五十二のお話
トンネルを抜けると、真っ白な霧に覆われた森に出た。霧が濃すぎて前が全く見えない。
「さぁ!背中に乗って!!」
グリフォンがしゃがんで私に言う。私はグリフォンの背中に乗った。
「ちゃんとつかまっててね!落ちないように!」
「うん!」
グリフォンは立ち上がり、大きな翼を広げた。そして、高く飛び上がった。どんどん上昇していく。そして、あっという間に空に浮かぶ雲の上へ出た。
「久しぶりだね〜」
「…うん」
覚えている、この感じ。私の心の闇を吹き飛ばしてくれるような風を浴びて、美しい空をグリフォンの背中に乗って、泳ぐように飛んだあの思い出。そして私の後ろにはいつも兄がいた。チェシャ猫と遊ぶときも、かくれんぼしたときも、グリフォンと空を旅したときも…
寂しい、悲しいとは別の感情が、喉の奥から込み上げてくる。辛い、苦しいに似た何か。でも、それとも少し違う不思議な感情…。言葉では言い表せそうもない。
「もうすぐ着くよ〜!」
あれから約二十分くらい空の旅を楽しんだ。下は雲でよく見えないが、オレンジ色の何かが広がっている。森ではなさそうだ。
「降りるね!しっかりつかまってて〜!」
「うん!」
グリフォンはジェットコースターのように速くおりて行く。振り落とされないように私はしっかりつかまった。雲を突き抜け、下がよく見えるようになった。
「…海…?」
オレンジ色の正体は広い海だった。グリフォンは左にカーブしてゴツゴツした岩場にゆっくり降りた。そして私をおろしてくれた。
「…ここは?」
「お城だよ!」
周りにあるのは、硬い大きな岩とオレンジ色に染まった海だけ。お城のような建物は一切見当たらない。
「う〜なんだぁ〜?」
グリフォンの後ろから聞きなれない声が聞こえた。だるそうで眠そうな、オヤジみたいな声だ。
「うわぁ」
「えっ?」
岩の陰から現れたのは、頭と後ろ足、尻尾は牛で、体は亀の変な生き物。多分、ニセウミガメだろう。ニセウミガメは私を見て驚いた。
「みいじゃねぇか!!おぉ、久しぶりじゃん!!」
今にも泣きそうな顔で近づいてくる。
「俺…俺…忘れ去られてると思ってた…うぅ…怖かったあぁぁ……!!」
ニセウミガメはバタンと倒れ、甲羅の中に入って泣いている。赤褐色の甲羅には、青く美しいヒトデが一つくっついていた。グリフォンはニコニコして甲羅を見ている。
「一体どこへ行っていたんだ!?まさか、竜宮城とかか!?」
「い…いや…違うよ」
ニセウミガメは勢いよく立ち上がり私に詰め寄った。目には涙を溜めている。
「じゃあどこだよ!!ずっと待ってたんだぞ!!」
そんな事言われても…
「ごめんね…実は…記憶がなくってね…」
私が言うと、ニセウミガメとグリフォンはとても驚いた。目を見開き固まっている。
「記憶…記憶…ない…」
「嘘だろ…」
「ごめんね…」
ニセウミガメはまた泣き出してしまった。優しい波の音が聞こえる。グリフォンはニセウミガメと私を交互に見ている。
「でも、大丈夫よ!ちゃんと…少しずつだけど思い出してる!」
「…本当か?」
私は頷いた。すると二人は少し安心した。
「…俺はニセウミガメな、こっちはグリフォン」
「うん、分かってる」
「ここは俺の城な」
私が首を傾げると、ニセウミガメはまた泣きそうな顔になった。が、すぐにグリフォンが話し出した。
「ここはガメメのお城なんだよ!みぃ、ここに来たいって言ってたよ!」
私が行きたかったのは、王子様がいるらしいお城だった。…でも、今更そんな事言えない。言ったらまた泣かれてしまいそうだから…。
「そうなんだ…!」
私は誤魔化すようにそう言って周りを見た。やはり岩以外何もない。ゆらゆら揺れる水面はキラキラと輝き美しい。
「この城…なんにもないけど、眺めは最高だぜ?朝は海がエメラルドグリーンになるんだぜ!」
「エメラルドグリーンの海か…見てみたいな…」
ニセウミガメは寂しそうに私を見ている。グリフォンはいつの間にか眠っている。
「本当に…覚えてないんだな…。昔一緒に見たぞ…」
「えっ、そうなの?」
なんだか申し訳ないな…。私は遠くを眺めながらそう思った。
「…ぁ…」
ニセウミガメは何かを思い出したかのようにハッとした。そして、とても難しい顔で私をチラチラ見ながら考えている。
「みい…」
小さく呟いて、すぐに「なんでもない」と言った。何を言おうとしたかとても気になるが、私は聞かずにそっとしておいた。
変なところたくさんあると思います。すみません。後で直します。




