと水の中に落ちるようにストラップは消えた。
「願いは…叶います…もうすぐです…」
チェシャ猫がボソッと呟いた。願い?なんだろう。
「それではアリスたち、頑張ってくださいね」
チェシャ猫は消えた。いつも突然いなくなる。聞きたいことは山ほどあるのに聞くタイミングがない!
「……」
死人のような顔の3人。進むことなんてできるのだろうか…。
「もぉ…やだ…帰りたいよ…」
「俺だって…」
「お母さん…」
そうだ、私のお母さんとお父さん心配してないかな…。
「どうするの…これから…」
藤原が言う。
「知るかよ…」
東村が答えた。副島はずっと泣いてなにも言わない。私も下手に何か言ってキレられたくないので黙っておく。とても居心地の悪い空気だ。
「こっちだよぉ…」
「ヒッ!!」
小さな声が聞こえた。チェシャ猫でもネズミの声でもない。
「こっちこっち…こっちだよぉ…」
「やだ…死にたくない、死にたくないよぉ…」
「大丈夫…怖くない、怖くないよぉ…おいで…アリスたち…」
優しく響く声。人を安心させる妖精のような声だ。
「行って…みる…?」
藤原がみんなに尋ねる。皆んなは考える。
「い…行こう…。危なくなったら全力で逃げるぞ…」
東村が答えた。副島は泣きながら小さく頷く。藤原も行ってみるようだ。私は後ろからついて行く。
「そうそう…こっち…こっち…」
私たちはゆっくりゆっくり進む。
「早く…こっち…こっち…」
仄かにオレンジ色に光る場所が見えた。どうやらあそこから声が聞こえているようだ。
「早く…」
花のいい匂いがする。なぜか懐かしいなにかを思い出す匂いだ。
「ここ…ここ…」
声はだんだん近くなる。そして
「やあぁ…」
目の前に現れたのは人の顔。それもブヨブヨしていて両目がない、唇も腫れ上がり恐ろしい。首から下が無く、その顔だけが宙に浮いている感じだ。
「うぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
4人は反対方向へ全力で走った。今まで見たホラー画像より100倍怖かった。あれは一体なんだ。
「はあっ、はあっ…」
結構な距離を走った。疲れて4人は地面に座り込んだ。こんなに走ったのは中学校の持久走大会以来だ。
「ついてきたり…しないよね…」
「バカ、怖い事言うなよ」
藤原と東村が話す。
「ねぇ、…私たち…帰れるのかな…」
副島が弱々しい声で呟く。全員は黙った。そんな事、誰にもわからない。
私はふと目の前の木を見上げた。あれ…。
さっき見た水色のストラップだ。薄暗い霧の中でほんの少し光っている。手にとってみたいけど、引っかかっている位置が高すぎて手は届きそうもない。寂しげに光るストラップ。なんだろう、何か喉につっかえてる感じのモヤモヤが…。
「アリスたち、なにをしているのですか?」
チェシャ猫の声が聞こえた。
「なにもしてねぇよ…」
東村が答えた。
「あの、なんで私たちのことアリスたちって呼ぶの?」
ずっと気になっていた一つをやっと聞けた。
「この国へ落ちてきたからじゃないですか?私もよくわかりませんが」
曖昧な答えが返ってきた。
私は「へー」と適当に返した。
「私たち…これからどうすればいいんですか…帰れるんですか…?」
副島が泣きながら聞く。チェシャ猫はずっと薄っすら笑っている。
「お城を目指して歩けばいいんですよ。帰れるかどうかなんて知りません」
「そっ、そんな無責任なこと言うなよ!?だいたいここは何なんだよ!お前がここに連れてきたんだろ!!」
叫ぶ東村。チェシャ猫は首を傾げる。
「私はあなたたちを連れてきたりしてませんよ?落ちてきたのはあなたたちです。穴を作ったのは王子様です」
王子様が穴を作った?私が落として踏み壊されたあの赤い玉のせいじゃないのか?
「もういいから帰り道を教えて!!」
今度は藤原が叫ぶ。
「帰り道…ですか…最初に説明したじゃないですか。話、聞いてなかったんですか?」
「ごっ、ごめんなさい!!忘れました……あの…もう一回教えてください…」
藤原はチェシャ猫に謝り、恐る恐る聞いた。
「元の世界に戻りたいならお城の奥の扉の鍵を開けてください」
そう言ってチェシャ猫はどこかへ歩いて行った。
変なところあとで直します。雑ですみません。




