四十九のお話
頭と…身体中が痛い。
私は薄っすら目を開けた。
「おはようございます」
「んわっ!!」
突然声をかけられ、驚いて飛び起きた。
私の隣にいたのはチェシャ猫だった。私は少し安心して胸を撫で下ろした。
「…あれ、私…寝てたの?ここは…?」
夕焼け色の空の下、白い薔薇がたくさん咲いた場所に私はいた。
私は自分の足や腕をよく見てみた。痛みはあるが、どうもなっていない。あれは…夢だったのか…?一体どこからどこまでが夢なのだろう…。
「薔薇の庭です」
薔薇の庭…。あー…なんだろう、またモヤモヤする。きっと昔、来たことがあるのだろう。
小さな話し声がどこからか聞こえてくる。私たち以外にも人がいるのだろう。私は近くに咲いた一輪の白い薔薇を見た。いい香りがする。
「どこまでが…夢なの…」
私が副島や東村のことを考えようとすると、急に身体がだるくなり、大きなため息が出た。脳が考えるなって言っているようだ。一度頭の中を真っ白にして、今度は深呼吸する。
「夢じゃないです。全部あなたの記憶です」
「……だよね…」
私は立ち上がった。フワリと薔薇のいい香りを乗せた風が私に優しくぶつかった。
「いつになったら元の大きさに戻れるの?」
ずっと小さいままでは色々困る。元の世界に戻ってもこのままだったら…
「そのうち戻りますよ」
本当にいつもチェシャ猫は適当だ。
私たちは歩き出した。
ゴニョゴニョ誰かがどこかで話している。私は気になって声のする方へ歩いてみた。
「……は、……れる…」
「…!……よね!」
声は男の人っぽい。私は薔薇の木の後ろに隠れながら探した。
「あ…」
いた。でも、人じゃない。トランプの着ぐるみみたいなものを着た、縮む前の私と同じくらいの大きさのうさぎだ。手には赤いペンキと筆を物を持っている。何をしているのだろう。私は薔薇の木の後ろに隠れてこっそり見ている。
「どうしよ、間に合わないかも!!」
「いいから黙って塗れ、手を動かせ」
一人のトランプうさぎは焦りまくっていて、もう一人は落ち着いて白い薔薇を赤く塗っている。
私はアリスの物語を思い出す。確か、トランプの兵が間違って白い薔薇を植えて、女王様に見つかったら首を切られてしまうとか、女王様が白い薔薇が嫌いとか……だった気がする。でも、ここにあるのは全部白い薔薇。これを全部赤く塗るのは、大変どころの話じゃない。
「ねぇ…」
私がこわごわ二人のうさぎに声をかけると、うさぎは飛び上がり驚いた。そして私を見るなり二人は深く頭を下げた。
「申し訳ありません!!申し訳ありません!!」
「えっ…どっ、どうしたの…?」
なぜ私に謝るのだ?…もしかして私をこの世界にいる女王様と間違えているのだろうか?
「私、女王様じゃないよ!」
そう言うと、二人は怯えた顔を上げた。そして二人は不思議そうに見つめ合った。落ち着いたトランプうさぎはスペードの二、焦っているトランプうさぎはスペードの五が描いてある。
「…女王様?…何のことでしょう…?」
スペードの二のトランプうさぎが言う。もう一人も不思議そうに首を傾げ、私を見ている。
「え…女王様に見つかったら首を切られるんじゃ?」
二人はもっと首を傾げた。
「女王様って…誰ですか…?」
え?もしかして、この世界には女王様がいないのか?アリスの物語では女王様って、結構大事なキャラクターでは…?じゃあ、何に怯えてこの人たちは薔薇を塗っているんだろう。
「なんでもない…。あなたたちは何をしているの?」
「えぇ…、ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!まだ半分も終わってなくて…!!」
謝るばかりで何をしているかなかなか言わない。
「何してるか教えてよ」
「ごめんなさい、サボっていたわけじゃないんです。あ…、薔薇を塗っているだけです」
「なぜ薔薇を塗るの?白い薔薇…すごく綺麗なのに」
私がそう言うと、二人はとても困った顔をした。
「でも…白だけじゃ面白くないって…」
「誰が…?」
「え…えぇ……み…みぃさんが…」
みぃさん?もしかして私?私がそんな事言ったの?
「塗らなくていいよ!!」
私が慌ててそう言うと、二人はまた驚いた。二人は「何故ですか!?」とか「どうしてです!?」と聞いてくる。私が少々困っていると、チェシャ猫が私を見つけてこっちへ来た。そういえば、どこではぐれてしまっていたのだろう?
「ヒィィ!!チェシャ猫さん…!!」
二人は突然大きな声を出し、ガクガク震え出した。まるで、目の前に人喰い猛獣でも現れたかのように…。チェシャ猫が怖いのだろうか?
「ごめんなさいぃ!!ごめんなさいぃぃ!!!殺さないでください!!」
二人は泣き出してしまった。ペンキの入った缶を落とし、地面が真っ赤に染まってゆく。慌てて二のトランプうさぎが缶を立てた。
「相変わらず、仕事の遅いトランプたちですね」
チェシャ猫が薄っすら笑ってそう言うと、トランプうさぎたちは怯えて腰を抜かした。そしてまた、ガランと缶を倒してしまっていた。
変なところたくさんあると思います。すみません…。後で直します。




