五のお話
噴水の音、小鳥たちの囀り、それ以外の音はない静かな広場。
『ムォッホッホ!遅くなってすまないねぇアリスたち、それとチェシャ猫!』
黒のシルクハットを被った白くて立派な髭を生やしたおじさんが現れた。
「ムォッホ!私のことは気軽に帽子さんと呼んでくださいな」
そう言って帽子さんは私の隣の席に座った。チェシャ猫も帽子さんの椅子を押した後、私の右隣りの椅子に座る。
「ムォッホ!暗いなぁアリスたちよ…」
帽子さんは少し寂しそうに呟いた。3人は俯いて何も話さない。
「そうだ!おーい!音楽隊!踊り隊!準備じゃ!!」
帽子さんが叫ぶと、どこからか小さな返事が聞こえた。
「あ…」
噴水の後ろから何かが走ってくる。あれは…
「ネズミ…?」
私がそう呟くと前の3人は凍りついた顔で私を見た。
ネズミたちは近くに走ってきた。さっきの食材係のネズミと同じみたいだが、服が違う。前を走る三匹のネズミは食材係と同じ薄茶色の毛、左から赤、青、黄色の服に藍色のズボンを履いている。後ろの五、六匹のネズミたちは灰色の毛だ。白い兵隊のような服を着ていて、手にはラッパや太鼓などの楽器を持っている。
「お待たせしました!僕は踊り隊のネズミ、マルです!こっちはサンであっちはカクです!」
食材係のネズミと同じような自己紹介をしてくれた。赤がマル、青がサン、黄色がカクらしい。皆んな同じ顔で分かりにくい。
「それでは頼んだぞ!アリスたちよ、楽しんでくれ」
前の3人はネズミたちが近くに来て震えている。帽子さんが寂しそうに私を見たのでなんとなくニコッと笑った。すると帽子さんはとても嬉しそうな笑顔になった。
太鼓の音で演奏が始まった。そして三匹のネズミが踊り出す。広場が賑やかになった。
「ムォッホッホ!それにしても、美月さんはあの人に似てとても美しいですなぁ!」
あの人?私はよく分からなかったが笑って誤魔化した。
「あのー…」
小さな声が帽子さんの横から聞こえた。そこには青くぴょんと長い耳に真っ赤な目のウエイトレスの服を着たウサギが立っていた。大きさはネズミたちと同じくらいだが耳が長いので大きく見える。
「あの…お肉とお魚…どっちがよろしいでしょうか?」
「ムォッホ!アリスたちよ、肉は好きかな?」
3人は相変わらずだんまり。
私は…
「嫌った方がいいですよ…」
小さな声でチェシャ猫が私に言う。
「好きじゃない…です…」
チェシャ猫の言う通り私は肉を嫌った。何故だろう。
「ムォッホォ…そうか、ではアリスたちには魚を出してあげなさい!」
「はい」
元気よく帽子さんが言う。うさぎは走ってどこかへ行ってしまった。
愉快な音楽と踊りを見ていると、うさぎたちが料理を運んできた。高級レストランとかで見る銀色のお皿だ。
うさぎたちは全員に料理を運ぶと一斉に蓋を取った。
優しいバターの香りが広がる。とても美味しそうだ。
「それではごゆっくり…」
耳の青いうさぎが丁寧にお辞儀をして戻っていった。
「それではいただこうか!」
帽子さんは楽しそうにフォークとナイフを取った。
帽子さんとチェシャ猫は肉料理だ。なんの肉だろう…あ…れ…
私は帽子さんのお皿の上の肉を見て少し焦った。丸いステーキの下に…人間の…手が…。まさかこれ…井上だったり…。ふと食材係のネズミたちを思い出した。チェシャ猫を見るとニヤッと笑っていた。何も言わないでおこう。聞いてはいけない気がする…。
私もフォークとナイフを取り、魚を少し切って食べてみた。普通に美味しかった。そして普通に魚だった。とても安心した。
「そうだ、アリスたちよ、お城へ向かう途中のロールの道には気をつけなさい」
肉を食べながら帽子さんが言う。震える副島、泣き出す藤原、俯いた東村。皆んな料理に手をつけない。これでは作った人に失礼だ。私は普通の魚料理とわかりパクパク食べる。
「フゥ、とても美味しかったなぁ!」
食べ終わった帽子さんが満足そうに言う。
「アリスたちよ…食べないのかい?」
帽子さんは前の3人に聞くが誰も答えることはなかった。
「きっとお腹が空いていないのでしょう」
チェシャ猫がそう言うと帽子さんはまた寂しそうな顔をした。
「では、そろそろ行きましょうか」
チェシャ猫が立ち上がった。出発するようなので私も立ち上がる。
前の3人もオロオロしながら立ち上がる。
「ムォッホォ…、楽しかったよ!またいつか会おう!」
帽子さんが私に手を振る。私も手を振り返す。踊り隊のネズミや音楽隊のネズミも手を振る。私たちは向こう側にある小さな出口の門から外へ出た。
変なところはあとで直します。雑ですみません…




