六十四のお話
いつの間にか開いていた一つの窓から、心地いい夜の風が入ってくる。
私は窓の外を眺める。
ガタッ…
「!?」
また小さな物音が後ろから聞こえ、私は振り返る。
何かが扉から出ていった。私は慌てて扉の方へ行き、顔を出してそれを探す。
「ぁ…」
ちょうどさっきまではなかった角を曲がるところが見えた。
私は急いで後を追う。
私が角を曲がったときには、もう何も見えなかった。なんて足が速いんだ…
私は仕方なくまっすぐ歩き出す。
「……」
その廊下の左側には、ずっと図書室が並んでいる。
行っても行っても、図書室以外の教室はない。私に入れと言っているのだろうか?
私はすぐそこの図書室の扉を開ける。
「…」
暗い図書室の中は、もちろん大量の本、大きな机に六つのパイプイスがセットで五つ並べられている。
その奥にもいくつかの本棚がある。
「あれ…?」
一番奥の机の上に何か置いてある。ここからじゃ暗くてよく見えないので、私はそこまで歩いて行った。
「紅茶だ…」
湯気を立てた一杯の紅茶が置いてあるだけだ。まだアツアツで今淹れられたみたいだ…
「……わ…」
よく湯気を見てみると、湯気は矢印のような形になっていた。後ろの本棚をさしている。
私は矢印の方向へ歩く。
大きな本棚の三段目、ちょうど私のお腹あたりに、一冊だけ本が置いてあった。
私はそれを手に取り表紙を見る。
『私のお姉さん』
これは…、私が小さい頃に結構お気に入りだった絵本だ。内容は、確か一人の女の子が自分のお姉さんのことを紹介する絵本だった。私もこの絵本を真似して『私のお兄さん』って本を作ったなぁ…
私は懐かしい絵本のページをめくる。可愛い女の子の絵、私はこの絵が大好きだ。
「ん?」
絵本の一番最後のページに、クレヨンで文字が書いてあった。
『ぼうしのおにいさんに、おねえさんみたいになってもらったよ!』
…帽子のお兄さん…帽子の……リアンの事だ…!!
「そうだ…」
そうだ、そうだ……。今思うと、リアンにはとても申し訳ない事をしてしまった…。
小さな私はあのとき、どうしても姉が欲しかった。そんな私はある日、リアンにお姉さんみたいになってって言ったんだ。リアンは嫌な顔一つせず、お姉さんみたいになってくれた。おかしな話だ。
「リアン…なんか…ごめんね…」
本を置いて紅茶の入ったカップを見た。
すると、カップのとなりに紙が置いてあった。私はそこまで戻り、紙をよく見る。
『大好きなあなたの願い。叶えられれば私は幸せ。』
濃い紫色の美しい字で書いてあった。リアンの字だ…
その紙はフワッと消えた。紅茶の入ったカップも消えている。
「リアン…」
私は図書室を出て、また長い長い廊下を歩き出す。
相変わらず左側は図書室ばかりだ。
「…あ!」
私の前を走る何かを見つけた。さっき見失ったやつだろう。
今度こそ捕まえるために私は急いで追いかける。
窓から差し込む月の光で、少しだけ姿が見えた。黒い服、長く赤い耳…正体は、あの時ぶつぶつ独り言を言っていたうさぎだった。
「ちょっと待って!!」
うさぎは私の声など聞かず、すごい速さで走っていく。追いつく事が出来そうもない。
「あっ!」
うさぎはギュッと左へ曲がり、一つの教室へ入っていった。私も急いでそこへ入る。
「え…」
教室の中は、教室ではなくまた長い廊下だった。うさぎはまだ見える。私は急いで追いかける。
「うさぎさん!待って!!」
うさぎは何をそんなに急いでいるのだ?
私はもう疲れて走るのをやめた。またどこかで出会えるだろう。
私は隣にあった開いた教室の扉をくぐる。
多分変なところがあります。後で直します…すみません…




