六十五のお話
「……」
ここは普通の教室だ。
だが、何か食べ物の匂いがする。
「ん?」
窓側で一番後ろの机の上に、ワイングラスのようなものが置いてある。グラスから出た白い湯気は、隣の窓から入る風に乗って美味しそうな香りをばらまいている。私はそのグラスのところまで歩く。
「なんだろ…これ」
グラスの中には、青紫色の液体が入っていた。キラキラと光る粒が入っていて、星空のようだ。
私は机に『飲んで!!私の愛情たっぷり星空スープ!!』と、刻まれているのを見つけた。
「んー……」
はじめて見る色のスープだ。
とても綺麗だが、あまり飲む気にはなれない。湯気も出ていて熱そうだ…
「うぅ…」
私はスープに少し指を入れ、ペロッと舐めてみた。
「お…美味しい…」
不思議、としか言いようのない美味しさのスープ。何にも例えられない、本当に美味しいスープだ。
私はグラスを持って全て飲み干した。
「何だったんだろ…すごい…スープだな…」
空になったグラスを置くと、刻まれた文字が変わった。
『美味しかったでしょ?美味しかったでしょ!!』
とても美味しかったよ、ご馳走さま!と言いたいが、机に言ってもなぁ……
「…ぅ…」
急にめまいが私を襲う。立ってはいられない。
私は床に座って目を瞑る。疲れのせいなのか、あのスープのせいなのか…
どんどん眠たくなってくる。
私はそのまま眠ってしまった……
「ああ、ダメダメ!!寝ちゃダメ!!」
私は目を覚ました。しかし、ここは学校の教室ではない。
夢の中だろうか……
気が付けば体の疲れがなくなっている。私は立ち上がる。
「わぁ…」
ここは宇宙か何かか…
さっきのスープの中にいるみたいな感じだ。一面キラキラ光る星のようなものが見える。だが、ちゃんと足は地面についている。…地面…なのだろうか…
「?」
向こう側に何か見えた。私は歩いてみる。
ずっとふわふわした感じで、地面に吸い込まれそうで怖い。
「…」
見覚えのある人が二人、私の前を歩いている。私は立ち止まる。
真っ赤なドレスに真っ白なエプロン、可愛いヘッドドレスをつけた料理長、モエカだ。もう一人はまた、小さい頃の私だ。少し離れて様子を見てみる。
『料理長はママと違って、全部美味しい手作り料理〜』
『えへへぇ…そうだよ、めっちゃうまいねん!レンジでチンするやつなんて作らんぜよ』
二人は手を繋いで歩いていく。私は少し離れてついていく。楽しそうに笑っている。
『私、カレーの作り方しか分かんないんだ〜』
『え…マジかい。みっきーのママはホントレンジでチンが好きやもんね。分からんくてもしょうがないよな…』
私の母親の話をしているようだ。
『カレーしか作れないまま、大人になってひとりぼっちになったらどーしよ…毎日カレーだよ〜…』
『アッハハ!!大丈夫!私らが一生、みっきーのそばにいるから!それと私がいっぱいいっぱいいーーっぱい、色んな料理教えてあげるから〜!!』
私の母親は、昔っからちゃんとしてない人だった。
料理もあまりしなくて、冷凍のやつばかりだった。毎日同じようなご飯ばかり…
だから、私は料理ができるようになりたかったんだ。…それで、料理長を作った。
料理以外にも、色々な家事ができるようになりたかった。母親みたいな、だらしない大人になりたくないから。
私は母でなく、料理長に色々習って色々できるようになった。私にとって、料理長は本当の母のような存在だった。
「……」
私は目を覚ました。教室の床に座ったまま寝ていた。
夢の中と同じく、体の疲れはなくなっている。あのスープのおかげだろうか?
私は少し休んで、教室を出た。そしてまた、長い廊下を歩く。
次はどこへ行けばいいのだろう…うさぎはどこだろう…
「…あれ…、音楽室だ…」
気がつけば目の前に音楽室が見えた。
私は扉を開け、中に入る。
雑で本当にすみません。後で直します。




