四のお話
静かになった森の中。遠くからネズミたちの楽しそうな笑い声が聞こえた。とても力の強いネズミたちだったなぁ。
私は周りを見た。あまりの恐怖で失禁し、ガクガク震える東村、白目を剥いて気絶する副島、泣きながら副島を抱きしめる藤原。
何故だろう、なんで私には「怖い」とか「可哀想」って感情が出てこないんだろう。それよりも「望んでいたこと」のように感じられる。井上のことは大嫌いだけど…
出雲は一人でボーっと考えていた。
「出雲…さん…なっ…なんで…そんな…普通にして…いられるの…?」
細い声で藤原が私に尋ねてきた。
「こっ…怖くないの…?なんで…助けてあげなかったの…」
『あの頃、あの時のソイツもそうだったよ。見ているだけで助けてくれなかった』
「お前にそんな事言う資格はねぇよ。お前だってお前だってお前だって!!!あ…」
気づけば私は藤原の襟を掴み怒鳴っていた。頭の中でまたあの声が聞こえたんだ。『ソイツも許すな』って。
「ご…ごめん…」
私はすぐに手を離し藤原に謝った。こんな状態で、いや、私が人に怒鳴るなんて…。知らない間に二重人格にでもなってしまったのか…。
藤原は震えながらまた副島を抱きしめる。
「さぁ、アリス達、お食事会に遅れてしまいますよ?」
私の後ろからチェシャ猫が現れた。
「お食事…会?お茶会じゃなくて…?」
不思議の国といえばお茶会のイメージだった。そこで帽子屋とか眠りネズミに出会うのでは?
「えぇ、お食事会です。少し先に赤い薔薇の広場があります。さぁ、行きましょう」
薄っすら笑ってチェシャ猫は答えてくれた。
「待ってよ…人が…友達が殺されたんです!!ねっ…ネズミたちに!!」
藤原が叫んだ。その声で副島が目を覚まし藤原に抱きついた。
「えぇ、見てましたよ」
チェシャ猫はなぜか私の肩に手を置き、連れて行かれる形で一緒に歩き出した。
「待ってって!!見てたなら…!なんで助けてくれなかったんですか!!」
また藤原が叫んだ。チェシャ猫は少し後ろを向いて
「私は、あなた達と同じ事をしただけですよ?」
そう言った。前髪の隙間からチラッと見えたチェシャ猫の目は細くつっていた。
「さぁ、早く。今ここで、死にたくなければ私についてきてください」
チェシャ猫と私は歩き出した。…なぜ私は強制的に連れて行かれるのだろう。
濃くなった霧の中を歩いて行く。後ろから物音がする。3人はついてきているのだろう。
「お食事会…って何をするんです…か?」
私は恐る恐る聞いてみた。
「お食事会はお食事会です。皆んなで食事をするんですよ」
いや、それはそうだけど。分かりきった答えが返ってきた。
私はチラリとチェシャ猫の顔を見てみた。いつもの薄っすら笑った顔だが、さっきより少し楽しそうに見える。私が可笑しな質問をしたから変なやつって思われたのだろうか…。
しばらく歩くとレンガの壁が現れ、小さな門があった。チェシャ猫はそれを開けて一緒に中へ入った。
「うわー…」
門の中は明るく、赤い薔薇がたくさんの美しい場所だった。別の世界に来た感じだ。噴水や白いブランコ、飛び回る美しい蝶に鳥達。私が想像する楽園のような場所だった。そして少し行ったところに真っ白で大きなテーブルがあった。
「どうぞ、座って」
チェシャ猫が左側の真ん中の立派な椅子を引いた。私は椅子にゆっくり座った。チェシャ猫はゆっくり椅子を押してくれる。チェシャ猫は全ての椅子を引いてすぐに座れるようにした。
「もう少ししたら帽子さんが来ます」
「帽子屋じゃなくて?」
「帽子さんです。白い髭の」
なんだかよくわからないけどいいか。
私はキョロキョロして周りを見た。私の前の椅子も立派だ。
しばらくすると3人がふらふらしながら歩いて来た。チェシャ猫が全員を席に着かせる。
「お前…頭おかしいんじゃないのか…」
東村がチェシャ猫に呟く。チェシャ猫は気にせずテーブルの上のホコリを払った。
「人が…死んだんだぞ…」
震えた声で呟く。
「えぇ、死にましたね。無様でしたね」
その言葉に私以外の3人はギョッとした。そしてまた下を向く。私は別にどうも思わなかった。やっぱりおかしくなったのだろうか。
「もうすぐ帽子さんが来るでしょう。しばらくお待ちください」
変なところはあとで直します。すみません。




