四十三のお話
「これって何歳の私なんだろう…」
小学生?それとももっと下?自分の手を見ながら私は思った。それより服が気になる。こんな可愛いドレス…着ている自分を想像するだけでなんか恥ずかしい。
クスクス…クスクスクス……
こっそり笑う何かの声が聞こえる。一つだけじゃない、二つ、三つと聞こえてくる。
「大丈夫よ自分…」
そう自分に言い聞かせ、前だけを向いて進む。ここで、怖い幽霊とか化け物を想像したらダメだ。脳が勝手に作り出して、見えているような気がしてしまうから…。
クスクス…
何を笑っているのだろう。もしかして私を見て笑ってる?
小さな笑い声は薄暗い森の中に響く。木にぶつかって跳ね返り、それがどんどん広がって聞こえている感じだ。私は手に水色の猫のストラップを握っている事を思い出した。
「猫ちゃん、なんかあったら助けてよね…」
怖い時は何にでもいいから話しかける。そうすれば一人じゃないって思えて、ちょっとだけ安心できる。誰かが昔教えてくれたんだ。私はストラップを大事に握りしめた。
「?」
ふと足元に目を落とすと、そこには水で濡れた跡があった。ふわふわのクリーム色の地面が濡れて、茶色いチョコレートみたいな色になっている。それはずっと先まで続いている。
「なんじゃこりゃ、誰か何かこぼしたのかな…?」
もしかしてリアンの紅茶だったり?色が少し似ていたので私は思った。
「辿っていったら何かあるかも…!」
私は地面のシミを辿って進む。
「どこまで続くんだ…、はぁ……チェシャ猫ぉ…」
どこまで歩いても何もない。でもずっとシミは続いている。小さくなって体力がおちたのか、とても疲れを感じる。
「もーいやー!なんで何もないのー!疲れたぁー!」
見た目だけでなく、中身も子供になってしまったのか?口からは次々小さな愚痴が溢れていく。
クスクス…
「笑わないでよー!」
どうでもいい笑い声にまで八つ当たり。ダメだなー、自分。
「……はぁ…」
急にどうでもよくなり、大きなため息が出た。ダメだ…このままじゃ疲れきって倒れてしまう。どこかで休むか…?でもな…
「んわっっ!!!」
グワッと視界がブレて、私の体は宙に浮いた…いや、引っ張られるように下へ落ちてゆく。落とし穴にでも落ちたのか!?上を見上げれば青と紫の木の葉っぱと空が見える。どんどん空は離れていく。私はぼんやり空を見ながら、すごいスピードで落ちてゆく。このままでは死んでしまう…
「どう…しよ…」
いや、待てよ。ここは不思議の国だ。穴に落ちても無傷で無事、地面におりることができるのでは…?私は不思議の国のアリスの絵本の、最初の方のページを思い出した。
下へ下へと落ちてゆく。もう穴の入り口は見えない。一体どこに出るのだろう。もしかしたら反対側の世界に出てしまうかもしれない。絵本の中のアリスの気持ちがよく分かった。
「?」
横に何か一緒に落ちていくものを見つけた。正方形の付箋のような紙に、「もうすぐつくよ!」と書いてある。どこへつくのだろう…。怖い場所だったらどうしよう、無事に着地できるだろうか。私はどんどん焦ってきた。
「うわっ!!」
突如ドスンと尻餅をついた。痛みはない。冷たい大理石の床だ。ここはどこだろう。真っ暗で何も見えない。私は立ち上がってドレスを叩いた。長い時間宙に浮いていたので、ふわふわしている感じだ。
「えー…、それでは皆さん揃いました。今から裁判を行います」
その声と共に、バッとオレンジ色の光が上から降り注ぎ、辺りが一気に明るくなった。
私が今いる中央の広間をぐるっと360度取り囲む3階建ての客席。びっしりと席はうさぎたちで埋め尽くされている。私から少し離れたところに、私の想像する裁判所にある茶色い台があった。そしてその前に証言台のような物もある。そして、私の隣に金や銀の派手な仮面をつけた、帽子屋のリアンと料理長のモエカがいた。リアンの肩には眠りネズミのネムチーもいた。二人は黙ってまっすぐ前を向いている。
「それでは皆さん静粛に!裁判を始めます〜…ええ…と」
茶色い台の横で、アヒルのカイがざわめく会場に響く大きな声で言った。でもなかなか静かにならない。一体何の裁判を行うのだろう。
「今日は裁判長をチェシャ猫にやってもらいます〜!」
カイがそう言うと、客席のうさぎたちの歓声で会場はさっきより騒がしくなった。私はチェシャ猫と聞いてキョロキョロ周りを探した。
「そして〜…えーと…、あっ、皆さん静粛に!!まあ、よくわかりませんが裁判をはじめまーす!」
裁判がごっこ遊びのように始まった。どうしていいか分からない私は、とりあえず落ち着いてここに立っている。隣にリアンとモエカがいるが、話しかけていいのか分からない。
「…ぁ」
茶色い台の後ろに、いつの間にかチェシャ猫が立っていた。いつもの薄っすら笑いで台に手をついた。
「それでは、訴状を読み上げてください」
いつもの冷たい声でチェシャ猫が言うと、客席から一匹のうさぎが急いでおりてきた。あれはあの時会ったうさぎのパパだ。手には赤い巻物のようなものを持っている。そしてうさぎは証言台の前に立ち、その巻物を広げた。
色々雑ですみません。変なところ後で直します。




