五十三のお話
「あーー!!もお!!」
突然大きな声を出すニセウミガメ。頭を抱えてずっと悩んでいる。何も言ってあげる事の出来ない私は、ただ彼を見守っていた。
「ダメだ…、もお分かんねぇ…ごめん、ごめんな…」
なぜ彼は謝るのだ。謝りたいのはこっちだ。何も思い出す事が出来ないのだから…
私はニセウミガメの甲羅を撫でてやった。ニセウミガメはずっと泣いている。
「もう、泣かないでよ…。私まで悲しくなっちゃう…」
「ごめんな…」
オレンジ色に囲まれて、私たちは静かな時間を過ごす。
「私、行かなきゃ…」
いつまでもここにはいられない。私は先に進まなくてはならない。私は立ち上がってもう一度周りをよく見た。
「ねぇ、王子様のお城ってどこにあるの?」
「…」
ニセウミガメは黙って下を向いた。
「ねぇ…」
「…うぅ」
ニセウミガメは苦しそうに小さく呻いて私を見た。その表情は、苦しみと悲しみで溢れかえっていた。
「…お城は…お城は、あっちだ…」
そう言って私の後ろ側を指差した。岩ばかりで危なそうだ。
「ありがとう!私…行くね」
「…うぅ…」
寂しそうなニセウミガメに私は手を振った。そして、危ない岩場を歩いて行く。
後ろからニセウミガメの鳴き声が聞こえる。私は、振り返らずに走った。私は…、先に進まなくてはいけないから。ずっとあそこにいるわけにはいかない。私は心の中で謝り続ける。
「うわわっ!」
躓いてこけそうになる。早く安全な陸地に上がりたい。そう思いながら私は鋭い岩に注意して進む。
「やあ!」
「うわっ!!」
突然足元から声が聞こえ、驚いた私は危なく転けてしまうところだった。
「大丈夫かい?」
優しい声でそう言うのは、真っ白なモグラだった。そのモグラは岩に掘った穴からひょっこり顔を覗かせている。
「大丈夫…です…。あなたは?」
「僕はただのモグラだよ」
モグラは穴から出て私の目の前に来た。小さくて、雪みたいに白くてとても可愛い。
「チェシャ猫のお使いで来たんだ、途中まで案内するよ」
「チェシャ猫の?」
モグラは鼻をヒクヒクさせて頷いた。私はモグラを手のひらに乗せた。ぬいぐるみみたいにモフモフしている。…確か私の部屋にこんなぬいぐるみがあった…気がする。
「じゃあ、右に進んで!」
「右ね」
出来るだけ平べったい岩の上を進む。モグラはキョロキョロしながら私に指示を出す。私はその通りに進んで行く。海の匂いを乗せた風が私の背中を押してくれる。
「そこへ飛び込んで」
「え?」
私が今いる高い岩の下に小さな穴があった。人一人入れるか分からないぐらいの大きさだ。モグラはここに飛び込めと言うのだ。
「無理だよ…私、通れない。それに、この高さから飛んだら死んじゃうかもしれない…」
「大丈夫だよ、通れる。さあ、飛び込むんだ」
モグラは私の手から降り、私の足元に立った。
意気地なしの私は飛び込めず、穴をただ眺めていた。
「大丈夫だよ、大丈夫」
「……」
このままこうしていたら、モグラに迷惑をかけてしまう。
覚悟を決めるんだ。どうせ私なんて怪我しようが死んでしまおうがどうでもいいんだ。そう…だから大丈夫……だよ…
「モグラさん、ありがとね」
「うん!」
私は大きくジャンプし、岩から飛び降りた。きっとあの岩にぶつかってしまう。そう思ったが、私の体は小さな穴に吸い込まれるように入っていった。
「本当…不思議だな…」
私は落ちていく。暗い暗い穴の中を。上も下も、右も左も何もない。今度はどこに出るのだろう。そんな事を考えながら私は上を見上げた。
色々雑ですみません。後で直します…




