五十一のお話
久しぶりに元の大きさに戻り、とても変な感じだ。自分の身体じゃないみたい。でも、身体と頭の痛みは取れない。
先の方に小さな光が見える。きっと出口だろう。私は早歩きでそこへ向かう。
「…えぇ…」
トンネルを出ると、目の前にまたトンネルがあった。今度は左から黒、白の丸が上に描かれている。今通った灰色のトンネルがなくなっている。私の左右には高い壁があり、トンネル以外行ける道がない。
「どうしよ……白…行ってみようかな…」
私は白のトンネルの前にきた。冷たい風が吹き抜けている。不気味な音も聞こえるが、きっと風の音だと思い、覚悟を決めてトンネルの中へ進んだ。
中は灰色のトンネルよりもひんやりしていて気味が悪い。ピチョンピチョンと水の落ちる音も聞こえる。
「あっ」
またロウソクの灯りが見えた。細長い台もある。次は何が置いてあるのだろうと思い、私は走って台のところへ行った。
今度は、本のようなものが一冊置いてあった。藍色の表紙には、「君の記憶」と書いてある。私は恐る恐る表紙をめくった。
「何…これ…」
私の家族写真のようだ。でも、母と父、兄の顔が真っ黒に塗り潰されている。真ん中で私だけが笑っている。誰がこんな酷い事をしたのだろう。
「うっ……わ……」
勝手に写真が赤黒く染まってゆく。まるで何かをこぼしたかの様に、どんどん染まってゆく。そして…
『 こ っ ち へ 来 る ん だ 』
白い文字が浮かび上がった。
私はあまりの恐怖に耐えきれず、先のページを見ないまま走り出した。出口はもうすぐそこだ。私は全力で走る。
「はぁ…はぁ…」
トンネルから勢いよく飛び出した。私はドスンと地面に座り、大きく息を吸って呼吸を整える。そして、前を見てみた。
「…はぁ…やっぱりか……」
予想通り、最後に残した黒のトンネルがあった。私はすぐには行けそうもないので、ここで少し休む事にした。高い壁に囲まれた狭い空間。秘密基地には最適の場所だ。
「お母さん…お父さん…」
全然思い出すことの出来ない親二人。兄は名前をどうしても思い出せない。家族を忘れてしまうなんて、自分は最低な子供だ…。
「もし元の世界に戻ったら……今度は私がみんなに忘れられてるかもな…」
オレンジ色の高い空を眺めながら私は呟いた。もしも本当にそうなったら、私はもう自殺しようと思う。だって生きてる意味なんてないじゃない?…でも、自殺したらずっと暗闇の中を彷徨い続けるって誰かが言っていた気がする。暗闇の中はちょっと慣れたけど、一人で彷徨い続けるのは嫌だなぁ。それに…やっぱり、死ぬのは怖い。
私は静かな空間で色々な事を考えた。
「よし、行くか…」
私は立ち上がり、トンネルの前に立った。そして、一歩足を踏み入れる。
私に手招きする様に、何かが奥で光っている。私はゆっくり進んでいく。
シクシク…シクシク…
すすり泣く声が聞こえる。あの光っている物のところから聞こえているようだ。私はそれにゆっくり近づく。
「怖いよぉ……シクシク…」
可愛らしい声で泣いているのは、とても不思議な生き物だった。でも、私は一瞬でその生き物が何か分かった。上半身は鷹で、下半身はライオンのような生き物、きっとグリフォンだ。銀の翼がキラキラと光っている。なぜこんなところに…?
「ど…どうしたの…?」
私が声をかけると、その生き物はハッと顔をあげた。
「みっ、みぃ!!」
バッと立ち上がり、ウルウルした目で私を見た。とても大きい。今にも食べられてしまいそうだ。
「怖いよ!!ここ…怖い!!出られないよ!!」
そう言って大きな羽をバタバタさせた。私は一旦彼を落ち着かせ、座らせた。
「出られるからね!大丈夫!大丈夫よ!」
「みぃが言うなら…大丈夫!」
ニコッと笑った顔も可愛い。私が撫でてやると、とても嬉しそうに身をよじった。
「あなた、グリフォンよね?」
「そうだよ!」
よかった…。私はトンネルの奥を見た。まだ出口は遠いみたいだ。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
大きくて強そうな見た目に合わず、まるで、幼い子供のような可愛い返事をするグリフォン。私たちは出口へ向かって歩き出した。
「ねえ、みぃ!みぃは一体どこへ行くの?」
「えっとね、お城だよ」
「お城!!僕もお城に行くよ!よかったら乗せてくよ!」
私はとても優しいグリフォンに、トンネルを出たらお城まで乗せて行ってもらう事になった。とても助かるが、まだ全く心の準備が出来ていない。
十分ほど歩くと、いつものように出口の光が見えた。私たちは無事、トンネルから抜け出す事が出来た。
雑ですみません。後で直します。




