六十一のお話
アールは遠くへうさぎを投げ飛ばし、私たちのところに来て座った。
「死神くんは…みぃをお城へ連れていくの?」
アールの大きな目は鋭く死神さんを見ていた。
「…いいえ」
「そう、よかった〜」
死神さんの答えを聞き、安心したアールはニコッと笑った。
「ねえ、どうしてここに?」
「みぃを元の世界に戻すためさ〜」
元の世界…
「いいかい?お城に行ったら、もう二度と元の世界に戻れないと思ってね。それから、捕らえられてた誰だっけ…えーと、東なんたらって奴、王子様に殺されたよ」
東村が…王子様に…
でも…待って…
「前に、チェシャ猫が元の世界に戻るには、お城の奥の扉に行かないといけないって…」
アールは首を横に振り私の頭を撫でた。
「それ、半分嘘だよ。悪いアリスたちへのお遊び、ゲームだったんだ。もし辿り着いたとしても、悪いアリスは兵士やらに皆殺しさ」
待って…待ってよ…
何が何だか、もうよく分からない。じゃあ、今までのは一体何だったのさ…
「確かにお城の奥からも戻れない事はない。でも、とてつもなく危険だよ。トランプの兵が大量にいる」
「待って分かんない…」
少し時間がほしい。一旦落ち着こう…
大丈夫、大丈夫…
私は大きく息を吸い込んだ。
「簡単に言うと、今までのは全部忘れて、元の世界へ帰ろうって感じかな」
「んぅぅ…」
簡単に言われても…
今までやってきたことが全て無駄…
無駄なんかじゃない…けど…
「私さ、さっきちょっとだけ元の世界に戻ったの…多分」
「そうなんですか…」
「うん、でもね、家の中は荒らされ放題だし…それより、お母さんとお父さんのことが全然分からないの…」
このまま戻れたとしても、何も分からなかったら…
記憶のないまま生きていかないといけない。それは嫌だ…
「そうか…、まぁ、思い出さなくていいんじゃない?特に母親は」
アールは適当にそう言った。いいわけないだろう…
「それより、早くここから離れた方がいいと思います。チェシャ猫に見つかったら危ないですし…」
「それ早く言えよ、怖いな…」
私たちはもう少し離れた安全な場所に移動することになった。
「この辺は多分…あそこよりかは安全だと思います」
「うーん…そうなの?」
着いたのは、さっきとあまり変わらない森の中。本当に大丈夫なのだろうか…
私たちは大きな木の下で少し休憩する。
「私のお母さんとお父さんって…どんな人なのかな…」
私がポツリと呟くと、二人の表情が険しくなった。
「お父さんはパパうさがいるじゃん。ママは……んー…」
「私がママです」
「はぁ?ズルい俺がママ」
二人はどうでもいい、おかしなことで言い争う。
私はその様子がおかしくってつい笑ってしまった。
「二人ともママでいいじゃん!」
私が言うと、二人は一瞬きょとんとして笑い出した。
久しぶりかも、楽しいのは…
「私、料理なら出来ますよ」
「えー、俺は…料理以外の家事なら出来るかも」
変な会話を楽しむ三人、あっという間にその時間は過ぎてゆく。
「じゃあ、まずどうやって戻るか決めよう」
「ですね」
アールはその辺に落ちていた木の枝を拾い、地面にガリガリ何か描き始めた。
「今いるのがこことする、多分赤薔薇の広場が近いんだよなぁ。そっから元の世界へ戻るんだ」
地面に描いた分かりづらい地図を指しながらアールは言った。
「二人は……?」
アールと死神さんは寂しい目でこちらを見た。
怖いこと…何も…言わないで…
「…みぃ一人で…戻るんだ。俺らは分かんない、でも、着いていく事は出来ない」
「戻ったら…私…全部分かんなくて…忘れちゃうのかな…」
ぐるぐると負の感情が頭の中を回る。
怖い、怖い、怖い…
「戻るのも…やっぱり怖い…」
私はなんてわがままなんだろう。お城へ行くのも嫌だ、元の世界へ帰るのも嫌。
じゃあ、どうしたいんだ…
「奴らが…いなければ、こんなにみぃは苦しまなくてすんだのに…」
ブワっとアールと死神さんから殺気が放たれたのを感じた。
奴ら…あの4人の事か…?
「許さない…死んでも許さない…。ぐっちゃぐちゃにしてやりたい…」
目に見えるのではないか、というくらいのものすごい殺意。あの裁判の会場のようだ。
パパッパーーパーパー!!
「!?」
ラッパの音?
突然遠くから聞こえてきた。
「まずい、チェシャ猫のやつ…トランプの兵使いやがった…!!」
「最低野郎ですね、早く逃げましょう」
私は二人に手を引かれ走る。
ラッパの音はまだ遠くだ。
「このまま赤薔薇の広場まで走るよ!!」
「う…うん!!」
速い!足がもつれて転びそうになる。私は一生懸命走る。
雑で本当にごめんなさい。変なところ後で直します。




