六十七のお話
「うわっ」
教室の外へ出て、廊下を歩こうとすると、私の前をあのうさぎがものすごいスピードで横切っていった。
私は急いでうさぎを追いかける。
「ねえ、お願い!ちょっと待って!!」
うさぎは振り返ることなく走っていく。
今度こそ見失わないように私は一生懸命走る。
「ねえ、どこへ行くの!!」
少し止まって、話ぐらいしてくれてもいいじゃないか…
私はスピードを上げる。
「んわっっ!!」
何かを踏んで、私はズルンッと派手にこけた。べたっと床に倒れたが、幸い怪我はしなかった。
一体何を踏んだのだろう?
私は後ろを見る。
「……?」
床には謎の赤い液体がこぼれていた。
私はその正体を知るため、液体に近づく。
「…ペンキ…?…絵の具」
油のような匂い…血じゃなくてとても安心した。
隣の教室の扉の隙間から出てきている。
「あっ、うさぎ…」
うさぎを追っていたことをすっかり忘れていた。もう姿は見えない。
私はがっかりして立ち上がり、服をはたく。
「…なんかあるのかな…」
赤い液体が出てきている教室の扉を見て私は思った。
美術作品室だ。
「…入るか…」
ガラッと扉を開けると、入り口に二体のマネキンが置いてあり、とても驚いた。お腹に「入って」と赤い文字で書いてあった。私はこわごわ中へ入る。
「…」
絵を描く沢山の道具が入った箱や、絵の具のパレット、筆やカッターなどが床に散乱していた。なぜか壁にかけてある絵が全て反対側を向いている。
私は一番近くにあった絵をひっくり返してみた。
「…あれ……」
見覚えのある作品…
「私の…絵じゃん…」
これは、ニセウミガメとグリフォンだ。グリフォンは楽しそうに笑い、ニセウミガメは歌を歌っているように見える。
…そうだ、ニセウミガメは歌がとても上手だった。歌詞を作るのもすごかった。よく歌い方や、漢字なんかを教えてもらった。グリフォンにはよく背中に乗せてもらって、大空を飛び回ったな…懐かしい…
私は次の絵を裏返す。
これは…アール?特徴的なパッチリお目々の人と、コウモリが一緒に描かれている。
次の絵は、多分アールと小さな私だ。洞窟で雨宿りしている。
「…」
私は、小さい頃森で迷って泣いていたことを思い出した。
とても悲しい事があったんだ。…そう、泣いているところを誰にも見られたくなくて、雨の降る森の中に隠れたら道に迷ったんだ。そこでアールが助けてくれた。私はびしょ濡れだったから服も乾かしてもらったんだ。
「…ぁ」
次の絵を裏返すと、絵ではなく、小さな文字が書いてあった。
「君の泣き顔も好きだけど、笑ってる顔の方が好き。君をいじめるやつは許さない」
私はちょっと恥ずかしくなった。きっとアールが書いた字だろう。
私は最後の絵を裏返す。
この絵はとても賑やかだ。帽子さんにウエイトレスうさぎ、ネムチーにアヒルのカイ…
たくさんの人々が、笑顔で食事会をしている。…これは、兄と一緒に描いた絵だ。
「あっ」
足元にあったペンキの缶を、蹴って倒してしまった。真っ赤なペンキが床に広がる。私は慌てて缶を立てるが、床を結構汚してしまった。
「どうしよ………えぇ…」
こぼれたペンキが、ウネウネと動いて矢印の形になった。矢印は隣の美術室の扉をさしている。私に行けと言っているのだろうか?
私は美術室の扉の前まで行き、ゆっくりと扉を開ける。
「え…何これ…」
教室の中は、赤や青、黒に虹色の薔薇の花が、たくさん咲いた木が何本も生えていた。机の上にはペンキの缶がたくさん置いてある。私はその中で白薔薇ばかりの場所を見つけ、気になって行ってみた。
「間に合いませんでした。本当にごめんなさい。……なんだろこれ?」
ペンキの缶の上にそう書かれた紙があった。そして、その下にもう一枚紙があることに気がついた。
「……あぁ…」
カラフルな薔薇の木と、小さな私、トランプうさぎが描かれた絵だった。
私はこの絵を見て、さっきの紙に書かれていたことの意味が分かった。…いや、思い出した。
小さい頃、私はトランプうさぎたちに白薔薇を全部違う色にしてほしいと頼んだのだ。今思うと、とても可哀想なことをした。何百、何千とある白薔薇一つ一つに別の色を塗れと…
それも私が次にここを訪れた時までにね、と言っていたのだ…。本当にごめんなさいと言わないといけないのは、私の方だ…
「ん?」
私は、左端にある薔薇の木の後ろに、初めて見る扉を見つけた。あんな扉、今までなかったぞ…
私はその扉のところへ向かう。
変なところ多分あります…すみません。後で直します。




